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アネット

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(原題:Annette 2020年/フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ合作 140分)
監督/レオス・カラックス 製作/シャルル・ジリベール、ポール=ドミニク・バカラシントゥ、アダム・ドライバー 共同製作/堀越謙三、ファビアン・ガスミア、ジュヌビエーブ・ルマル、ブノワ・ロランド、アルレッテ・シルバーバーグ 原案/スパークス、ロン・メイル、ラッセル・メイル 脚本/ロン・マエル 撮影/カロリーヌ・シャンプティエ 美術/フロリアン・サンソン 衣装/パスカリーヌ・シャバンヌ 編集/ネリー・ケティエ 音楽/スパークス、ロン・メイル、ラッセル・メイル
出演/アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーク、デビン・マクドウェル、
ラッセル・メイル、ロン・メイル、古舘寛治、水原希子、福島リラ

概要とあらすじ
「ポンヌフの恋人」「汚れた血」などの鬼才レオス・カラックスが、「マリッジ・ストーリー」のアダム・ドライバーと「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤールを主演に迎えたロック・オペラ・ミュージカル。ロン&ラッセル・メイル兄弟によるポップバンド「スパークス」がストーリー仕立てのスタジオアルバムとして構築していた物語を原案に、映画全編を歌で語り、全ての歌をライブで収録した。スタンダップコメディアンのヘンリーと一流オペラ歌手のアン、その2人の間に生まれたアネットが繰り広げるダークなおとぎ話を、カラックス監督ならではの映像美で描き出す。ドライバーがプロデュースも手がけた。2021年・第74回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。(映画.comより



私的で詩的な物語

前作『ホーリー・モーターズ』から8年(日本公開でいえば9年)も経っていることに愕然としますが、レオス・カラックス本人はケロッとしてタバコをふかしている……かどうか知らないが、ともかく期待をパンパンに膨らませて観に行った『アネット』。なんと、全編英語のオペラです。

本作の原案は、経歴50年を誇るバンド「スパークス」の兄妹ユニット。スパークスはクラシックを融合させたようなポップなプログレとでもいうべき音楽で、どこか人を食ったような楽曲が魅力です。そんなスパークスのレコーディングから始まります。ミキサーを前にして座っているのはカラックス本人。そこに実の娘ナスチャが歩み寄ると、演奏スタートです。

カラックス本人が登場して映画が始まるというのは、『ホーリー・モーターズ』と同じ。つまり本作もカラックスの私小説的作品というわけです。『ホーリー・モーターズ』でパジャマ姿のカラックスが映画館の観客の前に現れたように、本作では「息すらも止めてご覧ください」というナレーションから始まるメタ構造。演奏が始まり、スパークスが歌い始めたかと思うとすぐさまスタジオを飛び出し、主演のアダム・ドライバーとマリオン・コティヤールが加わって行進を始めるオープニングが異様にかっこいい。このかっこよさこそが、カラックス。

スタンダップ・コメディアンとして人気のヘンリー(アダム・ドライバー)。はっきりいって、まったく笑える要素はないんですが、とにかく観客には歓迎されているもよう。ちなみにエンドロールの「Adam Driver Thanks」というところに、アカデミー賞でウィル・スミスにビンタされたクリス・ロックの名前がありました。なんらかの指南を受けたんでしょうか。

それはともかく、ヘンリーが舞台出来ているガウンやバイクに乗るときのライダーズジャケットはともにグリーンで、本作ではいたるところに基調色としてのグリーンが登場します。これにはなにか意味があるのではと思いたいところですが、カラックスによると、フィルム撮影ではきれいに再現できなかったグリーンが、ドニ・ラバンが銀座で暴れる『TOKYO!(2008年)』で挑んだデジタル撮影で気に入ったから、とのこと。ま、はぐらかしかもしれませんが。

いつしかヘンリーはオペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)と恋に落ち、一緒に暮らし始めます。2人の交際を報じる芸能ニュースが軽薄ですが、ふたりの愛に満ちた生活を捕らえたショットの数々は絵画のような美しさ。森の中を歩きながら「We Love each other so much」とふたりが歌うメロディが耳から離れません。アダム・ドライバーとマリオン・コティヤール本人がノーヘルの二ケツでバイクを走らせるシーン(夜道!)は、もし事故ったらと心配になりますが爽快です(『汚れた血』のセルフオマージュ?)。しかし、「神の類人猿」と称されるヘンリーがバナナを食べ、黄色に包まれたアンがリンゴを食べているようにこれは「楽園追放」の物語であり、ふたりの破滅は約束されているのです。

やがてふたりには「アネット」と名付けられる子供が生まれます。出産シーンで古舘寛治が登場したのには驚きましたがそれはともかく、幸せの絶頂と思われたヘンリーに暗雲が。かつてヘンリーにセクハラされたと訴える女性たち(そのひとりに水原希子)が現れ、ヘンリーの人気も急降下。苛立ちを隠せない彼は、同時に父親になることの重圧も感じていたのではないでしょうか。生まれたばかりのアネットがパペット人形なのは、不完全な人間を象徴しているのかもしれません。

関係修復のためにふたりがヨット旅行にでかけた海は大荒れ。ヘンリーとのもみ合いの末、海に落ちたアンはあっさりと死んでしまいます。ヘンリーは後に残されたアネットとの生活を始めますが、なんとアネットが美しい歌声を持っていることを発見。コメディアンとしての限界を感じていた彼は、友人の指揮者(サイモン・ヘルバーク)を巻き込み、あろうことかアネットを「ベイビー・アネット」として売り出すのでした。「ベイビー・アネット」の人気は瞬く間に広がり、世界各地をツアーするまでに。いわゆる「バズった」状態。しかし、ヘンリーとつきあい始める直前のアンが指揮者と関係を持っていたことが判明し、父親疑惑が浮上。するとヘンリーは指揮者を殺してしまいます。

これが最後と挑んだスーパーボウルのハーフタイムショーに登場したアネットは、スポットライトを浴びるなか一向に歌い出そうとしません。ざわつき始める大観衆。何度かのやり直しの後、ようやくアネットが発した言葉は「パパは人殺し」でした。

刑務所に収容されたヘンリーに面会に来たアネットは、もはやパペット人形ではありませんでした。アネットが「もうあなたは誰も愛せない」とヘンリーに最後通告を浴びせるシーンに胸が痛みます。アネットはアンの生まれ変わり。an + ette =小さいアンなのです。

エンドロールでは、オープニング同様に出演者とスタッフ一同が提灯を掲げて行進。カーテンコールのようでもあり、葬列のようでもあります。いつも新鮮な驚きに満ちているカラックスの私的で詩的な物語。もうちょっと短いスパンで新作を撮ってくれたらうれしいんですけど。







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コメント

オープニングからしてすごいインパクトでした!

思わず前作「ホーリー・モーターズ」での途中の
「息抜き映像」Intermission を見返す始末(笑)

2022/04/15 (金) 09:18:11 | URL | onscreen #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

onscreenさん。コメントありがとうございます。
オープニング、かっこいいですよね!
『ホーリー・モーターズ』のドニ・ラバンがアコーディオンを弾きながら行進するあのシーンも最高です。

2022/04/15 (金) 17:43:23 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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