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ノクターナル・アニマルズ

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(原題:Nocturnal Animals 2016年/アメリカ 116分)
監督/トム・フォード 製作/トム・フォード、ロバート・サレルノ 原作/オースティン・ライト 脚本/トム・フォード 撮影/シーマス・マッガーベイ 美術/シェーン・バレンティーノ 衣装/アリアンヌ・フィリップス 編集/ジョーン・ソーベル 音楽/アベル・コジェニオウスキ
出演/エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、エリー・バンバー、アーミー・ハマー、カール・グルスマン、ロバート・アラマヨ、ローラ・リニー、アンドレア・ライズボロー、マイケル・シーン、インディア・メネズ

概要とあらすじ
世界的ファッションデザイナーのトム・フォードが、2009年の「シングルマン」以来7年ぶりに手がけた映画監督第2作。米作家オースティン・ライトが1993年に発表した小説「ミステリ原稿」を映画化したサスペンスドラマで、エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソンら豪華キャストが出演。アートディーラーとして成功を収めているものの、夫との関係がうまくいかないスーザン。ある日、そんな彼女のもとに、元夫のエドワードから謎めいた小説の原稿が送られてくる。原稿を読んだスーザンは、そこに書かれた不穏な物語に次第に不安を覚えていくが……。エイミー・アダムスが主人公スーザンに扮し、元夫役をジェイク・ギレンホールが演じる。(映画.comより



大ベストセラーになることを祈って

よく存じ上げないんですが、
世界的ファッションデザイナーのトム・フォード監督による
『ノクターナル・アニマルズ』
初監督作『シングルマン』は未見です。

まあとにかく、
ジャバ・ザ・ハットみたいな肥満女性が
垂れ下がった贅肉を振るわせながら踊るオープニング

つかみはOK。
彼女たちの笑顔とは裏腹に
醜く崩れた肉の塊が波打つさまには
生理的な嫌悪感を禁じ得ません。

この冒頭の映像は
アートディーラーのスーザン(エイミー・アダムス)が催した
展示会のビデオ・インスタレーションなのですが、
非常に欺瞞的で屈折した美術作品から
トム・フォード監督の美術界に対する自虐的批判精神
読み取れます。
ほかにも、美容整形のしすぎで
オバQみたいな顔になった女性
が登場し、
美術界が虚飾にまみれて本質を見失っていることを強調します。
デザイナーであるトム・フォード監督にとって
このような批判には自戒の念が込められているだろうし、
そこから脱出するために
映画という表現方法を選択したということなのでしょうか。
ほかにも、ジェフ・クーンズダミアン・ハーストなど
監督所有の本物の現代美術作品が登場しますが、
それらはすべて大金持ちが愛でる嗜好品であり、
芸術が本来持つべき表現の衝動とかけ離れているようにも思えます。
そしてそれは、おそらく本作のテーマを
象徴しているはず。

反吐が出るほど洗練された豪邸で暮らすスーザンのもとに
元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から
彼女に捧げる小説の原稿が送られてきます。
スーザンが包装紙で指を切ってしまうのは
あからさまに警告を意味しています。
現在の夫(アーミー・ハマー)との関係は
すでに冷えきっていて
エドワードとの思い出に浸るようになっていたスーザンは
エドワードからの突然の知らせをむしろ歓迎するかのように
彼の小説を読み始めるのでした。
つねに濃いアイメイクでびしっと決めているものの、
どこら無機質で冷ややかな印象のスーザンが
エドワードの小説を読むときはすっぴんでセーターを着ているのは
非常にわかりやすい対比。
本作をもってして、さまざまな解釈があるとか、
リンチやフィンチャー、
クローネンバーグやキューブリックを引き合いに
その映像美を讃えるのは、さすがに過大評価。
基本的にとてもわかりやすい映画です。

極度な夜型人間のスーザンにちなんで
「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」と題された
エドワードの小説は
妻と年頃の娘を伴って
マイカーでテキサスへと向かうトニー(ジェイク・ギレンホール)の物語。
トニーがどういう男でなんのためにテキサスへと車を走らせるのか
よくわかりませんでしたが、
彼曰く「携帯電話の電波も届かないのがテキサスのいいところ」だとか。
トニーの妻を演じているアイラ・フィッシャーが
絶妙にエイミー・アダムスに似ていて混乱しかけます。
真夜中のハイウェイをひた走っていると
進路を妨害する2台の車が。
レイ(アーロン・テイラー=ジョンソン)がリーダーの
そのチンピラどもは
やがてトニーの車に体当たりして停車させ、
お前らが俺の車に当たってきたからこんなことになった、
パンクしたタイヤを交換してやるからなどと難癖をつけ、
絡んでくるのでした。
ただ嫌がらせをすることのみを喜びとする
話が通じない輩(やから)。最悪です。
しかも、そこは置き去りにされるだけで死を意味する
砂漠のど真ん中。
こういう状況を見せつけられると
やっぱりアメリカには銃が必要なのかもな、と思い知らされます。
通りがかったパトカーすら当てにならない世界で
道理が通じない相手から家族を守るために銃を持つのは
安易に否定できない自衛手段なのかもしれません。

呑気だからか過信からか
自衛のための武器を持っていなかったトニーが
レイ率いるクズどもにおろおろと翻弄されるさまは
本当に腹立たしくも恐ろしい田舎ホラーであり、
全てを失ったトニーがぎこちなく反撃する姿は
『わらの犬(1972)』を彷彿とさせます。

結局、レイたちに連れ去られた妻と娘は
レイプされた挙げ句に死体で発見されました。

一度、放置したトニーをレイとその子分が探しに来ることから、
このどうしようもない輩どもも
最初からレイプして殺してしまおうとは
考えていなかったのではないでしょうか。
面白半分によそ者をからかっているうちにエスカレートし、
激しく抵抗するトニーの妻と娘の処置に戸惑って
面倒くさいから殺しちゃった……くらいの軽さが
見て取れます。
それがなおさら醜悪なのですが。

なんとか生き延びたトニーは
肺がんで余命幾ばくもない刑事ボビー(マイケル・シャノン)
自暴自棄な手助けもあって
法では執行できない正義を貫くため、私刑を実行に移すのでした。
殺された妻と娘の復讐はもとより、
自分が「weak(弱い)」ではないことを証明するために
レイを殺したトニーは自らも命を落としてしまうのでした。

……という、エドワードの小説を読んでいたスーザンは
まだ途中なのにエドワードに再会したいとメールしつつ、
自分とエドワードの過去を振り返っています。
たがいにテキサス生まれのエドワードとスーザンは
ニューヨークで偶然再会し、
(このときふたりとも挫折を経験している)
もともと互いに惹かれあっていたことから結婚を決意することに。
エドワードはスーザンを彼女の母親とそっくりだといいますが、
スーザンは母親のことを保守的な差別主義者だと罵ります。
スーザンの母親は彼女のいうとおり、
本当にいけ好かないクソばばあなのですが、
エドワードを「weak(弱い)」と評する母親に対して
「sensitive(繊細)」なんだと反論していたスーザンは
エドワードとの結婚後、母親と同じように
エドワードに対して「weak」と口走ってしまいます。

母親に反発し、
エドワードの才能とロマンに惹かれていたはずなのに、
経済的な不安から金持ちの男になびくスーザン。
しかもエドワードとの間に妊娠した子供を堕ろしてしまいます。
堕胎が禁じられているカソリックだと自覚しているにもかかわらず。
常にないものねだりの逆張りをしているだけで
スーザンには大義とか信念とか愛とかといったものがないのです。
彼女自身はそれを求めているのかもしれませんが、
彼女がとる行動は常に日和見的で身勝手なのです。

お金には困らないけどなんだか満たされないわ〜というスーザンは
出張中の夫が愛人を連れていることがわかると、
そそくさとエドワードとのディナーの約束を取り付けます。
赤い口紅をさしたときにはかろうじて我に返りますが、
胸の開いたドレスを着てエドワードとの約束に向かうスーザン。
しかし、待てど暮らせどレストランにエドワードは現れません。

いうまでもなく、これはエドワードの復讐です。
自分が誘えば男が尻尾を振りながら現れると思ってんのか?
金に困ったら金持ちの男、
それが退屈になったら夢を追い求める男になびく。
そんなふうに生きてきたスーザンに
信念を持って生きる人間の苦しみを味合わせてやるのです。
世の中はお前に合わせて回ってんじゃねえぞと。

小説の中でトニーの妻と娘が殺されるのは
エドワードのすさまじい喪失感を表しています。
しかし、現実には
エドワードと彼の子供を殺したのはスーザンです。
エドワードはすべての原因は自分の「弱さ」にあると自戒していますが、
彼の「繊細な」真意がスーザンに届くかどうか……。

エドワードの『ノクターナル・アニマルズ』が
大ベストセラーになることを祈って。





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