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PIG ピッグ

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(原題:Pig 2021年/アメリカ 91分)
監督・脚本/マイケル・サルノスキ 製作/バネッサ・ブロック、ディミトラ・ツィングー、トーマス・ベンスキー、ベン・ギラディ、ドリ・A・ラス、ジョセフ・レスタイノ、デビッド・キャリコ、アダム・ポールセン、ニコラス・ケイジ、スティーブ・ティッシュ 製作総指揮/マイケル・サルノスキ ロバート・バートナー、ヤラ・シューメイカー、ボビー・ホッピー、レン・ブラバトニック、アビブ・ギラディ、ダニー・コーエン、ビンス・ホールデン、マリサ・クリフォード、ティム・オシェイ 原案/バネッサ・ブロック、マイケル・サルノスキ 撮影/パット・スコーラ 美術/タイラー・ロビンソン 衣装/ジェイミー・ハンセン 編集/ブレット・W・バックマン 音楽/アレクシス・グラプサス、フィリップ・クライン
出演/ニコラス・ケイジ、アレックス・ウルフ、アダム・アーキン、カサンドラ・バイオレット

概要とあらすじ
ニコラス・ケイジが主演を務め、溺愛するブタを奪還するべく戦う男を描いたリベンジスリラー。オレゴンの森の奥深くでひとり孤独に暮らす男ロブ。彼にとって唯一の友だちは忠実なトリュフ・ハンターのブタで、収穫した貴重なトリュフを取引相手の青年アミールに売った金で生計を立てていた。そんなある日、ロブはライバルのハンターから襲撃を受けて負傷し、ブタを連れ去られてしまう。愛するブタを奪い返すため犯人の行方を追うロブだったが……。共演は「ジュマンジ」シリーズのアレックス・ウルフ。本作が長編デビューのマイケル・サルノスキが監督を務めた。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2022/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2022」(2022年7月15日~8月11日)上映作品。(映画.comより



それぞれの「トリュフ」

新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2022/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2022」での上映ということで公開規模が小さいのが残念ですが、なにはともあれみんな大好きニコラス・ケイジの『PIG ピッグ』です。

日本版ポスターには「ニコラス・ケイジが愛するブタを奪還する、慟哭のリベンジ・スリラー!」という威勢のいい惹句が踊っておりますが、これはこれまでの(とくにここ最近の色物扱いされている)ニコケイに対する揶揄を込めたイメージを利用しようとするもので、本作のニコケイ演じる主人公ロブはまったく復讐を目的としていないので、決して「リベンジ・スリラー」ではありません。奪われた「愛するひと」を奪還しようとするという意味では傑作『マンディ 地獄のロード・ウォリアー(2017)』と同じと言えば同じだけれど、パンツいっちょで雄叫びを上げたりするどころか、非常に抑制された演技をみせています。基本的に寡黙な男なんですが、なぜかセリフがなかった『ウィリーズ・ワンダーランド(2020)』ともワケが違います。高級車に蹴りを入れてボディをへこませたりはするけれど、武器を自作したりしないし、いつも不潔そうで顔が傷だらけだったりはするけれど、血まみれで高笑いしたりもしません。

一匹のメスのブタとともに森の中で隠遁生活を送るロブ(ニコラス・ケイジ)。彼はブタを使って地中に埋まった良質なトリュフを採取していたのでした。彼の元には毎週木曜日になると仲買人のアミール(アレックス・ウルフ)が訪れ、ロブが収穫したトリュフを買い取っていたのでした。

ここで重要なのは、本作の舞台がオレゴン州ポートランドということ。とかいって、訳知り顔で申し上げましたが、これは下に貼り付けた「激アツのシェフバトルムービー!ニコラス・ケイジ主演「PIG/ピッグ」&90分ワンショット「ボイリング・ポイント/沸騰」【町山&藤谷のアメTube】」という動画で解説されていた情報の受け売りです。

温帯雨林が存在するオレゴン州ポートランドはキノコの産地として有名で、食文化に対する意識が非常に高い土地柄だということ。地ビールだけでも1000種類以上あるそうです。なおかつ、なぜかシェフ同士が殴り合っている地下室は、ロブのセリフにも登場したウィラメット川に停泊した船舶からいろんな店舗の地下倉庫に商品を運ぶために建設された「シャンハイ・トンネル」と呼ばれるもので、『ファイトクラブ(1999)』の原作者チャック・パラニュークはポートランド在住とのこと。つまり、本作はポートランドご当地映画なのです。

でまあ、突然ロブが飼っているブタが何者かによって強奪されてしまいます。なぜなら、あんなに良質なトリュフを採取できるのはあのブタのおかげだ、というわけです。アミールを「足」としてブタ奪還へと行動を始めたロブは、わりとあっさり実行犯のジャンキー・カップルにたどり着きます。しかし、彼らはすでにブタを売り飛ばした後。ブタを買い取った黒幕は、ロブが隠遁生活を始めた15年前とは打って変わって都市化したポートランドにいるもよう。というわけで、ロブはすっかり様変わりしていまったポートランドへと赴くのでした。もちろんアミールを「足」に使って。ロブの目的はブタを奪った者に復讐することではなく、ブタを取り戻すことだけなのです。

ロブの過去を何も知らないアミールという存在が観客の代弁者となっていますがそれはともかく、かつてのロブがポートランドで一目置かれる特別なシェフだったということが徐々にわかってきます。ロブの名前を聞くと態度が変わる人々の反応に、若かりしころのヤンキー武勇伝的オールマイティカードみたいな権威主義を肯定するかのような居心地の悪さを感じなかったわけではありませんが、ロブによるブタ捜索の過程が、図らずも地中=すなわち過去を掘り返す行為であることが重要です。それは言わずもがな、地中のトリュフを掘り返すブタとシンクロします。

愛する妻を失って隠遁生活を始め、妻に対する拭いきれない愛情をトリュフ・ブタに転嫁していたロブ。自殺を図って植物人間状態の母親に対する愛情と、父親を乗り越えなくてはいけないと懸命にイキってみせるアミールとロブとの疑似親子関係。そして、ロブのブタを盗んだ黒幕であるアミールの父親が抱える闇……。イングリッシュ・バーを開くのが夢だったシェフとのやりとりが象徴的ですが、ロブによる行為のすべてがそれぞれにとってかつて大切だったものを掘り起こす行為であり、ロブが一方的な糾弾者ではなく、自分自身にも跳ね返ってくる問題であることが、本作の秀逸なところではないでしょうか。

トドメになるのは、いつも口論しながら帰宅したというアミールの両親が、唯一満足げだったという日の料理をロブが再現するシーン。ロブが用意したワインと料理を口にしたアミールの父親に「その日」が蘇ってくるさまは見事でした。

結局、盗まれたロブのブタがアミールの父親のもとに届いた頃には、ジャンキー・カップルの酷い扱いによってすでに瀕死の状態でした。慟哭するロブ。前述したように、ロブの目的はブタを盗んだ者に対するリベンジではないのです。ただただ愛するものを取り返したいのです。

ブタの死を知ったロブは「探しに行かなかったら頭の中で生き続けていたかもしれない」ということを言います。失ったものへの愛情を記憶の中で反芻していること、もしくは口実を設けて忘却の彼方へ追いやってしまうこと。ロブのブタ探しはいずれの逃避行動も否定し、真摯に対処すべき問題に直面することを迫ってきます。それは自分自身を糾弾する行為でもあるのです。

世捨て人となり、妻が残したカセットテープの音声を聞いて過去に留まる決意をしたロブが、ブタ誘拐によって図らずも現実と向き合わざるを得なくなく物語でもあり、ロブに係わった人々は自分の過去と向き合わざるを得なくなるという、それぞれの「トリュフ」を掘り起こす映画でした。ロブの存在自体がトリュフ・ブタなんですね。ニコケイの演技はもちろん、ホクロでおなじみアレックス・ウルフのチャラいけど素直なヤツという演技が見事でした。











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