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リコリス・ピザ

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(原題:Licorice Pizza 2021年/アメリカ 134分)
監督・脚本/ポール・トーマス・アンダーソン 製作/サラ・マーフィ、ポール・トーマス・アンダーソン、アダム・ソムナー 製作総指揮/ジョアン・セラー、ダニエル・ルピ、スーザン・マクナマラ、アーロン・L・ギルバート、ジェイソン・クロス 撮影/マイケル・バウマン、ポール・トーマス・アンダーソン 美術/フローレンシア・マーティン 衣装/マーク・ブリッジス 編集/アンディ・ユルゲンセン 音楽/ジョニー・グリーンウッド
出演/アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン、ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディ、エスティ・ハイム、ダニエル・ハイム、ドナ・ハイム、モチ・ハイム

概要とあらすじ
「マグノリア」でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したほか、カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭の全てで監督賞を受賞しているポール・トーマス・アンダーソン監督が、自身の出世作「ブギーナイツ」と同じ1970年代のアメリカ、サンフェルナンド・バレーを舞台に描いた青春物語。主人公となるアラナとゲイリーの恋模様を描く。サンフェルナンド・バレー出身の3人姉妹バンド「HAIM(ハイム)」のアラナ・ハイムがアラナ役を務め、長編映画に初主演。また、アンダーソン監督がデビュー作の「ハードエイト」から「ブギーナイツ」「マグノリア」「パンチドランク・ラブ」など多くの作品でタッグを組んだ故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマンが、ゲイリー役を務めて映画初出演で初主演を飾っている。主演の2人のほか、ショーン・ペン、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディらが出演。音楽は「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」以降のポール・トーマス・アンダーソン作品すべてを手がけている、「レディオヘッド」のジョニー・グリーンウッドが担当。2022年・第94回アカデミー賞で作品、監督、脚本の3部門にノミネート。(映画.comより



キス我慢選手権かよ!

映画ファンを自認している人なら、とりもなおさず観賞予定に入れるであろうポール・トーマス・アンダーソン=PTA監督の新作『リコリス・ピザ』。公開前から絶賛の声が聞こえてまいりました。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007)』や『ザ・マスター(2012)』、前作の『ファントム・スレッド(2017)』の印象が強いせいか、最近は重厚な大作を撮る監督のように思われがちですが、『インヒアレント・ヴァイス(2014)』は探偵コメディだったし、『ファントム・スレッド』も見方によってはコメディでした。つまりそれは、作風の振り幅が広いというよりも、基本的にエンターテイメントな映画を撮る人なんだということです。

で、本作はどうかというと……1970年代のハリウッドにほど近いサンフェルナンド・バレーを舞台に繰り広げられる、なんとも爽やかで楽しいラブストーリー! 登場人物たちは実在の俳優やプロデューサーがモデルになっていることからタランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)』と比較されがちのようですが、サンフェルナンド・バレーはPTAの出身地で映画関係者が周囲にいるのはわりと日常だったり、主演を務めるバンドHAIMの母親がPTAの元教師で(両親と兄弟も家族として本作に出演)、その縁からPTAがHAIMのPVを撮ったりもしているそうなので、かつてのハリウッドの舞台裏を描いた『ワンハリ』とは趣が違う、とてもパーソナルな物語なのです。

そしてなにより、主演のゲイリー・バレンタインを演じるクーパー・ホフマンが、急逝したフィリップ・シーモア・ホフマンの息子だということ。いわずもがなフィリップ・シーモア・ホフマンはPTA作品に欠かせない存在でした。これが初主演となるクーパーを起用したのも、PTAのパーソナルな想いを感じずにはいられません。

また、『初体験/リッジモント・ハイ(1982)』や『アメリカン・グラフィティ(1973)』との類似も指摘され、当然PTAも意識しているとは思いますが、あまり元ネタ的なことを考える必要はなく、オリジナルな魅力に溢れている作品だと思います。ちなみにタイトルの「リコリス・ピザ」は本作に一切登場しませんが、70年代当時に実在したレコード店のことで(リコリスはグルグル巻きになったまずいお菓子で、ピザの箱がレコードジャケットみたいで……みたいなややこしいもじりの積み重ねに由来)、当時の雰囲気を象徴するもの、みたいな捉え方でいいと思います。

15歳のゲイリー・バレンタイン(クーパー・ホフマン)が、たまたま見かけた年上の女性アラナ(アラナ・ハイム)に一目惚れ。積極的にアタックを重ね、いつしかふたりは……という青春恋愛映画と聞けば、思春期真っ盛りのガキが年上の女性に大人の男として認めてもらえず、悶々としながらも成長していく物語を予想しがちですが、本作のふたりの関係はちょっと違います。すでに子役としてのキャリアがあるゲイリーは、映画関係者の大人との付き合いも多く、ウォーターベッド屋やピンボール店を開くなど、意欲的な実業家でもあるので、観客が自分のイケてなかった青春時代と重ねるタイプのキャラクターではありません。

むしろクールに装っているアラナのほうがふわふわしていて、ゲイリーの付き添いをするうちに女優のオーディションを受けたり、かと思えば選挙事務所で働いてみたりと、自分探しの真っ最中という感じなんですが、なにをやってもそこそここなせてしまうので、さほど行き詰まっている感じがありません。

最初こそゲイリーを子供扱いしていたアラナでしたが、すぐに行動を共にするように。明らかにふたりは惹かれ合っているのですが、アラナがほかの男と付き合ってみたり、ウブそうなゲイリーもじつは裏で女性のお世話になっていたり、ほかの女の子とデートしたりします。つかず離れずを繰返し、なぜか全然くっつかないふたり。

小さなエピソードを重ねるような構成になっている本作には、突然の逮捕シーンや面接シーン、ショーン・ペンのバイクシーンなど、ところどころにサスペンスが仕込まれていて、これがとても面白いアクセント。なかでもガス欠になったトラックがバックで坂を下りるシーンは最高でした。なんと、あのトラックを運転しているのは、ほとんどがアラナ・ハイム本人なんだそう。狂いっぷりが素晴らしかったブラッドリー・クーパーに歳を聞かれたアラナが「28歳……25歳よ」と答えたのはなんだろう? と思っていましたが、運転で目一杯のアラナ・ハイムが慌てて実年齢を言ってしまったんだとか。

また、アラナが働く選挙事務所に現れた「12番のTシャツの男」が『タクシードライバー』のトラヴィスを彷彿とさせ、なにか悪いことが起こると予想させるものの、とくになにもない。サスペンスでヒヤヒヤさせるんだけど物語に影響することなく、物語全体がなにかのクライマックスに向かって進んでいるわけでもない、それでいて面白いというのはすごいなあ、と。

接近したと思ったら離れ、離れたとおもったら嫉妬するを繰り返すふたりは、なかなかキスをしません。いまそのタイミングだろ! というときでもキスしない。思いの外キスが重要なボーダーラインになっているふたり。そんなふたりが互いを捜し求めて駆け寄り、ついにキスをするラストシーンを観て「キス我慢選手権かよ!」と思いました。
















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コメント

<「28歳……25歳よ」と答えたのはなんだろう? 
<と思っていましたが、運転で目一杯のアラナ・ハイムが
<慌てて実年齢を言ってしまったんだとか

だったんですか!(笑)

てっきり二人が出会ってから3年立っていたことを示唆
していたんじゃないかと思ってましたー

2022/07/24 (日) 09:11:46 | URL | onscreen #mQop/nM. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

>onscreenさん
コメントありがとうございます。
たしか記事に貼り付けた解説動画(たぶんBlackhole)のなかで言ってました。
NGテイクを使っちゃうのも、面白いですよね。

2022/07/24 (日) 16:10:53 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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