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逃げた女

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(原題:The Woman Who Ran 2020年/韓国 77分)
監督・脚本・編集・音楽/ホン・サンス
出演/キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ、キム・セビョク、イ・ユンミ、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、ハ・ソングク

概要とあらすじ
韓国のホン・サンス監督と、公私ともにわたるパートナーである「夜の浜辺でひとり」のキム・ミニの7度目のタッグとなったドラマ。2020年・第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、銀熊賞(最優秀監督賞)を受賞した。5年の結婚生活の間、夫と一度も離れたことのなかったガミ。そんな彼女は夫の出張中にソウル郊外の3人の女友だちと再会する。バツイチで面倒見のいい先輩のヨンスン、気楽な独身生活を謳歌する先輩のスヨン、そして偶然再会した旧友のウジン。ガミは行く先々で「愛する人とは何があっても一緒にいるべき」という夫の言葉を執拗に繰り返した。親密な会話の中に隠された女たちの本心、そしてそれをかき乱す男たちの出現を通じ、ガミの中で何かが少しずつ変わり始めていく。キム・ミニがガミ役を演じるほか、ホン・サンス作品常連俳優のソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、「はちどり」 のキム・セビョクらが顔をそろえる。(映画.comより



それでも面白い

第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を授賞したホン・サンス監督の『逃げた女』。安定のホン・サンス節。あまり立て続けにホン・サンス作品を観ると、どれがどの作品のシーンだったかわからなくなるほど毎回似たようなエピソードにもかかわらず、それぞれが魅力的に映るという不思議。ひとつの物語のヴァリエーションを永遠に作り続けているのではないかとさえ感じます。

おもに恋愛におけるすれ違いや行き違いを描いていた初期〜中期には、奇妙な感覚と共にコミカルな作品が多かったのですが、パートナーであるキム・ミニをミューズに据えた近年の作品からは、シリアスさが感じられます。

結婚以来、5年間夫と離れて生活したことがないというガミ(キム・ミニ)は、夫の出張を機に旧知の友人たちの住まいを巡ります。ガミが最初に訪れたヨンスン(ソ・ヨンファ)は離婚歴があり、いまは郊外の一軒家で畑を唯矢視ながら、のんびりと暮らしているようす。肉を焼くのが上手なルームメイトを交えて、なんということはない会話が続きます。深読みすれば、ガミの心の内を窺えるような台詞もありますが、ただヨンスン先輩にお世辞を言っているようでもあり、真意はわかりません。

しかし、引っ越してきたばかりだという隣人が訪ねてきて、ちょっとヒヤヒヤするサスペンスが。ヨンスンとルームメイトが餌を与えていた野良猫を、ネコ嫌いな隣人の妻が厭がるので餌を与えるのをやめてほしいとのことでしたが、ルームメイトは「それは困りましたねぇ」などといいながら、「猫も生きていかなきゃなりませんからねぇ」みたいなことを穏やかな口調で返し、餌を与えるのを辞める気はないので、まったく話が嚙み合いません。

2人目はピラティス講師をしている独身のスヨン(ソン・ソンミ)。酒好きで料理が下手という点においてヨンスン先輩の家との対比がみられます。やはりなんということはない会話のあとに訪れるちょっとしたサスペンス。スヨンが酔った勢いで関係を持った詩人の男が現れ、しつこくスヨンに交際を迫ってきます。ヨンスン先輩のところで防犯カメラのモニタを見ていたガミは、ここでは詩人とモメるスヨンをドアホンのモニタで見ています。

3人目はミニシアターで働いているウシン(キム・セビョク)。ガミが言うには、ふらっと立ち寄っただけでウシンとの再会は偶然とのことですが、このふたりにはウシンの夫である映画監督を巡って、ただならぬ過去があるようです。ウシンがしきりに謝っているのをみると、ガミが付き合っていた映画監督をウシンが奪ったのか……。ここではリンゴを食べるという反復が。

映画を見終わったガミが帰ろうとしたところ、かの映画監督と喫煙所でばったり。微妙に流れる気まずい空気。ぎこちない会話のあと、ミニシアターを立ち去ろうとしたガミでしたがなぜかきびすを返し、再び映画のスクリーンを見つめるのでした。

私が望むのは、どんな意味付けもすることなく、いかに断片を集めてこられるかということcinemacafe)」というホン・サンス監督の言葉を信じれば、本作に明確な物語があるわけではありません。思えば、日常の言動のひとつひとつにいちいち深い意味はありません。しかし、無意味な会話のディティールが積み重なれば、そこにはなにかのシルエットがぼんやりと浮かんでくる……ような気がします。料理とかモニターとかリンゴとかのモチーフを反復して印象づけることで、意味ありげにしようとする作為をまったく感じないわけではありませんが、それはあくまで映画表現としての体裁を保つための作法としてあるのかもしれません。まあ、監督によるただのイタズラとも言えますが。

いかようにも解釈が可能な「断片」から、あくまでボクが感じ取ったことといえば、ガミがなにかしら物足りなさを感じているのは確か……なようにみえます。それは夫婦生活に問題があるというよりも、安定しきっているからこその「これでいいのかしら」という漠たる不安(簡単にいえば退屈さ)を抱えているように思えます。だからこそ、夫の出張中にいままで経験したことがないなにかにチャレンジするのではなく、かつての友人が過ごす現状から人生の分岐点を推し量り、自らを振り返るような小旅行に思いを馳せたのではないでしょうか。この気持ち、わかります。

とにかく、これといった事件が起こるわけでもなく、起承転結があるわけでもない、それでも面白いのは確かです。







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