" />
fc2ブログ

ライトハウス

lighthouse.jpg



(原題:The Lighthouse 2019年/アメリカ・ブラジル合作 109分)
監督/ロバート・エガース 製作/ホドリゴ・テイシェイラ、ジェイ・バン・ホイ、ロバート・エガース、ロウレンソ・サンターナ、ユーリー・ヘンリー 脚本/ロバート・エガース、マックス・エガース 撮影/ジェアリン・ブラシュケ 美術/クレイグ・レイスロップ 衣装/リンダ・ミューア 編集/ルイーズ・フォード 音楽/マーク・コーベン
出演/ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー、ワレリヤ・カラマン、ローガン・ホークス

概要とあらすじ
「ウィッチ」のロバート・エガース監督が、「TENET テネット」のロバート・パティンソンと名優ウィレム・デフォーを主演に迎え、実話をベースに手がけたスリラー。外界と遮断された灯台を舞台に、登場人物はほぼ2人の灯台守だけで、彼らが徐々に狂気と幻想に侵されていく様を美しいモノクロームの映像で描いた。1890年代、ニューイングランドの孤島。4週間にわたり灯台と島の管理をおこなうため、2人の灯台守が島にやってきた。ベテランのトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、初日からそりが合わずに衝突を繰り返す。険悪な雰囲気の中、島を襲った嵐により、2人は島に閉じ込められてしまう。(映画.comより



狂っているのは確か。

日が暮れる頃になると、風に乗ったどこかの家庭の夕食の香りがふいに鼻孔を刺激することがあるでしょう。これは肉野菜炒めだなとか、いや酸味もあるから甘酢あんかけか……なんて想像しているとこちらの腹まで減ってくる。そんな感じでTwitterのTLで見かけた『ライトハウス』がなんとなく「美味しそう」だったので、どんな映画なのかな〜んにも知らずに観に行ってまいりました。まあ、近所の夕飯じゃないけれど、タルベーラ監督の『ニーチェの馬』みたいな映画なのかな? などとぼんやり予想しておりました。製作はクセの強い作品を送り出し続けるA24。

4週間の勤務のため、孤島の灯台へとやってきたイーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)トーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)。彼らとすれ違って灯台から去って行くふたりの男がいたので、定期的に交替することになっているんでしょうか。

屁ばっかりこいているウェイクはかつて船乗りだったようですが、脚を悪くしてからは灯台守を務めているベテラン。ウィンズローは新人。というわけで、やたらと高圧的でおしゃべりなウェイクは、過酷な日々の労働をウィンズローに課し、自分は灯台の灯室を管理すると頑として譲りません。苦々しく重いながらもウェイクに従うウィンズロー。

1.19:1というほぼ正方形のアスペクト比は、トーキー映画を模したものらしいが、ウィンズローが感じている鬱屈と相まって閉塞感がハンパない。グザヴィエ・ドラン監督『Mommy/マミー』では1:1のアスペクト比でしたが、後半で主人公があからさまに画角を広げることで閉塞感からの解放感を表現していました。ま、本作の主人公が解放されることはないのですが。

孤島に到着早々、ウィンズローは人魚の夢を見ます。ウェイクによると前任者は人魚に取り憑かれて死んだとのこと。早い段階からウィンズローが狂気に取り憑かれつつあることがわかります。海中を泳いでこちらへ向かってくる人魚の姿がぞっとするほど恐ろしい。

ウィンズローが狂気に拍車をかけるのは、彼が忌々しいカモメを惨殺してから。その途端に風向きが変わり、4週間の勤務開け直前に嵐が到来。食料を載せて来るはずの船は現れず、ウィンズローとウェイクの同居生活は泥沼へまっしぐら。

とはいえ、それまで酒を断っていたウィンズローがウェイクに進められるままに泥酔し、反目し合っていたふたりが心を交わす(?)ようになると、思わず笑ってしまうようなシーンも。徐々にBL的な雰囲気まで漂い始めます。このいかにも臭そうなふたりの男はいったい何をやってるんでしょうか。

本作は山ほどの引用によって成り立っています。映画を観ながら「ああ、これはアレね」と語れるような知識はボクにはないので、詳細はナマニクさんの解説(『ライトハウス』ネタバレレビュー:我々を狂気の淵へ追い込む“秘密”と“知識”)をご参照ください。

ともかく、過酷な環境に置かれた男たちの心理描写が見所の映画(もちろんそれも含まれるが)だと思っていたら、ファンタジックかつホラーな人魚に始まり、ウェイクはタコの化身かと思わせるジャンル映画的展開、じつはイーフレイム・ウィンズローは偽名で、それはかつてウィンズロー=トーマスが木こりの仕事中に殺した男の名前だったというミステリー、唐突なSF感……。観るものを「これはこんな映画だ」と安易に理解させない跳躍と逸脱が繰り返されます。こんな映画、面白くないわけがないではないか。

本作を解釈しようとすれば、ウィンズロー=トーマスのトラウマとルサンチマンおよび孤独が、誰も訪れることはない孤島を現出させ、彼のマチズモと虚栄心がペニスを象徴する灯台という形をとって、彼の頭の中をグルグルと回り続けているのではないか。トーマスに殺された本物のウィンズローは彼を犬だと罵り続けていたわけで、ウィンズロー=トーマスの脳内で増幅された憤りがウェイクというこの上なく不快な人物として再構築されたのではないでしょうか。ウェイク自身がほのめかしているように、この物語自体がウィンズロー=トーマスによる妄想の産物だとしても疑う余地はありません。

しかもふたりの名は共にトーマス。これはウィンズロー=トーマスがもっとも憎んでいるのは自分だということではないでしょうか。孤独の中、過去に犯した罪の意識に苛まれ、それをなんとか正当化するためにウェイクという敵を創造し、酒に溺れ、自慰にふける……。神話や迷信に囚われるのも無理からぬことかと。まあ、狂っているのは確か。

前作『ウィッチ』のときにはさほど驚きはなかったロバート・エガース監督なんですが、こいつぁ、ぶっとんでます。絵画のようにキメキメの画の連続。環境音とも劇判ともとれる常に鳴り続ける不穏な音響。とはいえ息苦しい内容なので、適切なインターバルをとって繰り返し観たい作品です。主演ふたりの怪演に拍手。







にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

霧笛の音がすごい

レビューをありがとうございます。
レイ・ブラッドベリの短編に「霧笛(The Fog Horn)」というのがあります。高校生の時これを読んで以来、霧笛というものはすごく禍々しい音を発するものだという印象を持っていましたが、それを具現化したのがまさにこれというくらいの見事な音響でした。
「異端の鳥」もやはりコダックのダブル-Xとのことですが、撮影がいいとモノクロのフィルムは本当に美しいですね。
それにしても、灯台といい、住居といい、倉庫といい、もう少し人に優しい設計にできないものかと(笑)。
あと、ナマニクさんの解説には僕も随分助けられました。

2021/07/14 (水) 19:08:29 | URL | ゆめゆき #- [ 編集 ]

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

2021/07/14 (水) 19:12:15 | | # [ 編集 ]

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

2021/07/14 (水) 19:27:30 | | # [ 編集 ]

Re: 霧笛の音がすごい

コメントありがとうございます。
ずっと鳴り続けている「なにかしらの」音がとても不気味で最高でしたね。

2021/07/14 (水) 22:04:24 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

アーカイブ

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンター