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TITANE チタン

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(原題:Titane 2021年/108分 フランス・ベルギー合作)
監督・脚本/ジュリア・デュクルノー 製作/ジャン=クリストフ・レイモン 製作補/アマリー・オビセ、フィリップ・ロジー 共同製作/ジャン=イブ・ルバン、カッサンドル・ワルノー 撮影/ルーベン・インペンス 美術/ローリー・コールソン 衣装/アン=ソフィー・グレッドヒル 編集/ジャン=クリストフ・ブージィ 音楽/ジム・ウィリアムズ
出演/ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル、ガランス・マリリエール、ライ・サラメ

概要とあらすじ
「RAW 少女のめざめ」で鮮烈なデビューを飾ったフランスのジュリア・デュクルノー監督の長編第2作。頭にチタンを埋め込まれた主人公がたどる数奇な運命を描き、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた。幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴィンセントと出会う。ヴィンセントは10年前に息子が行方不明となり、現在はひとり孤独に暮らしていた。2人は奇妙な共同生活を始めるが、アレクシアの体には重大な秘密があった。ヴィンセント役に「ティエリー・トグルドーの憂鬱」のバンサン・ランドン。(映画.comより



変態=変体

RAW 少女のめざめ』のジュリア・デュクルノー監督による変態映画『TITANE チタン』。なんと2021年のカンヌ映画祭でパルムドールを授賞したというんですから驚きです。

幼少期、父親が運転する車の事故によって、頭にチタンを埋め込むことになったアクレシア(アガト・ルセル)。幼いアクレシアが車のエンジン音を口真似していたことを考えると、もともと彼女は車に対してなんらかの愛着(執着)を持っていたのかもしれません。退院した彼女は真っ先に車に飛びつき、車の窓ガラスのキスをします。

いつしか成長したアクレシアは、モーターショーを盛り上げるダンサーとなっています。炎を塗装したビンテージのキャデラックのボンネットで、なまめかしく身体をくねらせるアクレシア。このあたり、ワンカットの長回しなのですが、どうにもテンポがおかしい。

人気ダンサーのアクレシアは次から次へとファンにサインを求められますが、後を付けてきた男をかんざしで刺殺。男の唾液を洗い流すためにシャワーを浴びていると、例のキャデラックがなにやらアピールを始め、全裸で後部座席に座ったアクレシアはキャデラックとセックスをして、どうやら妊娠したもよう。

てなかんじで、あらすじを書いておりますが、映画を観ているときはなんのことやら。翌朝、ベッドの中のアクレシアの股間から漏れ出ていたのはウ○チなのかな? と思っていましたが、どうやらあれはオイルですね。彼女はキャデラックの子供を身籠もったのです。

車に対する偏愛といえば、クローネンバーグ監督の『クラッシュ』を思い起こしますが、エロスとタナトスの相関関係という意味では『クラッシュ』のほうがむしろ理解しやすいかもしれません。本作のアクレシアは、序盤で想定されていたほど車や機械(金属)に対する執着を露わにせず、むしろ頭に埋め込まれたチタンという「異物」に対する違和感のほうが大きいのではないか、と思いました。

ジュリア・デュクルノー監督は、ことさら「女性監督」と言われることを嫌っているようですが、『RAW 少女のめざめ』が初潮を機に変容する女性の肉体と精神を題材にしていたように、本作も妊娠〜出産という、明らかに女性ならではの肉体的違和感を題材にしていると思われます。自分の身体の中に物理的に別の人格が存在している状態は、思えば奇異なもので、男性には理解しがたいものです。やがてアクレシアは胎児という「異物」を身籠もることになります。

状況がまずくなると殺してしまうという選択しかできないアクレシアは、モデル仲間のジャスティン(ガランス・マリリエール=『RAW 少女のめざめ』の主人公)を殺し、目撃者となったその友人たちも殺害。実家に戻った彼女はなぜか両親の寝室に鍵をかけて火を放ったあと逃走しますが、すでに似顔絵が公表され指名手配となっておりました。そこでアクレシアは、幼少期に行方不明になった少年アドリアンに成りすますことにするのでした。

ものすごくリスクの高い選択ですが、髪を切り鼻を曲げさらしを巻いて、別人になるということが重要かと。行方不明だった息子が現れたとの一報を受けて駆けつけた父親ヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)はDNA鑑定を拒否し、アクレシアを見た瞬間に自分の息子だと判断するのでした。

おそらくヴァンサンは、最初からこれは自分の息子アドリアンではないとわかっていたのでしょう。それでも彼はアクレシアを自分の息子として迎え入れました。彼にとって現れた「男」が本当に自分の息子なのかどうかは二の次で、たとえ別人だとしても愛すべき対象を取り戻したことのほうが重要なのでしょう。

ここから歪な共同生活が始まります。つねにつきまとう炎がなにを意味するのかわかりませんが、いかにもホモソな消防署に紛れ込んだアクレシア=アドリアンは、日に日に膨らむお腹と胸をテープで押さえつけ、妊娠していること=女性であることに抗い、ひた隠しにします。かたやヴァンサンは衰える肉体に抗ってステロイドを注射し、マチズモを維持しようとしています。方向性は違うけれども、アクレシアとヴァンサンはいずれも肉体的変容に対抗しているのです。

いつしかふたりは共依存ともいうべき関係となり、愛情のようなもので結ばれていきます。金属板らしきものが見え隠れしていたアクレシアのお腹はついに破れ、生まれ落ちた赤ちゃんの背骨は車のパーツのようです。赤ちゃんをとりあげたヴァンサンは「俺がついている」とつぶやくのでした。

この監督の「痛さ表現」に対する執着はなかなかですが、前作同様最も嫌だったのがお腹を掻きむしるシーンでした。昨今ジェンダーギャップを問う映画は数あれど、肉体変容をクローネンバーグ的かつ塚本晋也的飛躍で表現するジュリア・デュクルノー監督の感覚は希有なものであり、こんな奇天烈な変態映画をパルムドールにしてしまうカンヌ映画祭の審査員の審美眼もなかなかのものだなあと思いました。変態=変体か。







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