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プロミシング・ヤング・ウーマン

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(原題:Promising Young Woman 2020年/アメリカ 113分)
監督/エメラルド・フェネル 製作/マーゴット・ロビー、ジョージー・マクナマラ、トム・アッカーリー、ベン・ブラウニング、アシュリー・フォックス、エメラルド・フェネル 製作総指揮/キャリー・マリガン、グレン・バスナー、アリソン・コーエン、ミラン・ポペルカ 脚本/エメラルド・フェネル 撮影/ベンジャミン・クラカン 美術/マイケル・T・ペリー 衣装/ナンシー・スタイナー 編集/フレデリック・トラバル 音楽/アンソニー・ウィリス
出演/キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー、クランシー・ブラウン、ジェニファー・クーリッジ、ラバーン・コックス、コニー・ブリットン

概要とあらすじ
Netflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子の妻カミラ夫人役を演じ、テレビシリーズ「キリング・イヴ Killing Eve」では製作総指揮や脚本を担当するなど、俳優・クリエイターとして幅広く活躍するエメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本でメガホンをとった長編映画監督デビュー作。ごく平凡な生活を送っているかに見える女性キャシー。実はとてつもなく切れ者でクレバーな彼女には、周囲の知らないもうひとつの顔があり、夜ごと外出する謎めいた行動の裏には、ある目的があった。明るい未来を約束された若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だと誰もが信じていた主人公キャシーが、ある不可解な事件によって約束された未来をふいに奪われたことから、復讐を企てる姿を描く。主人公キャシーを「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガンが演じ、「スキャンダル」「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」や「スーサイド・スクワッド」で知られる女優マーゴット・ロビーが製作を務めている。2021年・第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。(映画.comより



お前のこと、映画になってるぞ〜!

「これは予想を鮮やかに裏切る、復讐エンターテイメント!」という威勢のいい惹句がついた『プロミシング・ヤング・ウーマン』。「プロミシング・ヤング・ウーマン(将来有望な女性)」とは、暴行などの被害に遭った若い女性に対して使われる表現だとか。監督はこれが初作品となる女優のエメラルド・フェネル。

クラブで泥酔しているキャシー(キャリー・マリガン)を鼻の下を伸ばしながら見ていた男たち。そのうちの1人ジェリー(アダム・ブロディ)がキャシーに声をかけ、「お持ち帰り」することに。部屋につくとさっそくコトを始めようとします。意識が朦朧としているキャシーが「なにやってんの?」と聞いても「いいからいいから」と服を脱がそうとするジェリー。すると突然、泥酔していたはずのキャシーがすっくと体を起こし、「なにやってんだ? って聞いてんだよ」と凄むのでした。

キャシーは飲み屋に出かけては泥酔したフリをし、女性が酔っ払っているのをいいことに「お持ち帰り」する男どもを罠にかけていたのでした。じつは有能な医学生だったキャシーには、同じく優秀な医大生のニーナという親友がいましたが、泥酔した(させられた?)ニーナは男子学生らによってレイプされ、その後自殺してしまったのでした。心痛めたキャシーは大学を中退し、コーヒーショップに勤めながら、世の男たちに復讐していたのでした。キャシーを演じているのが、いかにも男好きしそうなかわいらしいキャリー・マリガンというのがいいですね。これがシャーリーズ・セロンみたいな女性だったら、最初から男が怖じ気づいちゃうでしょうから。

泥酔している女性を見ると「ヤレそう」だと考えてしまう愚かで傲慢な男たち。場合によっては「デートレイプドラッグ」を使用して、昏睡した女性を暴行することも。性的暴行の被害者は声を上げづらく、また被害を訴えたところで「自分もその気があったんだろ?」「あんなに酔っ払ってたら仕方がない」「そんなセクシーな服装じゃ誘惑しているようなもの」などと、むしろ被害者に落ち度があるかのように言われてセカンドレイプされる始末。そんな反吐が出るような男性優位社会に反撃しているのが本作です。ぜひ、元TBS記者のレイピストにも観てもらいたい。おーい、お前のこと、映画になってるぞ〜!(ちなみにイギリスのテレビ番組『Tracey Ullman's Show』での、女性の被害者が落ち度を問われる状況を皮肉ったコントが秀逸です。「「あなたにも責任の一端はある」性犯罪被害者への馬鹿げた批判を皮肉ったコントに考えさせられる(FINDERS)」

では、キャシーはミサンドリー(男性嫌悪)なのかというと、そうではありません。彼女の憤りは男性だけでなく、事態を傍観または事態に荷担している女性にも向けられています(元TBS記者のレイピストを擁護する連中のなかにも複数の女がいるよね〜)。かつての同級生マディソン(アリソン・ブリー)を酔わせて、彼女の部屋に男を忍び込ませ、ニーナの訴えをもみ消したウォーカー学長(コニー・ブリットン)の娘を誘い出して性的暴行に遭うかもしれないと脅します。

そんなキャシーも恋をします。やはり同級生でいまは小児科医のライアン(ボー・バーナム)の優しさに振れ、ふたりは付き合うように。しかし、マディソンから渡された事件当時の動画には、姿こそ映っていないけれどライアンの声が収録されていたのです。ライアンはニーナが暴行される現場に参加していたにもかかわらず、助けようともせずにただ傍観していたのでした。

本丸は、ニーナを暴行した主犯のアル・モンロー(クリス・ローウェル)。医者として成功し、結婚を間近に控えているアルに罰を与えないわけにはいきません。看護婦の衣裳に身を包んで娼婦になりすましたキャシーは、アルの独身最後のパーティに乗り込みます。ソフトSMプレイを装ってアルをベッドに拘束したキャシーが、アルの体に「ニーナ」というタトゥーを彫ろうとすると、手錠が外れてアルが反撃。なんとなんと、キャシーはアルに殺されてしまうのです。

アルとその友人は、さっそく証拠隠滅。キャシーの遺体を焼き捨てるという非道ぶりです。しかし、キャシーはニーナの件を懺悔していた弁護士に事件の動画を送り、警察に通報するようあらかじめ依頼していました。アルの結婚式にはパトカーが集結し、アルは逮捕されるのでした。ライアンのスマホには送信予約されていたキャシーからのメッセージが。そこには「Love, Cassie & Nina ;) 」とありました。

奇しくもわが国では「安全・安心な」オリンピックが強行開催されている真っ最中。次から次へと湧き出す不祥事の金メダルを競い合っておりますが、開会式の演出に関わる人々の辞任・解任劇では、彼らの過去の言動が問題視されました。本作のアルたちと同様に「忘れたい過去を蒸し返された」わけです。しかし、被害者は決して忘れません。加害者は何度でも「蒸し返される」しかないのです。もしも許しを請うのなら、本作の弁護士のように日々自責の念に苛まれ、過去と向き合い続けるほかないと思います。

弁護士と同様に、キャシーもニーナを助けられなかったという自責の念によって過去に囚われています。時間が止まってしまったかのようなキャシーの(普段の)ファッションはどこか幼い。キャシーをよく知る彼女の両親やニーナの母親は「前進しろ」といいますが、キャシーにとって「忘れること」はニーナへの裏切り行為でしかありません。分かちがたい友情で結ばれたふたりは一心同体であり、ニーナと名乗るキャシーが「自殺」へと至るのは必然なのかもしれません。

テな具合に、本作の主張にはまったくもって同意なんですけど、正直にいうとイマイチぐっときませんでした。

泥酔した女性をターゲットにする愚かな男たちにわざと「お持ち帰り」されるキャシーの目的はなんだったんでしょうか。コカインを吸っていた男(クリストファー・ミンツ=プラッセ)のときのように、じつはしらふだったことにビックリさせて説教して帰る……ということを繰り返していたのでしょうか。それって復讐になるの? それとも復讐じゃなくて啓蒙活動? ホットドッグのケチャップを血に見立てて、してやったりの表情で朝帰りしてましたけど、徹夜で説教してたんでしょうか。なにがどうなって男たちがやり込められたことになっているのか、いまいちわからない。実際、最初のジェリーは「この前の女、サイコ女だったよ〜」と友人たちに吹聴していて反省なんて1mmもしていないし……。『ノック・ノック(2015)』『ハード・キャンディ(2005)』みたいなのを想像していたんですけど。

キャシーは、イギリスに留学していると思っていた主犯のアルが近々結婚するという話をライアンから聞いたことで、直接行動をとるようになるのですが、それまで当事者たちへの報復をまったく考えていなかったとしたら、それはそれで不思議。「Ⅰ Ⅱ Ⅲ」とターゲットをカウントする数字が出てきますが、キャシーが周到に準備した計画を遂行しているとはとても思えません。マディソンに酒を飲ませるシーンでは、自分が酔わないようにジンジャーエールにすり替えるのはいいとしても、マディソンが泥酔するまで酒を飲むかどうかはマディソン次第だし。学長には動揺させたけど結果的になにを要求しているのかわからないし。

道路に停車して車線をふさいでいたシーンでは、近寄って罵ってきた男の車をバールで破壊しますが、男が女性を馬鹿にするような言葉を使わず、ただ路上に停車していることを咎めていたら、どうするつもりだったんでしょう。わざわざ酔った振りをしてまで捕まえた男たちには説教で済ませているのに、通りがかりの男には突然暴力的になるのはどうしたことやら。というか、キャシーには男たちに反撃されることは一切頭にないんでしょうか。まあ、このシーンそのものがとってつけたような感がありますが(そういえば、ライアンと再会したときに彼が注文したコーヒーに唾を垂らすのも、ただ酷いと思うだけでよくわからない。それを飲むライアンもどうかしてる)。

キャシーが死んでしまう展開はなかなか驚きましたが、彼女が自分の死後も段取り済みだったとしても、やっぱり計画的だとは思えません。キツく絞めたはずの左手の手錠が外れたのは計画通りだったのかもしれませんが、反撃されるけど殺されはしなかった場合、どうするつもりだったんでしょうか。事ほどさように、ちょいちょいご都合主義的な展開に頼っていたのは残念なところ(でも、アカデミー賞で脚本賞をもらってんだよな)。

逮捕されてもまったく反省しないやつらもいますから、やっぱりキャシーには死んでほしくなかったですね。(「東大生集団わいせつ事件の犯人たち、執行猶予のその後(WEZZY)」







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コメント

うーん、これはちょっと

自分の感想も「本作の主張にはまったくもって同意なんですけど、正直にいうとイマイチぐっときませんでした」に尽きるものでした。観てもらいたいやつが山程いることは確かですが。
冒頭おっさんたちがいかにも醜く尻を振るダンスからして、これはちょっと図式的過ぎないかと不安がよぎったのですが。
しらふの姿を見せられたら逆切れして乱暴してくるやつとかいないの?とか、ライアン実はそれほど善人ではないだろうというのが何となく最初から見えたりとか、ラスト「グラン・トリノ」に比べると垢抜けないなあとか。正直、全体を通してひねりがなく、先が読め過ぎるのが(脚本のせいなのか、演出のせいなのか)、うーん、これはちょっと、という感じでした。
さて実はこちらをお知らせしたかったのですが、来週ラジオの映画評でも取り上げるらしい「少年の君」、驚くべき傑作でした。何の予備知識もなく、ノーマークで観たのですが、すっかりやられました。こちらは最初の5分でこれはただごとではないという予感に襲われ、以後は徹頭徹尾、無駄なショット、無駄なセリフが1つもないという稀有な作品でした。見ればすぐ分かる通り、ある種の国策映画というか、キャンペーン映画なのですが、それがこういう逸品になってしまうが映画の恐ろしいところでしょうか。国策映画が大傑作に化けるという意味では、昔衝撃を受けたチェン・カイコーの「大閲兵」を思い出したりもしました。
機会がありましたら是非劇場でどうぞ。

2021/08/07 (土) 01:07:40 | URL | ゆめゆき #- [ 編集 ]

Re: うーん、これはちょっと

コメントありがとうございます。
『少年の君』、ホットロードのやつですね。今月は映画館に行くかどうか迷っていますが。。

2021/08/07 (土) 20:30:51 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

この映画も最近見ました。

「傑作だなあ」と思っていましたが、この評を読んで「全然ダメじゃん、この映画。隙だらけだよ。作った女も隙だらけのお調子者なんだろうなあ。つーか、女って全員隙だらけのお調子者なんだよ。だからヤラれちゃうんだよ」と思いました。
ありがとうございます。

2022/07/09 (土) 16:51:46 | URL | #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

>朕さん
一般的には傑作だと評されているのが、ボクにはまったく納得できませんでした。
理解していただけてうれしいです。

2022/07/09 (土) 19:51:12 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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