" />
FC2ブログ

デトロイト

detroit.jpg



(原題:Detroit 2017年/アメリカ 142分)
監督/キャスリン・ビグロー 製作/ミーガン・エリソン、キャスリン・ビグロー、マシュー・バドマン、マーク・ボール、コリン・ウィルソン 脚本/マーク・ボール 撮影/バリー・アクロイド 美術/ジェレミー・ヒンドル 衣装/フランシン・ジェイミソン=タンチャック 編集/ウィリアム・ゴールデンバーグ、ハリー・ユーン 音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード 音楽監修/ジョージ・ドレイコリアス、ランドール・ポスター
出演/ジョン・ボヤーガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス、ジェイコブ・ラティモア、ジェイソン・ミッチェル、ハンナ・マリー、ケイトリン・デバー、ジャック・レイナー、ベン・オトゥール、ネイサン・デイビス・Jr.

概要とあらすじ
「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグロー監督が、黒人たちの不満が爆発して起こった1967年のデトロイト暴動と、その暴動の最中に殺人にまで発展した白人警官による黒人たちへの不当な尋問の様子をリアリティを追求して描いた社会派実録ドラマ。67年、夏のミシガン州デトロイト。権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、暴動が発生。3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から銃声が響く。デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、宿泊客たちを脅迫。誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく。出演は「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」のジョン・ボヤーガ、「レヴェナント 蘇えりし者」のウィル・ポールター、「トランスフォーマー ロストエイジ」のジャック・レイナー、「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」のアンソニー・マッキーら。脚本は「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」も手がけたマーク・ボール。(映画.comより



対岸の火事、ではない

筋金入りの社会派映画監督、
キャスリン・ビグロー『デトロイト』です。
脚本は『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』に続き、
これが3本目のコンビとなるマーク・ボール

で、本作も実話なのです。
戦場が舞台だった前2作と比べ、
市民の暴動を描いた本作の
「そこにある恐怖」を感じさせる臨場感は抜きん出ています。
1967年にデトロイトで起きた暴動から50年経った現在、
アメリカではまたしても白人警官によって
黒人が不当に逮捕されたり、
無抵抗にもかかわらず射殺される事件が頻発しているのを思えば、
本作は過去の悲劇とは言えないはず。

冒頭、5日間に及ぶ暴動のきかっけとなった
無許可の酒場への手入れシーンで、
ベトナム帰還兵をねぎらうパーティを楽しんでいた黒人たちを
一斉に検挙する警官を先導しているのが黒人警官だということに
問題の根深さをみせつけられ、
暗澹たる気分にさせられます。
パーティのメンバーのなかにも警察の息がかかった黒人がいて、
ほかの黒人たちを萎縮させるために
拷問を受けたような芝居を打つ
のは
当時の(?)デトロイト警察のやり口なんでしょうか。
メインとなるモーテルの惨劇のときにも
同じ方法がとられます。

白人警官による黒人への虐待が主たるテーマとはいえ、
暴徒化した黒人たちが
事件とは無関係な店を襲撃し、略奪を繰り返す姿
も描かれ、
白人vs黒人という単純な対立ではなく、
デトロイトという街が無政府状態に陥っていることがわかります。

俳優陣のなかでも、とりわけ異彩を放っていたのは
やっぱり、レイシスト白人警官クラウスを演じる
ウィル・ポールター
独特な顔立ちのウィル・ポールターは
個人的には『なんちゃって家族』の童貞小僧役が印象強く、
気弱ないい奴というイメージだったのですが、
そんなイメージを逆手に取ったようなクラウス役は
本来の彼がもつ無垢さがむしろ恐ろしい。
盗品をつめた紙袋を抱えて逃げる黒人に向けて
まったくためらいもなく背後から発砲したクラウスは
そのことを上司にとがめられても
「あ、すみません」とけろっとした表情。
クラウスは黒人虐待が違法だと知っていても
倫理的には悪いことだと思っていないのです。
「あんまり無茶するなよ」とたしなめる上司も然り。

警察だけでなく、州兵まで出動して
暴動鎮圧にあたるなか、
ついにアルジェ・モーテルで事件が発生。
モーテルの宿泊客カール(ジェイソン・ミッチェル)
悪ふざけで撃ったおもちゃのピストルの銃声を聞いた
州兵と警官隊が迷うことなくモーテルを銃撃。
モーテルに突入したクラウスは
またしても逃げるカールを背後から銃殺。
死体のそばにそっとナイフを置き、
正当防衛を装う
あたりが卑劣極まりないのです。
そして、いつ終わるともわからない尋問ゲームの始まりです。

たとえ不当だったとしても、
その場にいる者は全員容疑者だというなら、
全員を警察署に連行して取り調べすればいいものを
そうしないのは、
犯罪者を刑法で裁きたいのではなく、
(むしろそれは彼らにとって都合が悪く)
憎き黒人を私刑したいからにほかならないからでしょう。
「銃はどこだ」「撃ったのは誰だ」と繰り返すクラウスは
根拠のない確信に満ちあふれ、
まともな話がまったく通じないキチガイです。
白人警官たちの理不尽な拷問は
黒人たちと一緒にいた白人女性にも向けられ、
反吐が出るような醜いマチズモとルサンチマンが全開です。
人権問題に関わりたくないと退散する州兵や
目の前で行なわれている人権侵害を
怯えながら傍観するしかない州兵も
白人警官と同様かそれ以上に卑劣です。

それでも、無抵抗の人間を3人殺した警官たちが
裁判にかけられることになったときは
一筋の光が差したように思われましたが、
これまた司法がデタラメ
口が上手いだけの「有能な」弁護士によって
警官たちは無罪放免に。
クラウスのへらへらした態度は
さすがにオーバーアクトじゃないかと思いましたが、
これじゃあ、暴動が起きても仕方ないと思うほど
激しい憤りと無力感に見舞われます。
脚本のマーク・ボールは
当事者たちに綿密なリサーチを行なったそうですが、
被害者のなかには長く口を閉ざしたままの人もいたそうで、
彼らが受けた精神的苦痛は計り知れません。

なんとか白人警官たちの機嫌を取り、
中立に振る舞おうとしていた警備員ディスミュークスが
一転、事件の容疑者として
理不尽な取り調べを受けるエピソードが強烈だったわりには
いつのまにかふわっと解決したような感じになっていたのは
残念でしたが、
冒頭から怒濤の展開をみせたあと、終盤で落ちつく構成
嫌な余韻を感じさせるのに効果的でした。

人種差別はなくなるどころか、
むしろ勢いを増してきています。
短絡的な排外主義や差別的思想はわかりやすくて心地がいいし、
人間は簡単に利己的になり、簡単に狂います。
かの「美しい国」にとっても
対岸の火事ではないでしょう。







にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

アーカイブ

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンター