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東京クルド

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(2021年/日本 103分)
監督/日向史有 プロデューサー/牧哲雄、植山英美、本木敦子 撮影/松村敏行、金沢裕司、鈴木克彦 編集/秦岳志 カラーグレーディング/織山臨太郎 サウンドデザイン/増子彰 MA/富永憲一

概要とあらすじ
日本で生きる2人のクルド人青年を5年以上にわたって取材し、日本におけるクルド難民の実情を切り取ったドキュメンタリー。故郷での迫害を逃れ、小学生の頃に日本へやってきたトルコ国籍のクルド人のオザンとラマザン。難民申請を続け、入管の収容を一旦解除される仮放免許可書を持つが、身分は不法滞在者だ。いつ収容されるかわからない不安を常に感じながらも、2人は夢を抱き、将来を思い描く。しかし、現実は住民票もなく、自由に移動することも働くこともできない。そんなある時、東京入管で長期収容されていたラマザンの叔父メメットが極度の体調不良に陥る。しかし、入管は家族らが呼んだ救急車を2度にわたり拒否。メメットが病院に搬送されたのは30時間後のことだった。2人のクルド青年の日常から、救いを求め懸命に生きようとする難民、移民に対する国や人々の在り方を問う。監督はドキュメンタリーディレクターの日向史有。(映画.comより



日本人の人権意識

いまだ終息の見通しが立たないどころか、感染拡大に見舞われるコロナ禍によって、行き当たりばったりな何度目かの緊急事態宣言が発令されるなか、強行開催されようとしている東京オリンピック2020(これを書いているのは2021年7月17日)。ことあるごとに耳を疑うような暴言を繰り返すバッハIOC会長を歓待し、続々と来日するオリンピック関係者や選手たちは銀座や六本木に繰り出しているようです(「オリンピックファミリーをよく乗せるタクシー運転手「勝手にやってろ、ですよ」(NEWSポストセブン)」)。かたや日本に留学予定だった外国人たちは入国できず、いまだにオンラインで授業を受けているという状況。

というような状況で緊急公開された『東京クルド』。「緊急公開」された理由はわかりませんでしたが、オリンピック開催直前というタイミングよりも、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋の入国管理局(入管)で亡くなったことが直接の動機かもしれません。ともかく、本作は日本人の人権意識を強く問いかける作品であることに間違いありません。恥を忍んで告白すると、入管の非人道的なニュースを目にするたびに憤ってはいたものの、そのシステムをちゃんと理解してはいませんでした。本作を鑑賞したあとで、自分なりにいろいろ調べてみたという次第。

登場するのは、撮影当時18歳のオザンと19歳のラマザンというクルド人青年ふたり。かれらは幼少の頃、迫害を逃れるためにトルコを脱出した両親に連れられて日本にやってきたので、日本での生活は長く、日本語もペラペラです。

で、彼らは現在「仮放免中」とのこと。なんだか「仮釈放」みたいでいかにも犯罪者のようですが、日本では原則的に在留資格を持たない外国人は全員入管に収容されることになっていて、事情を鑑みて「仮放免」となった外国人は、許可を受けて施設外で暮らしているというテイなのですね。「仮放免」の許可を継続してもらうためには足繁く入管に通う必要があるのですが、一応「仮放免」を許可された外国人は入管に収容されることなく生活することができるのです。しかし、仕事をしてはいけないというルールが。では、どうやって生活するのかという問いに対する入管職員の答えは「それはあなたたちでなんとかしてよ〜」です。そんな無茶な(「収容ってなんですか?弁護士に聞く収容問題(難民支援協会))。

オザンやラマザンは住民票がなく、もちろん国民健康保険に加入することもできない、非常に宙ぶらりん(「法的な幽霊」)なまま10代を過ごし、自分の将来に不安を抱えています。「お目こぼし」によって仕事をしているけれど、ちゃんとした就職は許されません。トルコで活動家の手伝いをしていたオザンの父親は、いつか祖国に帰りたいと考えているようですが、父親と確執があるオザン本人は微妙なようす。解体の仕事で食いつないでいるものの、一念発起してモデル事務所に所属しようとしても、在留資格がない=働いてはいけないということが壁になります。常に前向きなラマザンは、語学力を活かして通訳になりたいと考えていますが、語学の専門学校からは軒並み入学を断られます。一体、どうしろと??

オザンの父親は溶接の免許とかを取得して仕事をしているからこそ、オザンの家族はなんとか生活していけるのですが、なにも知らなかったボクはこのあたりでちょっと混乱してきます。在留資格のない外国人は原則入管に収容、でも仮放免を許可されれば普通に働いて生活できる……この判断の基準はなに? と思ったのですが、裁判で明瞭な司法判断が下されたうえで収容されたり仮放免されたりするのではなく、なんと入管の裁量次第なのです。収容の期間についても上限はありません。もうまったく意味不明。

諸外国にも入管に相当する部署はありますが、これほど非人道的でデタラメではありません。そもそも日本の入管とは、日本国憲法が施行される前日の1947年5月2日に制定された外国人登録令に基づいた特別高等警察(特高)の名残であって、外国人(とくに在日朝鮮人)を本国に送り返す組織でした。その成り立ちからして排外主義的であり差別的なのです(「日本の入管はなぜ難民・外国人に冷酷なのか? その「歴史的」理由(現代ビジネス)」

とはいえ、戦後75年も経っているわけです。かつての特高の生き残りが現在の入管で勤務しているはずもないでしょう。ところが、働けないと生活していけないと訴えるオザンに対して入管職員は「帰ればいいんだよ?」「他の国行ってよ〜、他の国」と半笑いで応えるのです。ボクが観賞した映画館ではこの瞬間、複数の観客から「えっ?」という声があがりました。まあ、「えっ?」としか言いようがないでしょう。

声の主である入管職員は、戦前戦中を知る高齢者とは思えない、むしろ戦後教育を受けてきたはずの人間と思われます。彼はどういうふうに人権を学んできたのか。それとも入管という組織に入ったがためにこんな卑しい人間になってしまったのか。不思議でなりません。人権など学ばなくとも、他者に対するわずかばかりの想像力があれば、日本の入管制度に疑問を感じて、こんな言葉は吐けないと思うのですが。

2019年3月、東京入管で体調不良を訴えたクルド人のメメットさんが家族に呼ぶ駆けて呼んだ救急車が2度に渡って追い返され、ようやく病院に運ばれたのは30時間後。この事件はニュースで知っていましたが、彼がラマザンの叔父だったとは。その後メメットさんは通院を許可されるのですが、その間手錠に腰縄付きって……。

そしてウィシュマさんが亡くなるという事態に。入管施設での死亡例は2010年以降で14人とのこと。

なぜ最初に東京オリンピックの話を持ち出したかというと、日本政府が2018年に閣議決定した「入管難民法改正案」がオリンピックと無縁ではないからです。不法滞在者に対する処遇をより厳格化するこの法案は、結果的に見送られることとなりましたが、その目的は「オーバーステイなどで国外退去処分を受けた外国人の送還拒否が相次ぎ、入管施設での収容長期化につながっていることの解消」とされているものの、実際は東京オリンピックに向けての外国人治安対策の強化なのです。内容もさることながら、そもそも難民申請している外国人たちを犯罪者扱いもしくは犯罪者予備軍とみているわけです。日本は難民認定率が1%という驚異的な少なさを国際的に非難されているにもかかわらず。

あまりにも日本人の人権意識が低すぎることに愕然としました(いまさらかもしれませんが)。これは技能実習生が被っている奴隷的な扱いと直結しているでしょう。オザンもラマザンもなんども訪れる絶望に耐えながら、なんとか前を向こうとしている姿に胸が痛みます。ラストで車を飛ばすオザンがヤケになりそうで気がかり。

いつか、日本人の人権意識が改善される日は来るんでしょうか。







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