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ニューオーダー

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(原題:Nuevo Orden 2020年/メキシコ・フランス合作 86分)
監督・脚本/ミシェル・フランコ 製作/ミシェル・フランコ、クリスティーナ・ベラスコ、エレンディラ・ヌニェス・ラリオス 製作総指揮/ロレンツォ・ビガス、ディエゴ・ボニータ、セシリア・フランコ、シャルル・バルト 撮影/イブ・カペ 編集/オスカル・フィゲロア、ミシェル・フランコ
出演/ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド、ディエゴ・ボニータ、モニカ・デル・カルメン、フェルナンド・クアウトレ、エリヒオ・メレンデス

概要とあらすじ
「母という名の女」「或る終焉」などで知られるメキシコの俊英ミシェル・フランコ監督が、広がり続ける経済格差が引き起こす社会秩序の崩壊を描き、2020年・第77回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞したディストピアスリラー。裕福な娘マリアンは夢にまで見た結婚パーティの日を迎え、幸せの絶頂にいた。彼女が暮らす豪邸には、結婚を祝うため政財界の名士たちが集まってくる。そんな中、近所の通りで行われていた貧富の差に対する抗議運動が暴動化し、マリアンの家も暴徒たちに襲撃されてしまう。殺戮と略奪が繰り広げられ、パーティは一転して地獄絵図と化す。マリアンは運良く難を逃れたものの、次に彼女を待ち受けていたのは軍部による武力鎮圧と戒厳令だった。(映画.comより



現在進行中の「地獄」

人間の嫌な部分に焦点を当て続けるミシェル・フランコ監督の『ニューオーダー』は、彼のフィルモグラフィーの中でも最も暴力的かつ攻撃的な作品です。

オープニングで意味深なフラッシュフォワードを重ねたあと、なにやら慌ただしい病院へ。デモによる負傷者が大量に出たということですでに入院中の患者たちが移動を余儀なくされます。そして舞台は結婚式へ。いかにも裕福そうな白い豪邸に集まった人々。ここからしばらく群衆の中を行ったり来たりするシーンが続くのですが、そのカメラワークが素晴らしい。真紅のスーツを着た新婦のマリアン(ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド)はいたって幸せそうですが、検事の遅れを心配したり、どうやらこの結婚式自体がマリアンの父が経営する会社の商談にも利用されているようで、かすかに不穏な空気を漂わせています。水道の蛇口からは緑色の水が流れてきます。緑色はデモ隊の象徴。

そんな祝いの場にかつてマリアンの家で使用人をしていた男がやってきます。冒頭のデモによって妻が負傷したため、高額な手術費用を工面してもらいにきたのです。しかし彼とその妻がマリアン家で働いていたのは8年前。マリオンやその母が当惑する気持ちもわからないではありません。それでも義理を感じているのか、わずかばかりの金を渡して取り繕おうとしますが、手術費用には到底足りず、男は諦めて帰ってしまいます。心配になったマリアンは、使用人のクリスティアン(フェルナンド・クアウトレ)とともに男の家に向かいました。

そんなとき、結婚式が行なわれている屋敷の壁を乗り越えてくる人たちが。まるで水道から流れ出る緑色の水のようです。ここで映画が一変します。突然訪れる阿鼻叫喚。使用人たちもグルだったため、一瞬にして立場が逆転し、結婚式に集まった金持ちセレブたちは制圧されます。デモ隊=暴徒たちの目的はただ略奪のみ。命乞いもさせないほど容赦なく、あっさりと殺しを重ねていくのです。

クリスティアンとともに結婚式を抜け出していたマリアンは暴徒による襲撃を逃れましたが、軍隊に足止めをくらい、デモ隊からも攻撃されてやむなく元使用人宅へ避難します。しかし、軍隊に発見され、住まいまで送り届けると言われるのですが、ここからが地獄の始まり。デモ隊を鎮圧しているはずの軍隊も略奪者だったのです。

金持ちばかりを集めた軍隊の収容所では、額にマジックでナンバリングされ、衣服を脱がされ、性的拷問が繰り返されます。そして軍人たちは人質の家族に対して身代金を要求するのです。とはいえ、身代金を受け取ってしまえば人質を殺してしまうので交渉に意味はありません。人質が殺されるシーンを直接見せることはないものの、まったく猶予なく炸裂する乾いた銃声がその理不尽さを際立てます。思いの外、人はあっさり死ぬのです。

反乱軍のなかで報酬に不満を持つものがマリアンを解放するかに思えましたが、身代金要求の「内職」を始めただけでした。彼らはクリスティアンを伝達役にして、マリアンの家族に法外な身代金を要求します。背に腹は代えられない家族はその要求に応じますが、翌日さらに身代金をふっかけてくるのです。自身も身の危険を感じながらマリアンの身を思い、伝達役を担っていたクリスティアンとその母は、あろうことかマリアン誘拐の首謀者だと勘違いされてしまいます。

そこでマリアンの家族はコネがある軍首脳部に手を回してマリアン救出を画策するのですが、現場に駆けつけた軍人はマリアンを射殺。しかもマリアンを撃った銃をクリスティアンに持たせたうえで、クリスティアンも射殺します。この一連の、なんのためらいもない殺戮が恐ろしい。

軍がマリアン殺害をクリスティアンに押し付けたのは、軍の不祥事を隠蔽するためでしょう。ラストではおそらくクリスティアンの母親が絞首刑で処罰されます。

これまでは人間個人の歪な感情を描いてきたミシェル・フランコ監督でしたが、本作はメキシコ国旗の赤(独立)、白(信仰)、緑(民族統一)をキーカラーにしているところから、明らかに国家や政府の歪みが主題だと思われます。暴徒化するデモの描き方には賛否両論があるようですが、少なからず反体制運動が陥りやすい欺瞞を象徴的に描いているのではないでしょうか。

アルフォンソ・キュアロンが『ROMA ローマ(2018)』で 「コーパス・クリスティの虐殺(血の木曜日事件)」を描いたような事実に基づく物語ではないようですが、とはいえ本作をディストピアといってしまうのは抵抗があります。あくまで本作は現在進行中の「地獄」を86分に濃縮させたのだと思いました。







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