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早春

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(原題:Deep End 1970年/イギリス・西ドイツ合作 92分)
監督/イエジー・スコリモフスキ 製作/ヘルムート・イエデレ 製作総指揮/ジャド・バーナード 脚本/イエジー・スコリモフスキ、イエジー・グルザ、ボレスワフ・スリク 撮影/チャーリー・ステインバーガー 音楽/キャット・スティーブンス、CAN
出演/ジェーン・アッシャー、ジョン・モルダー=ブラウン、ダイアナ・ドース、カール・マイケル・フォーグラー、クリストファー・サンフォード、エリカ・ベール

概要とあらすじ
ポーランドの名匠イエジー・スコリモフスキが1970年にイギリスで撮りあげた作品で、15歳の少年の不器用な初恋を色鮮やかな映像美でつづった青春ドラマ。公衆浴場で働きはじめた少年マイクは、職場の先輩である年上の女性スーザンに惹かれていく。スーザンへの実らぬ思いを募らせたマイクの行動は次第にエスカレートし、悲劇的な結末へと突き進んでいく。当時ポール・マッカトニーの婚約者として話題を集めたジェーン・アッシャーがスーザン役、「初恋」のジョン・モルダー=ブラウンがマイク役を演じた。イギリスのシンガーソングライター、キャット・スティーブンスと、ドイツのプログレッシブロックバンド「カン(CAN)」が楽曲を担当。日本では72年に劇場初公開。2018年1月、デジタルリマスター版でリバイバル公開。(映画.comより



男は女の虚像を抱く

イエジー・スコリモフスキ監督『早春』を初めて観たのは
町山智浩氏の『トラウマ映画館』にちなんだ
WOWWOWの特集放送でした。
(同書に収録されている『裸のジャングル』や
『不意打ち』『戦慄!昆虫パニック』なども放送されたと
 記憶しています)
その後ソフト化もされず、
再びお目にかかることができなかったわけですが、
35年ぶりにデジタルリマスター版で公開された本作は
驚くほど鮮明かつ色鮮やかで
その魅力を存分に味わうことができました。

オープニングのクローズアップされた自転車にしたたる血の赤や
大衆浴場の受付嬢(おばちゃん?)と
窓枠が一体化しているようなグリーン。
そしてなにより
主人公マイク(ジョン・モルダー=ブラウン)を翻弄する美女、
スーザン(ジェーン・アッシャー)が纏う
目にもまぶしいイエローのコート。
テカテカの質感が異質さをさらに際立て、
スーザンがマイクの脳内映像でこのように輝いて見えているのことの
抽象的表現ではないかとさえ思えてきます。
いずれの色彩もとても鮮やかに再現されていて
初見の時よりも非常にポップな印象を受けました。
デジタルリマスター、すげえ。

いま思えば、ちょっとスカジョに似ている美少年マイクが
高校を卒業後、就職したのがプールのある大衆浴場。
そこで出会うのが年上で美人のスーザンなのです。
スーザンは従業員の先輩ですから
新入りのマイクに仕事のやり方を指南するのは当たり前ですが、
この関係性が
いろいろ教えてくれて、かまってくれるお姉さん
童貞マイクの脳内で変換されても致し方なし。
童貞のくせに(だからこそか?)
太った金持ち夫人にシュートしてぇ〜♡と迫られても、
かつての同級生が積極的に誘惑してきても
すでにスーザンのことしか頭にないマイクは
まったく相手にしないのです。

そんなウブウブなマイクを
スーザンがからかったりするもんだからタチが悪い。
しかもスーザンには婚約者がいて、
さらにはスケベ体育教師ともいちゃついていたのです。
デートでポルノ(ドイツの性教育映画だけど実質ポルノ)を
観に行くようなゲスな馬面の婚約者とスーザンの後を付けたマイクは
後ろの座席でスーザンの腕をくんかくんか嗅ぎ、
ついにはスーザンの胸に手を伸ばしてしまいます。
それをすべてわかったうえでマイクにキスをし、
好きにやらせたあと、警官を呼ばせるスーザン。
……タチが悪い。

初給料を握りしめたマイクが
スーザンと婚約者が通う会員制のクラブに入ろうとするも叶わず、
店の前で何度もホットドッグを買うコミカルなシーンのあと、
近くのストリップ小屋の店先に飾られていた
踊り子の等身大看板をみたマイクは驚くのでした。
なんと、その踊り子はスーザンそっくりだったのです。
愛しのスーザンよ。
オレという男がありながら、ほかの男といちゃついて、
さらには、あろうことか
ストリップの踊り子までやっていたのか!!
汚らわしい! なんて、汚らわしいんだ〜〜!!
と、自分勝手に脳内で激怒したマイクは
どんどん正気を失っていくのでした。
そして、プールの水の中で等身大看板を抱いて泳ぐ
美しくも悲しい有名なシーン。

マイクが抱きしめているのは、
自分が作り上げたスーザン=女性の虚像。
ゆえに彼の失望も身勝手なのです。
思春期の童貞ならではの妄執……と思いたいところですが、
男性は少なからずこのような身勝手さを
持っているのではないでしょうか。

自動車の前を自転車で遮って邪魔をしたり、
子供じみた嫌がらせをエスカレートさせるマイクに
嫌気がさしたスーザンの手がマイクの口を直撃した拍子に、
婚約者からもらった指輪のダイヤモンドがなくなってしまいます。
慌てふためくスーザンは
じつは婚約者のことをもっとも大切に想っていたのか、
それともダイヤモンドが惜しかっただけなのか。

周囲の雪をかき集めて持ち帰り、
溶かしてダイヤモンドを見つけようと考えたマイクとスーザンは
大衆浴場のプールへ。
スケベ体育教師が邪魔に入りますが、
セックスが下手なのを悟られないように
女学生ばかりに手を出してるクズめ! とスーザンに罵られ、
すごすごと退散します。
思えば、本作に登場する男性たちは
みなスーザンに振り回され、愚弄されてばかり。


婚約者に電話をかけたスーザンがプールに戻ってくると、
ディープ・エンド(プールの一番深いところ)で
全裸になって横たわっているマイクが。

舌の上にはあのダイヤモンドが乗っています。
マイクの望みを悟ったスーザンは全裸になり、
そばに横たわってマイクを受け入れようとします。
しかし、念願叶っていざというときに
マイクのマイクは不能に陥ったのでした。
(もしくは合体前にイっちゃったのか?)
そして、意気消沈するマイクは
あろうことか『ママ……』とつぶやくのです。
なにをかいわんや。

さっさと婚約者との待ち合わせに行こうとするスーザンを
話したいだけ! 話がしたいだけ! と
執拗に引き留めるマイク。
見苦しい。本当に見苦しいのですが、
あまりにも痛々しくて笑う気になれません。
それでもプールから立ち去ろうとするスーザンに向けて
マイクが天井から吊された照明を押しやると、
照明はスーザンの後頭部を直撃。
いまや水で満たされたプールに鮮血が流れます。
あの等身大看板と同じように
沈みゆくスーザンを優しく抱きかかえたマイクは
やっとスーザンを手に入れたと
考えていたのかもしれません。

イエジー・スコリモフスキ監督が
雪の中に落としたダイヤモンドという友人の話から逆算して
本作の脚本を練ったという逸話が面白いし、
アドリブが少なくないという俳優たちの演技に
瑞々しさを感じます。
デジタルリマスターの恩恵がなかったとしても、
決して色褪せない傑作です。





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