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女は二度決断する

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(原題:Aus dem Nichts 2017年/ドイツ 106分)
監督/ファティ・アキン 製作/ヌアハン・シェケルチ=ポルスト、ファティ・アキン、ヘルマン・バイゲル 脚本/ファティ・アキン、ハーク・ボーム 撮影/ライナー・クラウスマン 美術/タモ・クンツ 衣装/カトリーン・アッシェンドルフ 編集/アンドリュー・バード 音楽/ジョシュア・ホーミ
出演/ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、サミア・シャンクラン、ヌーマン・アチャル、ヘニング・ペカー、ウルリッヒ・トゥクール、ラファエル・サンタナ、ハンナ・ヒルスドルフ、ウルリッヒ・ブラントホフ、ハルトムート・ロート、ヤニス・エコノミデス、カリン・ノイハウザー、ウーベ・ローデ、アシム・デミレル、アイセル・イシジャン

概要とあらすじ
「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」「ソウル・キッチン」でカンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭それぞれで受賞歴を誇るドイツの名匠ファティ・アキン監督が、ダイアン・クルーガーを主演に迎え、突然の悲劇で家族を奪われた主人公の女性が絶望の中で下す決断を描いたドラマ。ハリウッドはもちろん、フランスなどヨーロッパ映画でも活躍し、英語、フランス語、ドイツ語を操るクルーガーが、ドイツ語を使った演技に初挑戦し、2017年・第70回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した。ドイツ、ハンブルグ。トルコ移民のヌーリと結婚したカティヤは幸せな家庭を築いていたが、ある日、白昼に起こった爆発事件に巻き込まれ、ヌーリと息子のロッコが犠牲になってしまう。警察は当初、トルコ人同士の抗争を疑っていたが、やがて人種差別主義者のドイツ人によるテロであることが判明。愛する家族を奪われたカティヤは、憎しみと絶望を抱えてさまようが……。(映画.comより



彼女が考え出した「折衷案」

実際に起きたテロ事件をモチーフにしたという
『女は二度決断する』
なんともやり切れないお話です。

ドラッグ売買で服役中のヌーリ(ヌーマン・アチャル)
獄中結婚したカティヤ(ダイアン・クルーガー)
出所したヌーリは悪事から手を引き、
財務処理や通訳などを引き受ける事務所を開業。
6歳の息子ロッコ(ラファエル・サンタナ)の3人家族で
幸せな暮らしを送っていました。
しかし、ヌーリにロッコの世話を任せたカティヤが
親友とつかの間の余暇を楽しんでいるうちに、
何者かが仕掛けた爆弾によって
ヌーリとロッコは死んでしまう
のでした。

怒りと悲しみに暮れるカティヤ。
事件の直前、荷台にバイク用ケースを載せた新品の自転車を
施錠せずに立ち去る女性を目撃していた彼女は
ヌーリがトルコ出身であることから
ネオナチ(国家社会主義地下組織(NSU))の仕業だと
訴えるものの、
ヌーリの前科に気をとられる警察は
マフィアの内輪もめではないかと疑います。
傷心を癒やすためにカティヤが使っていたコカインが
自宅から発見されたことも悪い印象を与えてしまいます。
そのうえ、ヌーリの両親は
ヌーリとロッコの遺骨をトルコに持ち帰りたいと言い出し、
「あなたが世話をしていればロッコは死なずにすんだ」と
カティヤを責める始末。
臨月だった親友が出産すると、
幸せそうな姿に嫉妬してしまうカティヤは
失意のどん底で自殺を試みるのでした。
これが一度目の決断。

しかし、ネオナチの容疑者が逮捕されたという
弁護士ダニーロ(デニス・モシット)からの知らせを受け、
自殺を思いとどまったカティヤは
裁判へと挑むのでした。
ここから映画はがらっと変わって法廷劇へ。

ここで被告人を弁護する弁護士(ヨハネス・クリシュ)
見事なヒール役を演じます。
情状酌量による減刑ではなく、
被告人の無罪を勝ち取ろうとする厚顔無恥さに
はらわたが煮えくりかえること、この上なし。

被告のアリバイを証明するために登場した
ギリシャのホテルオーナーは極右政党の支持者で
子供だましのような偽証を平然とやってのけます。
こんな理不尽な裁判で平静を保つのは至難の業でしょう。
それでも、取り乱してしまっては負けなのです。
かろうじて救いだったのは、
息子を通報した被告人の父親
彼もカティヤと同様、深い悲しみに覆われているでしょう。

そして裁判の結果は、
カティヤがドラッグ使用者だということを理由に
証拠不十分とされ、被告人は無罪に。

いやあ、あり得ない。
本作を観る限りでは、
被告人を犯人だと断定できないというよりは、
被告人以外にも犯行に関わった人物が
存在する可能性がわずかにあるといった程度のものでしか
ないと思うのですが……これが現実なのでしょうか。

そして、第3幕。二度目の決断。
再び絶望に見舞われたカティヤは
無罪を勝ち取った被告人夫婦が身を隠すギリシャへと向かいます。
彫りかけだったサムライのタトゥーを仕上げて。
いわずもがな、それは復讐の旅。
社会派映画が一気にリベンジ・ムービーへと変化します。
あまりにも無防備にホテルオーナーに接近するカティヤに
ハラハラします。
一審で無罪になったとはいえ、
まだ上告して裁判で戦う余地は残されているのですが、
カティヤにそのつもりはないようす。
ヌーリとロッコが殺されたのと同じ「釘爆弾」を自作し、
被告人夫婦殺害を試みるも逡巡。
理性と感情の狭間で揺れ動く彼女が
最終的に選択したのは
被告人夫婦ともども自爆するということでした。

当然ながら、この結末には賛否両論あるようです。
復讐は新たな復讐を産み、
途絶えることのない負の連鎖を紡いでしまいます。
できることなら法の下で解決するべきと思うのが
理性的な人間が考えることでしょう。
しかし、自分の家族が理不尽に殺され、
無罪を勝ち取った被疑者がのうのうと生き存えていたとき、
ひとはどれほど理性的に振る舞えるでしょうか。

カティヤはどちらかといえば戦闘的な人間かもしれませんが、
理性と感情のギャップにさいなまれて
十分に葛藤していたのではないでしょうか。

そのうえで彼女が考え出した「折衷案」が自爆なのです。
それは決して倫理的に正しい決断ではなく、
誰も幸せにしませんが、
死者の無念に報いるという感情は否定できないし、
今後も消し去ることはできないでしょう。
だからこそ、綿々と作り続けられるリベンジ・ムービーが
観客の溜飲を下げさせるのではないでしょうか。





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