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全員死刑

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(2017年/日本 98分)
監督/小林勇貴 原作/鈴木智彦 脚本/小林勇貴、継田淳 製作/永山雅也、太田和宏、原啓二郎 プロデューサー/千葉善紀、西村喜廣 撮影/鈴木啓造 照明/太田博 録音/山口満大 美術/佐々木記貴 編集/小林勇貴、西村喜廣 音楽/中川孝
出演/間宮祥太朗、毎熊克哉、六平直政、入絵加奈子、清水葉月、落合モトキ、藤原季節、鳥居みゆき

概要とあらすじ
本物の不良少年たちを起用して描いた「孤高の遠吠」で注目された小林勇貴監督の商業映画デビュー作で、2004年に福岡県大牟田市で発生し、被告である家族4人全員に死刑判決が下った強盗殺人死体遺棄事件を映画化。死刑囚として獄中にいる次男の手記をベースにした「我が一家全員死刑」を原作に、未だその真相が解明されていない凶悪事件が描かれる。借金を抱え、困窮した生活を送っていた4人の家族。近所の資産家一家が脱税で蓄財していることを知った彼らは、資産家一家の金を強奪する計画を企てる。無謀な計画から1人が殺害されたことをきっかけに家族はさらに暴走。最終的に4人を殺害するまでエスカレートしていく。主人公の次男タカノリ役を「帝一の國」「トリガール!」の間宮祥太朗が演じるほか、長男役を毎熊克哉、両親役を六平直政、入絵加奈子、タカノリの恋人役を清水葉月がそれぞれ演じる。(映画.comより



ですよねー。

自主制作映画『孤高の遠吠』で高い評価を得た
小林勇貴監督の商業映画デビュー作、
『全員死刑』
です。

『孤高の遠吠』は数々の映画賞を受賞し、
映画関係者(とくに「映画秘宝」方面)の評価も高いのですが、
正直、ぼくにはその評価の理由が
よくわかりませんでした。
それはお前に審美眼がないからだといわれればそれまでですが、
地元の不良たちを集め、少ない予算やつたない技術など顧みず、
激情に駆られるようにとにかく映画を撮ってしまう、
その熱意と行動力は称賛に値するものの、
出来上がった映画が面白かったかといえば、
とてもそうは思えなかったのです。

本作が日活新人監督発掘プロジェクト第1弾として製作され、
プロデューサーの千葉善紀氏が
「今どき純粋に『映画を撮るのが楽しくて仕方ない』というような若者は
 無条件に応援すべきだと思ったんです」
公式サイトより
というように、
作品の出来不出来よりも熱意と行動力にこそ価値がある
という考え方は理解できます。
裏を返せば、日本映画の現状に対する
映画関係者たちの危機感が窺えます。
小ぎれいにまとまった、世間のご機嫌を伺うような作品よりも
閉塞感を打破してくれるような新鮮で刺激的な感性
求めているのではないでしょうか。
小林監督なら話題性も十分。
好きなようにやっちまえ! とばかりに
日本映画の未来を託したくなる気持ちはわかります。

しかーし、こちとらイチ観客。
ましてや本作は商業映画です。
制作者の熱意と行動力を忖度して評価しなければならない
いわれはありません。

大牟田4人殺害事件を綴った原作『我が一家全員死刑』
犯人家族の次男(男三人女二人の五人兄弟の四番目)による
獄中手記を中心とし、
5日間で4人殺しを殺し、すぐさま逮捕されてしまう家族の
あまりにも場当たり的で杜撰かつ残虐な犯行が記されています。
映画で再現されているディティールの多くは実際にあったことですが、
あまりにもライトなコメディタッチになっているため、
原作(というか事実)から感じ取れる
脱力するほどの浅はかさと残忍さが損なわれています。
著者の鈴木智彦氏が
「原作者としては許容範囲を超えています」公式サイトより
というように、
とくに被害者家族の描き方において事実から大きく逸脱しています。
もちろん、事実を忠実に再現する必要はまったくないし、
本作を不謹慎だとも思いません。(そもそも論で)
問題は、それがつまらないことです。
原作(というか事実)のほうが10倍恐ろしく、面白いのです。

本作について予告編を観る以上の下調べをしませんでしたが、
実際の次男は元力士でとにかく腕っ節が強く、
長男はのらりくらりと犯行に手を貸さないずるがしこい人物だったので、
次男の金髪イケメン間宮祥太朗と長男の角刈り毎熊克哉の配役は
てっきり逆だと思っておりました。
次男の彼女役の清水葉月
服装も含めてやくざの情婦らしからぬ印象。

西村喜廣テイストが濃厚ではあるものの、
プロのスタッフを従えた小林監督が
自主製作ではやりたくてもできなかったことを
ぎゅうぎゅうに詰め込んだような演出やカメラワーク

無邪気さを感じはするものの、
画面はいつまでもガチャガチャと落ち着きがなく、
手段として適正だとはとても思えません。
とくに自主製作ではハードルが高いのではないかと思われる
エロシーンが必要以上に多く
女性の股間のクローズアップから始まるオープニングも
はしゃいでるなあという印象しかありません。
唐突に次男の彼女がフェラチオするシーンでは
精液のついた口元を映した後、練乳のかかったイチゴを見せるなど
気の利いたことをやりたかったのかもしれないが、
表現が重複していて鼻白むばかり。
終盤では、次男と父親が並んで歩くカットを
スプリットスクリーンにする
のは全く意味がなく(並んでるのに!)
これをやりたかったんですねーとしか
思いません。
(そこがいいんだよ! といわれたら
 もう、なにもいうことはない)

最初の犠牲者をユーチューバーに設定しているのも
首をかしげますが、
犠牲者が2度息を吹き返すときの原作における恐ろしさ
まったく表現されていないのは残念至極。
ほかの犠牲者たちも同様に簡単には死なず、
そのことが無残さと犯人家族の愚かしさを同時に感じさせるのですが
いま行なわれていることの
なにが恐ろしく、なにが愚かなのか
ということは
まったく伝わってきませんでした。
途中途中で原作から引用された文章がその都度流れを寸断し、
鳴っていなければならない決まりでもあるのかと思うほど
つねに鳴り続ける安っぽい劇判は耳障りでしかありません。
挙げ句の果てには、黒煙のような亡霊……
最後の「Good Luck.」
次男による手記を締めくくる言葉で、
死刑を宣告されてもなお被害者に対する謝罪の言葉を口にしない次男の
自己陶酔感が表れていて絶句させられるのですが、
ハイテンションな悪ふざけに終始した本作では
言葉そのままの陽気さで響いてしまいました。
(もしかしてそれは映画が成功しているということなのか?)

ほかにもいいたいことは山ほどあるけれど、
ま、とにかく、
世間の評価は軒並み高いわけだし、
小林監督には今後もがんばっていただきたいものです。
父親役を演じた六平直政さんによると
「小林勇貴の映画って、センス悪い奴が観たら
 面白くないと思う」
(「映画秘宝」2017年12月号)
とのこと。

ですよねー。





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