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Swallow スワロウ

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(原題:Swallow 2019年/アメリカ・フランス合作 95分)
監督・脚本/カーロ・ミラベラ=デイビス 製作/モリー・アッシャー、ミネット・ルーイー 製作総指揮/ジョー・ライト、ヘイリー・ベネット、サム・ビスビー、コンスタンティン・ブリースト、ピエール・マザルス、エリック・タビティアン 撮影/ケイトリン・アリスメンディ 美術/エリン・マッギル 衣装/リエーネ・ドブラヤ 編集/ジョー・マーフィ 音楽/ネイサン・ハルパーン
出演/ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザベス・マーベル、デビッド・ラッシュ、デニス・オヘア

概要とあらすじ
「ガール・オン・ザ・トレイン」「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」のヘイリー・ベネットが異物を飲み込むことで自分を取り戻していく主婦を演じるスリラー。ニューヨーク郊外の邸宅で、誰もがうらやむような暮らしを手に入れたハンター。しかし、まともに話を聞いてくれない夫や、彼女を蔑ろにする義父母の存在など、彼女を取り巻く日常は孤独で息苦しいものだった。そんな中、ハンターの妊娠が発覚し、夫と義父母は待望の第一子に歓喜の声をあげるが、ハンターの孤独はこれまで以上に深くなっていった。ある日、ふとしたことからガラス玉を飲み込みたいという衝動にかられたハンターは、ガラス玉を口に入れて飲み込んでしまう。そこでハンターが痛みとともに感じたのは、得も言われぬ充足感と快楽だった。異物を飲み込むことに多幸感を抱くようになったハンターは、さらなる危険なものを飲み込みたい欲望にかられていく。(映画.comより



自分を獲得するための「落ちゲー」

異食症を題材にしたちょっとめずらしいスリラー『Swallow スワロウ』

大金持ちの息子リッチー(オースティン・ストウェル)と結婚したハンター(ヘイリー・ベネット)は、豪華な邸宅で新生活を始めました。リッチーは常務取締役にも任命され順風満帆。かたやハンターは専業主婦として家に閉じこめられ、せいぜいガーデニングやカーテンの模様替えをするばかりの生活。かろうじて楽しみといえばスマホの落ちゲー。いかにもな暇つぶしですが、何度か繰り返される排泄のイメージとも重なります。

両親を含めたリッチーの家族があまりにもステレオタイプな金持ちクソ野郎なのが気にはなりましたがそれはともかく、あきらかな疎外感を感じているハンターは、ふと惹かれたインテリア小物のビー玉を飲み込んでしまうのでした。

精神疾患が原因のひとつとされる異食症は、栄養価の無いものを無性に食べたくなる症候で、ハンターが飲み込んでしまうさまざまなものはこの症候をなぞっています。子供や妊婦に多いとのことなので、直後にハンターの妊娠が発覚するのはそのためかもしれません。

ハンターの異食症はエスカレートしていくのですが、そのつど彼女はなんらかの達成感もしくは解放感を感じているようにみえます。異食の原因は精神疾患かもしれないけれど、ハンターにとって異食はタブーを犯す快感にも通じているのではないでしょうか。自分も子供の頃に小石を飲み込んだ記憶がありますが、やってはいけないとわかっていることをあえてやり遂げた背徳的な達成感があったように思います。

その後、妊娠のエコー検診で異食症が発覚してしまったハンターは、リッチーの逆鱗に触れてさらに厳しい管理下に置かれてしまいます。リッチー家族のクソっぷりは健在で、友人たちにハンターの異食症を吹聴している始末。さらにはハンターが信頼できると思っていたカウンセラーもリッチーと内通していて、彼女がずっとひた隠しにしていた秘密を意図も容易くリッチーに報告してしまいます。

ハンターはレイプされた母親が産んだ子供でした。ハンターの母親はキリスト教原理主義者で、たとえレイプであっても中絶は許されないという考えなのです。そのおかげでハンターが生まれたともいえるのですが、彼女の人生はずっと疎外感とともにあったのでした。

ハンターの見張り役として雇われたシリア難民の男は、当初「戦争中なら心を病んでいる暇はない」とハンターの病状を甘く見ているような発言をしますが、徐々に彼女が抱えている苦しみを理解するようになり、精神病院へと隔離されそうになるハンターを逃がす手助けをします。ついにリッチー家族から逃走したハンターが目指したのは、母をレイプした男=自分の本当の父親でした。

すでに刑を全うし、家族との幸せな人生を過ごしている実父に対してハンターがなにかを要求するわけではありません。彼女はただ自分が存在する根拠を確かめたかったのではないでしょうか。「わたしはあなたと同じ?」と問うハンターに実父は「違う。君は何もしていない」と返すのでした。

病院で手に入れた中絶のための薬を呑んだハンター。暇つぶしのための落ちゲーは排泄だけでなく中絶をも暗喩していたのではないでしょうか。これまでの彼女は、自分の鬱屈を押し殺して周囲に適応することばかりでしたが、ついに自分の人生を手に入れたのでした。まさにいま、アメリカでは中絶を禁止する法案は合憲であると最高裁が認めてしまいました。

ハンターの特異な生い立ちに物語が及んだことで、女性が被っている普遍的な理不尽さから遠ざかってしまったような印象が若干ありますが、ハンター役のヘイリー・ベネットの無垢さが際だった作品でした。







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