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RUN ラン

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(原題:Run 2020年/アメリカ 90分)
監督/アニーシュ・チャガンティ 製作/ナタリー・カサビアン、セブ・オハニアン 脚本/アニーシュ・チャガンティ、セブ・オハニアン 撮影/ヒラリー・ファイフ・スペラ 美術/ジャン=アンドレ・カリエール 衣装/ヘザー・ニール 編集/ニック・ジョンソン ウィル・メリック 音楽/トリン・バロウデイル
出演/サラ・ポールソン、キーラ・アレン

概要とあらすじ
パソコン画面上でドラマが展開するという新機軸で注目を集めたサスペンススリラー「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が、母親の娘への歪んだ愛情の暴走を描いたサイコスリラー。郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつきの慢性の病気により、車椅子生活を余儀なくされていた。しかし、前向きで好奇心旺盛な彼女は地元の大学への進学を望み、自立しようとしていた。ある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。そして、クロエの懸命な調査により、ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑色のカプセルが、けっして人間が服用してはならない薬であるということが判明してしまう。クロエ役をオーディションで抜擢された新人女優キーラ・アレン、母ダイアン役をドラマシリーズの「アメリカン・ホラー・ストーリー」のサラ・ポールソンがそれぞれ演じる。(映画.comより



恐ろしき家庭菜園

search サーチ(2018)』アニーシュ・チャガンティ監督の最新作『RUN ラン』でございます。もしも可能なら、設定もあらすじもまったくな〜んにも知らずに観ていただきたい作品。とかいいながら、ネタバレ記事を書くんですけど。

『search サーチ』とは真逆の作品を作りたいと思いました映画.comより)」というチャガンティ監督の言葉通り、父親がネットを駆使して行方不明の娘を探す『search サーチ』と異なり、ネットも電話も遮断された状態かつ母親から娘が逃げ出すお話となっております。

未熟児として生まれ「なんとか一命を取り留めた」赤ちゃんを、母であるダイアン(サラ・ポールソン)が抱き上げる……というシーンから始まります。それから17年後、不整脈、血色素症、喘息、糖尿病、下肢の筋無力症などさまざまな慢性病を抱えた赤ちゃん=クロエ(キーラ・アレン)は成長し、大学進学を目前としております。たくさんの薬を飲むクロエのルーティンが描かれますが、どういう設定か知っていると薬を飲むクロエを見ただけで「あっ……」って思っちゃいます。仕方のないことですけど。

自宅での勉強を積み重ねたクロエはワシントン大学の合格通知が届くのを今か今かと待ちわびる日々。合格したあかつきにはダイアンの元を離れて寮生活をしたいとも考えているようす。子供の自立による親の喪失感を慰め合うセラピー(?)に参加しているダイアンは、退屈そうにスマホをいじり、「もちろん娘の自立を応援しています」などときっぱり応えるのですが、これはダイアンの「自信」の表れか。

ある日、買い物から帰ってきたダイアンの隙を狙って、大好物のチョコボールを買い物袋からくすねようとしたクロエは、ラベルにダイアンの名前が記された薬を発見。いつも自分が飲んでいる薬なのに、ママに処方された薬ってどういうこと? と不審に思ったクロエはダイアンを問いただしますが、煙に巻かれてしまいます。

機械工学(?)を専攻しているクロエが、その緑色の薬を自作のハンドキャッチャーでどうにか棚から取り出してみると、ラベルは自分の名前になっています。やはり勘違いだったのかと思った次の瞬間、ラベルを剥がすとそこにはやはりダイアンの名前が。

疑念を確かにしたクロエは、緑色の薬「トリゴキシン」をネット検索しようと夜中にこっそり部屋を抜け出しパソコンを起ち上げるものの、ネットに繋がっていませんでした。暗闇には光る目が。

なんとか電話で「トリゴキシン」を探ろうとするクロエ。かかりつけの薬屋では身バレする、電話番号案内では別料金がかかってダイアンにバレる、そこで当てずっぽうで電話をかけ、「トリゴキシン」を調べて教えてもらうことに。2階の窓から畑仕事をするダイアンのようすをうかがいつつ電話するクロエ。電話番号案内のとろとろした受け答え、痴話げんか真っ最中の男性など的確にイライラさせてくれます。

それでも電話をかけた見ず知らずの男性は「トリゴキシン」をネットで調べてくれました(ちなみに「トリゴキシン」というのは架空の薬ですが、薬名をもじっているだけで存在しない薬というわけではありません)。慌てて「トリゴキシン」の色を訪ねるクロエ。そこでダイアンが畑で育てている真っ赤なトマトのクローズアップ……。「トリゴキシン」のカプセルは緑色ではなく、赤色だったのです。じゃあ、あの薬はなに? てなるわけですねえ、ひょえ〜。ここで思い当たるのは、ダイアンが家庭菜園で野菜を育てているのはクロエの健康のためともとれますが、クロエ自身がダイアンによる家庭菜園で育てられた作物のようにも思えます。いろんな「肥料」や「農薬」を使った……。

ダイアンを久しぶりの映画に誘ったクロエは、トイレに行くとみせかけて薬局へ直行。ここでもハラハラドキドキが巧みに演出されます。もどかしいやりとりの末、薬局の店員から聞き出したのは、「トリゴキシン」だと思っていた緑色の薬は、じつは獣医が処方する犬用の筋肉弛緩剤だったのです。人間が服用しちゃダメなやつ。ここで真実が明らかになるのですが、後を追ってきたダイアンによってクロエは捕らえられてしまいます。

ダイアンは、クロエには必要がないどころか障害をもたらす薬を長年にわたって投与し続けてきたわけですが、ダイアンの行動から見て取れるのは代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれる精神病。自分の体を傷つけるミュンヒハウゼン症候群に対して、代理ミュンヒハウゼン症候群は他者(おもに自分の子供)を傷つけることで同情を買ったり、満足感や所有欲を満たすというものです。「ディーディー・ブランチャード殺害事件」という実在の事件がモデルで『見せかけの日々』という映画にもなっています。ただ、本作はエンターテイメントとしてむしろ事実よりソフトになっているかも。

とはいえ、シャワーを浴びるダイアンの背中に無数の傷跡があったのも見逃せません。彼女の過去は明かされませんが、彼女もなんらかの虐待を受けて育ったのではないでしょうか(背中だから自傷行為はやりづらいし)。子供を虐待する親は、自身も親から虐待された経験を持つとはよくいわれることです。

もはや後戻りは無理な状況。あとはいかにしてクロエが逃げ出すかというのが見所に。2階の部屋に閉じ込められたクロエが窓を破り、自由が効かない脚を引きずりながら屋根を伝って隣室の窓へと及び、ハンダごてで熱したガラスに口に含んだ水を拭きかけて割るという一連のハラハラドキドキ&なるほど納得演出の見事さ。階段から転げ落ちたクロエの足の親指が動く! というささやかな感動。助けを求めた郵便局員の隙だらけな感じ。存分に楽しみたいところ。

それでもダイアンに捕らえられてしまったクロエは地下室に閉じ込められてしまいます。しかし、そこで謎に包まれたすべての過去が明らかに。そもそもクロエは生まれつき慢性病を患っていたわけではないこと、オープニングでダイアンが産み落とした「クロエ」という名の赤ちゃんは生後2時間で死んでしまっていたこと、そしていまだ未解決の新生児誘拐事件の新聞記事の切りぬきがあったこと。まるでクロエが真相を知るために用意されていたかのように、まるっとまとめて真実が明らかになるのですが、こんなもんを小出しに明かされたら上映時間が無駄に長くなるだけなので、これでいいのです。

怪しく迫るダイアンに対向して、起死回生、クロエが思いついたのは死に至る毒薬を自ら飲むこと。たとえねじ曲がっていてもダイアンがクロエを愛していることには違いありませんから、クロエは自分自身を人質にしたのです。クロエを連れて病院に駆け込まざるを得ないダイアン。

病院で治療を受けているクロエをなんとか取り戻そうと画策するダイアンは、看護師の隙を見てクロエを連れ帰ろうとします。しかし、異変に気づいた警備員たちに追い詰められたダイアンは肩を撃たれて階段を落下。ダイアンが銃を持っていたのがちょっと不満だったけれど、とにかく一件落着。

7年後。どうやら結婚して子供を授かったらしいクロエが警察病院に収容されているダイアンに面会に来ています。脚力が回復したクロエは自力での歩行も可能になりつつあるようす。顔見知りの刑務官と無駄話を交わすほどには繰り返しここに通っているようで、あんな目に遭ったのに、それでもダイアン=ママに対する愛情が残っているのかと思いましたが、ひとしきり近況を報告したあとでクロエが口の中から取り出したのはラップに包まれたあの「緑色の薬」でした。「ママ、お薬の時間よ」でジ・エンド。

こんに鮮やかなラストの切れ味は久々に味わった気がします。ダイアン=サラ・ポールソンの尋常ではない老け方も見事。普段から車椅子生活をしているというクロエ=キーラ・アレンも含め、このふたりの演技が本作に説得力をもたらしたのは間違いありません。チャガンティ監督の実力が窺える王道サスペンスです。

↓ディズニーじゃないんだから、本編に登場するシーンの文字に日本語をはめてしまうのはどうかと思う予告編がこちら。
 あと、字幕の「逃げれないわよ」という、ら抜き言葉にもやれやれ。






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