" />
FC2ブログ

ラッキー

lucky.jpg



(原題:Lucky 2017年/アメリカ 88分)
監督/ジョン・キャロル・リンチ 製作/ダニエル・レンフルー・ベアレンズ、アイラ・スティーブン・ベール、リチャード・カーハン、ローガン・スパークス 脚本/ローガン・スパークス 撮影/ティム・サーステッド 美術/アルミトラ・コーリー 衣装/リサ・ノルチャ
出演/ハリー・ディーン・スタントン、デビッド・リンチ、ロン・リビングストン、エド・ベグリー・Jr.、トム・スケリット、ジェームズ・ダーレン、バリー・シャバカ・ヘンリージョー、ベス・グラント、ヒューゴ・アームストロング

概要とあらすじ
「パリ、テキサス」「ツイン・ピークス」で知られる個性派俳優で、2017年9月に逝去したハリー・ディーン・スタントンの最後の主演作。「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」などの名脇役ジョン・キャロル・リンチが初メガホンをとり、スタントンに当て書きしたという90歳の気難しい現実主義者ラッキーを主人公に、全ての者に訪れる人生の最後の時間を描く。神など信じずに生きてきた90歳の男ラッキー。ひとりで暮らす部屋で目を覚ますとコーヒーを飲んでタバコをふかし、なじみのバーで常連客たちと酒を飲む。そんなある日、自分に人生の終わりが近づいていることに気付いた彼は、「死」について思いを巡らせる。子どもの頃に怖かった暗闇、去っていったペットの亀、戦禍の中で微笑んだ日本人少女。小さな町の住人たちとの交流の中で、彼は「それ」を悟っていく。スタントン本人の体験に基づくエピソードが描かれるほか、長年にわたるスタントンの盟友デビッド・リンチ監督が主人公の友人役で登場。(映画.comより



そして最後に微笑むのだ

2017年9月15日、91歳で逝去した
ハリー・ディーン・スタントン最後の主演作、
『ラッキー』

俳優のジョン・キャロル・リンチ監督第1作となる本作は
なんというか、スタントンの死期が迫ってきていることを
念頭に置いたとしか思えない作品です。
場合によっては、全てのシーンを撮影できずに
終わってしまう可能性もあったことでしょう。
90歳になるスタントンにどういう考えがあって
出演したのかわかりませんが、
スタントン本人が体験したエピソードを
多く盛り込んでいる
ということで、
なかばドキュメンタリーのようでもあります。

朝目覚めるとタバコに火を付け、
乳首が垂れ下がった身体で鏡の前に立ち、
歯を磨くラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)
クローズアップでとらえたオープニングをみて
これは「おじいちゃんポルノ」だと思いました。
(「スタントン・ポルノ」というべきか)
骨と皮だけになったような
一人暮らしのおじゅうちゃんの生態を観察して愛でるのです。

その場でくるくる回る体操をしたら、
コーヒーを煎れ、牛乳を飲み、
(なぜか次の日の一杯をあらかじめグラスに注いである)
行きつけのダイナーでクロスワード・パズルをやる。
夜になるとバーに出かけてブラッディ・マリアを飲む……
という日々のルーティンをくり返すラッキー。
(植物園のような場所の入口で必ず
 「カント!(お●んこ!)」と叫ぶのは
 ……ようわからん)
90歳のラッキー=スタントンの歩く姿は
確かに老人のそれではあるけれど、
思いの外スピードが速く、しっかりしています。
ラッキーは老人特有の頑固さを備えているものの
どこへ行っても気さくに声をかけられて、
愛されているようすが伝わります。
ラッキーを知る街の人々は、彼を気遣いながらも
必要以上に干渉しない距離の置き方が心地いい。

「現実主義は物だ」
「孤独(Lonely)とひとり(alone)は違う」
「人はみな生まれる時も死ぬ時も一人だ。
 独り(アローン)の語源は、みんな一人(オール・ワン)だ」

と語るラッキーは、
自由気ままな生活を楽しんでいます。
(ときおり自室の赤い電話で誰かと話しているが
 あれは『パリ、テキサス』のオマージュだろうか)
周りからいくらたしなめられても
1日一箱のアメリカンスピリットをやめる気はありません。
しかし、突然部屋で倒れてから
徐々に自分の死を意識し始め、恐怖を抱くように。

本作全体を貫く、
友人ハワード(デビッド・リンチ)のリクガメが逃げ出した話や
終活エピソード、
ダイナーで出会った
元海兵隊員フレッド(トム・スケリット=『エイリアン』の船長!)との
第2次世界大戦の辛い思い出話などから
(スタントンは実際に第二次世界大戦に従軍し、
 沖縄戦にも出兵している)
ラッキーはどんどん死生観を深めていきます。
彼がたどり着いたのは「無」
そして最後に微笑むのだ、と。

雑貨屋のメキシコ人店主の息子の誕生日パーティに
招待されたラッキーが店主の母親を紹介され、
恋に落ちたかのような表情をみせたあと、
にわかにマリアッチの『ボルベール、ボルベール』を
歌い始めるシーンは至極の名場面。

歌い終わった後、家族の拍手を浴びるラッキーが
照れくさそうに笑う表情は
誰もが「スタントン萌え」することでしょう。

ラストシーンで、
巨大なサボテンを見上げて佇んでいたラッキーは
不意にカメラを見つめ優しく微笑むのです。
これがスタントンのさよならの笑顔でなくてなんであろう。

90歳になるまで俳優を続け、
最後に半自伝的な作品を遺して
この世を去ったスタントンの人生は
やっぱり「ラッキー」だったのではないでしょうか。
たくさん楽しませていただきました。







にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

アーカイブ

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンター