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スリー・ビルボード

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(原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri 2017年/イギリス 116分)
監督・脚本/マーティン・マクドナー 製作/グレアム・ブロードベント、ピーター・チャーニン、マーティン・マクドナー 撮影/ベン・デイビス 美術/インバル・ワインバーグ 衣装/メリッサ・トス 編集/ジョン・グレゴリー 音楽/カーター・バーウェル
出演/フランシス・マクドーマンド、ウッディ・ハレルソン、サム・ロックウェルアビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ケリー・コンドン、ルーカス・ヘッジズ、ジェリコ・イバネク、クラーク・ピータース、キャスリン・ニュートン、アマンダ・ウォーレン、ダレル・ブリット=ギブソン、サンディ・マーティン、サマラ・ウィービング

概要とあらすじ
2017年・第74回ベネチア国際映画祭で脚本賞、同年のトロント国際映画祭でも最高賞にあたる観客賞を受賞するなど各国で高い評価を獲得したドラマ。米ミズーリ州の片田舎の町で、何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドが、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な広告看板を設置する。それを快く思わない警察や住民とミルドレッドの間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。そして事態は思わぬ方向へと転がっていく。娘のために孤独に奮闘する母親ミルドレッドをフランシス・マクドーマンドが熱演し、ウッディ・ハレルソン、サム・ロックウェルら演技派が共演。「セブン・サイコパス」「ヒットマンズ・レクイエム」のマーティン・マクドナー監督がメガホンをとった。(映画.comより



「怒りは怒りを来す」

名だたる映画賞を受賞し、とてもとても評価が高い
『スリー・ビルボード』
マーティン・マクドナー監督
『セブン・サイコパス』がイマイチだったので
眉に唾しながら観て参りました。

アメリカの田舎町を舞台に
小さなすれ違いが引き起こすサスペンスといえば
すぐに『ファーゴ』を思い出すわけですが、
それはもう、主役が
フランシス・マクドーマンドだからなおさらです。
歳を重ねた彼女の顔に刻まれた皺は
ほぼキース・リチャーズといっても過言ではない存在感を放ち、
他を寄せ付けない孤高の気高ささえ感じさせます。

レイプされ殺された娘の母親、
ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)
事件解決の糸口をつかめない警察のふがいなさに業を煮やし、
道路沿いの朽ち果てた巨大看板に
「RAPED WHILE DYING(レイプされて死亡)」、
「AND STILL NO ARRESTS?(犯人逮捕はまだ?)」、
「HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY?(どうして? ウィロビー署長)」

という3枚の広告を出すのでした。

物議を醸すきっかけとなる3枚の看板は
赤い地色に黒い文字でメッセージが書かれ、
シンプルかつ挑発的なキービジュアルとして
重宝しそうにもかかわらず、
さほど頻繁に登場するわけではありません。
むしろ画面に多く映るのは看板の裏側のほうで、
それはすなわち、本作が描きたいのは
主要人物3人の裏の顔、もしくは本当の姿だからでしょう。

広告に名指しで批判される
ウィロビー署長(ウッディ・ハレルソン)
田舎町の(とくにミズーリ州は黒人差別が色濃く残る)
警察署長にしては紳士的で物わかりがいい人物。
レイプ事件が未解決なことに忸怩たる思いを持ち、
挑戦的なミルドレッドに対しても
一定の理解を示しています。
しかし彼は膵臓ガンに冒され、余命幾ばくもない体だったのです。
噂話が好きなこの街の人々はみな
ウィロビー署長の病状を知っていて、
気の毒な署長を責め立てるとは何事だと、
なおさらミルドレッドに対する敵意を募らせます。
本来、ウィロビー署長の病状と
未解決事件の責任を問われるのは無関係なはずですが、
このような印象によって人々の判断が左右されていることの
象徴でしょう。
その最たるものが、テレビリポーターです。

しかし、自分の死が近いことを悟り、
家族に介護の負担をかけたくないという理由から
ウィロビー署長は自殺してしまいます。
わざわざ馬小屋を選ぶあたりに
キリスト教的な暗喩がこめられているような気もしますが、
父親の不在はミルドレッドの家族にも
ディクソン(サム・ロックウェル)にも共通し、
アメリカ的父権の終焉を象徴しているという深読みも
できそうな気がします。
ウィロビー署長は、ミルドレッドに宛てた遺書のなかで
自殺の動機がミルドレッドの看板によるものではないことを記し、
それどころか、一月分の広告料まで残しているのですが、
真相を知らない街の住人たちは
ことさらミルドレッドを憎悪します。

威張るしか能がないチンピラ警官のディクソンは
暴力的なバカであることが執拗に強調されます。
間抜けな行動が繰り返され、
尊敬するウィロビー署長が自殺したときも
音楽を聴いて呑気に踊っています。
ウィロビー署長の死を知ると、
道路を挟んだ向かいにある広告代理店(?)を襲撃。
かねてから気に入らなかったレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)
ボコボコにして病院送りにするのでしたが、
このあたりの彼の行動原理はまったく理解不能。
その直後、新任の黒人署長にも平然と悪態をつき、
とうとうクビになります。
そんな、バカを絵に描いたようなディクソンとて人の子。
他界した父親を尊敬するあまりに重圧を感じ、
いつまでも子供扱いする母親に頭が上がりません。
たまりに溜まった鬱屈を
弱者に対する暴力で解消していたディクソン
もまた
弱い人間なのです。(もしかして彼はゲイでもある?)
バカも言い換えれば、素直な子。
自分に宛てられたウィロビー署長の遺書で
「やれば出来る子」と言われたディクソンは一気に改心するのでした。
彼は自分を認めて欲しかったのです。

揺るぎない信念のもとに行動しているようにみえる
ミルドレッドでしたが、
レイプ事件の当日、娘と喧嘩していた彼女は
外出するという娘に自動車を貸さなかったことを激しく後悔し、
自責の念にかられていた
のでした。
彼女のかたくなさは信念に基づくものではなく、
娘に対する償いであり、だからこそ強固なのでしょう。
しかし、看板を燃やされたことに逆上し、
警察署に火炎瓶を投げ込んだミルドレッドは
図らずもディクソンに大やけどを負わせてしまい、
怒りを向ける矛先が揺らぎ始めます。
さらには、自分に好意を寄せる小男の
ジェームズ(ピーター・ディンクレイジ)に対する
無自覚な差別意識
を指摘され、
動物臭くて頭の弱い小娘と見下していた元夫の愛人が放った
「怒りは怒りを来す」という言葉を聞いて
はたと我に返るのでした。

レイプ自慢をしている男の話をバーで耳にしたディクソンは
身を挺してその男のDNAを採取。
ついに真犯人発見かと思われましたが、人違いでした。
バカのディクソンにはわかりませんでしたが、
おそらくその男はイラクで女性をレイプしたのでしょう。
落胆するディクソンとミルドレッドでしたが、
その男がレイプ犯であること、
そして被害に遭った女性がいることも間違いないということで、
ふたりはその男を処刑することを決意するのです。
これは、ミルドレッドが牧師に語った
ギャングの逸話と同じ発想。
たとえその男が本当にレイプ犯だったとしても、
十把一絡げの粛正は認められるものではありません。

レイプ犯が住む場所へと自動車で向かう道すがら、
警察署に放火してやけどを負わせたのは自分だと告白する
ミルドレッドに対して、
「知っているよ。あんた以外に誰がやるんだよ」と返す
ディクソン。
互いに心を開き始めたふたりの間には
「赦し」という穏やかな感情が芽生え始めています。
レイプ犯を殺すのかという問いにも
「あんまり」と応えるふたりからは
殺気立ったようすがすっかり消えているのでした。

「怒りは怒りを来す」とわかっていても、
じゃあ、この怒りはどうすればいいんだと思うのが人情だし、
こっちが許しても相手がのうのうと日常を過ごしていると、
やっぱりこいつ許せねえと思うのも人情。
「怒り」から「赦し」へとたどり着くのは
並大抵のことではありませんが、
報復の応酬に未来がないのも真実。
難しい問題ではあります。
『デトロイト』と見比べると、どう感じるでしょうか。

強さの「裏側」に弱さを抱えた登場人物たちのなかで
もっとも飄々としていたのが広告屋のレッド。
人を食ったような態度の彼は
独特の自由さを漂わせていました。
病室でレッドがディクソンに差し出す
オレンジジュース(ストロー付き)
本作における「赦し」の象徴でしょう。

というわけで、
諸手を挙げて大傑作ー! と叫ぶ気にはならないけれど
俳優順の演技が素晴らしく、
見応えのある作品には違いありません。





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