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虹を掴む男

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(原題:THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY 1947年/アメリカ 110分)
監督/ノーマン・Z・マクロード 製作/サミュエル・ゴールドウィン 原作/ジェームズ・サーバー 脚本/ケン・イングランド、エヴェレット・フリーマン 撮影/リー・ガームス 音楽監督/エミール・ニューマン 音楽/デヴィッド・ラクシン
出演/ダニー・ケイ、ヴァージニア・メイヨ、ボリス・カーロフ、フェイ・ベインター、アン・ラザフォード、フローレンス・ベイツ、サーストン・ホール

概要とあらすじ
「我等の生涯の最良の年」のサミュエル・ゴールドウィンが製作し、「腰抜け二挺拳銃」のノーマン・Z・マクロードが監督した1947年度作品。ユーモア作家ジェームズ・サーバーの短編小説をケン・イングランドと「五番街の出来事」のエヴェレット・フリーマンが脚色し、撮影は名手リー・ガームス久々のクランクになるテクニカラー映画。主演は本邦初紹介のダニー・ケイと「死の谷」のヴァージニア・メイヨで、「フランケンシュタイン(1931)」のボリス・カーロフ、「サンマー・ホリデイ」のフェイ・ベインター、「風と共に去りぬ」のアン・ルザーフォード、「偉大な嘘」のサーストン・ホール、ゴードン・ジョーンズ、コンスタンティン・シャイン、レジナルド・デニー、ヘンリー・ゴードンが助演している。ピアース出版会社の校正係を勤めるウォルター・ミティは小心翼々たる平凡なサラリーマンだが、人なみはずれた白昼夢の持ち主であった。出勤の途中、石鹸の広告を見ている中に暴風雨の中を航海する帆船の船長として活躍する夢を描いて交通事故を起こしそうになったり、編集会議で社長が病院ロマンス雑誌の企画を発表すると、天下の名国手として至難な手術をなしとげる自分を夢見て、社長に叱言を喰うというような毎日をおくっていた...(映画.comより抜粋



古い映画とあなどるなかれ。

2014年日本公開の
ベン・スティラー監督・主演『LIFE!』の元ネタ、
『虹を掴む男』です。
ざっと70年前の作品ですが、ちっとも古くささは感じません。
現実と妄想を行き来するという設定とその演出方法が、
当時どのような受け止められ方をしたのかわかりませんが
違う次元の出来事がやがて判別不可能になるプロットというのは
現在の作品でも、あちらこちらに
見受けられるような気がします。

ダニー・ケイが演じる主人公のウォルター・ミティ
B級サスペンス小説ばかりを出版しているピアース出版社の編集者。
眼や耳にしたものをきっかけに妄想を膨らませては楽しんでいます。
ウォルターがなにやら思いつくと
ポワンポワンポワ〜ンてなぐあいにシーンが変わり、
彼が主人公の妄想世界へと映像がトリップします。

冒頭から、ウォルターが出社するために
駅まで運転している車の助手席で
あれやこれやと頼み事をまくしたてる母親が登場します。
ウォルターの妄想癖を知っているからか
とにかくメモをとれとしつこく、
口うるさい反面、ウォルターに対する過保護な一面も窺えます。
そんな母親を、あきらかに疎ましく思っているはずのウォルターが
それでも母親の要求に応えようとしているのは
彼が気の優しい青年だからというだけではなく、
共依存の傾向もあるのではないかと思います。
ウォルターの父親が登場しないことを考えれば
ウォルターと母親の間には
ある種の異常な関係性があるように思えてきます。

ウォルターが現状の生活に
愚痴をこぼしたり不満をもらしたりすることはなく、
なぜ彼に妄想癖があるのかという直接的な原因は
描かれていませんが
異常に口うるさく世間体を気にする母親と
いつも小型犬を連れ歩くいかにも頭の悪そうな婚約者の相手をさせられ、
出版の仕事は好きなようだけど、
自分のアイデアを社長に横取りされてしまうのをみると
彼の妄想癖は現実からの逃避だと考えていいしょう。
こんなはずじゃなかった、もっとできるはずだという自分が思い描く自分を
妄想によって埋め合わせる多くの人々の代表として
ウォルターがいるような気がします。
また、そのようなウォルターの現実逃避を目的とする妄想が
結果的に社長にアイデアを横取りされたとしても、
クリエイティブな発想となり得ることを描いていたのは
見逃せません。

ウォルターの妄想シーンのなかでも突出しているのが、
ドイツ軍相手に英雄的な活躍をみせ、
上官からも頼られる戦闘機乗りになりきったシーンです。
パーティ会場で一目置かれているウォルターが
他の兵士からはやし立てられ、
学生時代の音楽教師のものまねを披露する芸が見物です。
このシーンはまさにダニー・ケイ・ショーといったところで
ウォルターの役柄なんかすっとばして
ダニー・ケイの芸を堪能するために用意されたシーンなのです。
どのように面白いかは、DVDをとくとご覧あれというかんじですが
ダニー・ケイは楽譜が読めなかったものの、
オーケストラの指揮者としても活動していたそうで
クラシック音楽に対する彼の造詣の深さが窺えます。

ロザリンド(ヴァージニア・メイヨ)が登場して、
現実だか妄想だか判別不能な展開が繰り広げられますが
このサスペンスフルな展開を妄想したと考えると
なおさらウォルターが現実に退屈していたことが想像できます。

ロザリンドにまつわるサスペンスは「黒い手帳」が鍵になり、
 彼女の叔父はオランダの王位博物館長だった。
 叔父はナチの手に入らぬよう疎開しておいた
 宝石の隠し場所を記した手帳を持った男との連絡を彼女に命じたが、
 宝石を狙う悪漢の一味に後をつけられたロザリンドは
 彼等を撒くためにウォルターを利用したことを告白した。

 (wikipediaより)
という、一応の根拠はあるもののそんなことはど〜でもよくて
いわゆる「マクガフィン」としての機能しかなく、
「黒い手帳」を巡って、
ウォルターが右往左往するさまが重要なのです。

ロザリンドに招かれて紅茶を飲むシーンでの
ウォルターが椅子を運んでくるときのぐだぐだ
敵に追われてデパートに逃げ込んだ時の悪ふざけも面白いのですが
追い詰められては、部屋の窓から逃げ出し、
ビルの外壁伝いに、社長が演説中の会議に入り込んでは怒られて
椅子にぶつかってじじいを倒すというのを繰り返す、
一連のくだりの「天丼」は笑っちゃいます。

コメディとして、
本当によくできた傑作だと思いました。
ぜひ。





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