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ザ・コンサルタント

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(原題:The Accountant 2016年/アメリカ 131分)
監督/ギャビン・オコナー 製作/マーク・ウィリアムズ、リネット・ハウエル・テイラー 脚本/ビル・ドゥビューク 撮影/シーマス・マッガーベイ 美術/キース・カニンガム 衣装/ナンシー・スタイナー 編集/リチャード・ピアソン 音楽/マーク・アイシャム
出演/ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、J・K・シモンズ、ジョン・バーンサル、ジョン・リスゴー、シンシア・アダイ=ロビンソン、ジェフリー・タンバー、ジーン・スマート

概要とあらすじ
「アルゴ」のベン・アフレックが、凄腕の殺し屋の顔を持つ謎の会計士を演じたサスペンスアクション。田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフには、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切り、年収10億円を稼ぎ出す命中率100%のスナイパーというもう一つの顔があった。そんなウルフにある日、大企業からの財務調査の依頼が舞い込んだ。ウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼はなぜか一方的に打ち切られ、その日からウルフは何者かに命を狙われるようになる。アフレックが主人公ウルフを演じるほか、「マイレージ、マイライフ」のアナ・ケンドリック、「セッション」のJ・K・シモンズらが出演。監督は「ウォーリアー」「ジェーン」などを手がけたギャビン・オコナー。(映画.comより



舐めてた会計士が優秀だったムービー

『イコライザー』『ドント・ブリーズ』みたいな
「舐めてた相手が実は殺人マシンでしたムービー」(ギンティ小林氏)
略して「ナーメテーターもの」だと思って観てみたら
どうも違うので困惑する
『ザ・コンサルタント』
気持ち悪いから2回観ちゃったよ。

ホームセンターの店員だったり、盲目の年寄りだったり、
表向きはとても強そうには見えないけれど
じつは高い殺人スキルを持つ主人公…というのが
「ナーメテーターもの」なわけですが、
本作の場合、主人公のクリスチャン(ベン・アフレック)の職業が
会計士だということが見くびるに値する「表の顔」になるはずなのに、
元々彼の主戦場は裏社会の会計士であって
確かに殺人スキルの高さは意外かもしれないけれど
会計士であることが敵を欺く手段になっていないのです。
もちろん、税金対策の相談に来る農家の夫婦にとっては
クリスチャンの「裏の顔」は予想だにしないことでしょうし、
彼を襲う刺客たちも
「なんでたかが会計士ひとりを始末できないんだ!」と
ご主人様から叱られたりはしていますけど、
そもそも「表向きは会計士だけどじつは殺人マシン」という
描かれ方をしていません。
だから「ナーメテーターもの」だと思って観始めると
なんだか困惑してしまうのです。

その理由は、表の顔か裏の顔かという以前に
クリスチャンが高機能自閉症であることのほうが
前面に押し出されている
からではないでしょうか。
本作は主人公が自閉症を克服(?)していく過程を
詳細かつ極端にデフォルメして描き、
自閉症の子供を育てるということはどういうことか?
健常者(定型発達=NT)とはなにか? 「普通」とはなにか?
ということを裏テーマにしている……はずなので
「ナーメテーターもの」として楽しもうとすると
いまいち解りづらいのです。おほほ。

冒頭のフラッシュ・フォワードは後回しにして、
障害児のケアをする施設にいる幼いクリスチャンは
両親が施設のオーナーに相談する傍らで
「ソロモン・グランディ」の童謡を口ずさみながら
ジグソー・パズルに興じています。
おそらく絵柄ではなくピースの形状だけに興味があるクリスチャンは
パズルを裏返しにしているのですが、
最後のピースを見失って半狂乱になると、
言語障害の少女ジャスティーンが床に落ちたピースを見つけてくれます。
その最後のピースがモハメド・アリの左胸にあたる部分なのは、
父親から買ってもらった自転車を盗まれた幼少期のアリが
犯人に鉄拳制裁を加える目的でボクシングを勧められたという逸話を
示唆しているのではないでしょうか。
これは軍人である父親の
「苦手なら慣れさせる」という教育方針を象徴しているのでしょう。
この施設のボードに貼られていたスマイルマークみたいな
おそらく他者とのコミュニケーション指導で用いられる教材アイテムは
クリスチャンの射撃の的になるメロンやロッカーのドアの張り紙など
彼を落ちつかせるサインとして繰り返し登場します。

さて、成長したクリスチャンは
農家夫婦に税金対策を指南したあと、
従業員のおばちゃんからのディナーへの誘いをあっさり断り、
自宅に帰ってパンケーキとベーコンと目玉焼きを
それぞれ3つずつ調理して食べるの
ですが、
これはおそらく、その後に彼が企業の不正支出を調査した際に
「人は任意の数字を選ぶとき、無意識に3を選ぶ」
といっていたのと呼応しているはず。
要するに、クリスチャンにとっての食事は
適当に済ますだけの「任意」のものなのです。
そして、大音量でロックをかけながら激しく点滅するフラッシュのなかで
脛を棒でごりごりする
のです。
大きな音と光が苦手だといわれていたクリスチャンにとってこの日課は
「苦手なら慣れさせる」という父親の教えを忠実に守っている証でしょう。
まあ、いくら鍛えても脛は痛いと思うけど……。

その頃財務省では、
局長のキング(J・K・シモンズ)
分析官のメディナ(シンシア・アダイ=ロビンソン)を呼びつけ、
彼女の経歴詐称を脅しの種にして
数々の有名ギャングの会計士をやっているにもかかわらず
殺されずにすんでいる謎の男を捜し出せと命令します。
この時点では、キングの要求が
「なんで殺されないのか知りたい」という漠然としたものに過ぎず、
探し当てたからといってどうなるわけでもなかったりするのが
本作を解りづらくさせているひとつの要因で
謎の男=クリスチャンを探すキングの真意は
後半になってわかります。

クリスチャンには
スマホを通じて仕事のマネージメントなどをやっている
謎の女性アシスタントがいて
最近、目をつけられてるから
カタギの仕事をしなさいといわれたクリスチャンは
家電から義手義足、果ては兵器まで手がける
リヴィング・ロボティクス社へと出向きます。
不正な支出を調べて欲しいといわれたクリスチャンは
経理の矛盾点を発見したデイナ(アナ・ケンドリック)
ボーイ・ミーツ・ガール。
小柄でちょっと受け口なアナ・ケンドリックの
男好きする「ちょうどよさ」ってなんなんでしょう。
このコならイケるかも? と男を勘違いさせる絶妙な親近感でしょうか。
(ところで、デイナのランチは弁当だったんですけど、
 会計資料を徹夜で準備したというんだから、
 帰宅していないはずのデイナはその弁当を
 一日前に作ったことになるわけで……大丈夫か?)
自閉症のクリスチャンもご多分に漏れず、
デイナから「ポーカーをする犬」という絵の話を聞いたときには
本作ではじめてにやっと笑います。
クリスチャンとデイナはアート好きという共通項があったのです。
その後いろいろあったあと、デイナとホテルに入ったときには
人の目を見て話せないはずのクリスチャンが
デイナをガン見してジョークまでとばしてデレデレです。
自閉症も治せるアナ・ケンドリック。恐るべし。

15年分の会計資料を一日で解析したクリスチャン。
やってきたデイナに嬉々として数字の行方を解説します。
社長の妹が現れて退席を命じられたデイナが
別れ際にクリスチャンに向けて目を大きく見開いてみせる一瞬の表情
クリスチャンが苦手とするアイコンタクトであり、
私たち、通じ合ってるぅ♡のサイン。たまらんね。

しかーし!
リヴィング・ロボティクス社の社長ラマー(ジョン・リスゴー)が雇った
ブラクストン(ジョン・バーンサル)によって
不正の張本人と思われたCEOが自殺を装って殺害されたことをうけて、
会計の調査は打ち止め。
やり始めたら完遂しないと気が済まないクリスチャン
激しく動揺します。
さらにはクリスチャン本人とデイナも標的にされ、
ラマーの妹も殺されてしまいます。
あまりにもラマーが金に無頓着かつ
友人想いの無垢なやつかのように振る舞うのでわかりづらいのですが、
会社の不正に気づいたラマーの妹が
クリスチャンに調査を依頼し、
クリスチャンの会計士としての技量を「見くびっていた」ラマーとCEOが
クリスチャンに調査させたためにエラいことになった、というわけで
あえていうなら本作は「舐めてた会計士が優秀だったムービー」
少しでもクリスチャンを懐柔しようとするのならまだしも、
自ら調査させておいて、不正がバレたら殺そうとするところも
な〜んかイマイチ釈然としないポイントです。

キング局長に脅されて分析を進めていたメディナは
ガンビーノ一家が惨殺された現場の映像と音声を元に
謎の会計士=クリスチャンに近づこうとしていました。
結果、クリスチャンの表向きの事務所「ZZZ会計事務所」
並びのネイルサロンやクリーニング屋の共同経営者であることが判明し、
収入をたくみに現金化していたことがわかります。
しかし、この時点では
クリスチャンがなんらかの犯罪を犯している証拠を掴んだわけではなく、
なんか怪しいよねという程度に留まっているので
メディナのついに見つけた!感がしっくりきません。

メディナとともにクリスチャンの自宅を訪れたキング局長は
おもむろに思い出話を始めます。
冒頭シーンのガンビーノ一家への突入はキング局長の記憶で
命乞いをした挙げ句にクリスチャンに見逃された過去があった
のです。
父親に倣って軍人になったクリスチャンは
家を出て行った母親の葬儀に父親とふたりで出席した際に、
現在の家族から拒否され、それに激昂したクリスチャンが暴れたところ、
警官から発砲され、彼をかばった父親が射殺されてしまったのでした。
逮捕されたクリスチャンは刑務所に収監され、
そこで出会ったフランシスという裏社会の会計士に気に入られて
指南を受けましたが、
司法取引によって安全を確保されていたはずのフランシスはなぜか釈放され、
ガンビーノ一家の手によって処刑されたのです。
そのことに激怒したクリスチャンが水筒で看守を殴って脱獄し、
リベンジを果たすために向かったのが冒頭シーンというわけ。
ああ、まどろっこしい。

ガンビーノ一家襲撃現場で
キング局長がクリスチャンに見逃してもらえたのは
彼がふたりの息子の父親だったことが大きく影響しています。
(クリスチャンの母親が再婚後に生んだ子供もふたりの男の子でしたが)
クリスチャンと弟は子供の頃から父親に厳しく育てられ、
実践的武術シラットまで修得していたのですが、
クリスチャンは父親に対して近親憎悪を抱いていたのでしょう。
キング局長に父親の理想の姿を託し、
アシスタントを通じてマフィア撲滅のための情報を
提供するようになった
のではないでしょうか。
そしてキング局長のほうも、
クリスチャンに対して同胞意識を感じているようす。
ていうか、いくら逮捕履歴が抹消されているからといっても
服役中からほぼほぼクリスチャンが何者かわかっているにもかかわらず、
ゼロからメディナに調査させるのは……なぜ?

とにかく、全てを完遂しないと気が済まないクリスチャンは
ラマー宅に単身突入。
そこでは用心棒ブラクストンとその仲間たちが待ち受けていましたが、
雑魚を一蹴したクリスチャンがブラクストンと邂逅すると
なんと、ブラクストンはクリスチャンの弟だったのです!
幼少時のシーンで意味ありげなクローズアップがあったとはいえ、
ここで生き別れた兄弟の再会??
ずっと探してたのに! なんでママの葬儀に呼んでくれなかったの?!
という、わけのわからない展開をモニタ越しに見つめるラマー社長の
困惑した表情
は観客の思いそのもの。
殴り合った挙げ句にクリスチャンから「腕を上げたな」といわれると
ま〜嬉しそうに笑う弟ブラクストン。
なんなん?

株価を操作したおかげで
手足のない人に義手義足を提供できるんだぞーという
大義に耳を傾けるでもなくラマー社長を射殺したクリスチャンは
弟との再会を約束し、
お詫びの印に可愛いデイナにポロックの絵画をプレゼントして、
姿を消すのでした。

裏稼業で大もうけしていたクリスチャンは
その金をかつて自分がいた障害者施設に寄付していたのですが、
そこにいた言語障害の女性こそが
クリスチャンのアシスタントであり、
幼少時にジグソー・パズルのピースを見つけてくれた
ジャスティーンだったのです。
ジャスティーンは文字入力を音声変換していたのですが
どうせなら男性の声にしていてくれれば
もっと意外性があったのになあとは思いました。

というわけで、
ディティールを端折ると辻褄が合わなくなるので
長くなってしまいましたが
「舐めてた相手が実は殺人マシーンでしたムービー」として
まとめてしまうには無理のある
ヘンテコな映画でした。





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