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母なる証明

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(原題:Mother 2009年/韓国 129分)
監督/ポン・ジュノ 製作/ソウ・ウォシク、パク・テジョン 製作総指揮/ミッキー・リー 原案/ポン・ジュノ 脚本/パク・ウンギョ、ポン・ジュノ 撮影/ホン・クンピョ 美術/リュ・ソンヒ 音楽/イ・ビョンウ
出演/キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン

概要とあらすじ
「殺人の追憶」「グエムル/漢江の怪物」のポン・ジュノ監督が手がけた3年ぶりの長編。国民的人気女優のキム・ヘジャ、5年ぶりの映画出演となるウォンビンが親子を熱演する。貧しいながらも幸せに暮らしていた親子であったが、ある日1人息子が警察に拘束されてしまう。殺人事件の容疑者にされてしまった息子の無実を信じ、孤立無援の母は悲しむ間もなく、たった1人で真相に迫ろうとするのだが……。(映画.comより



恐るべき、やぶ蛇

傑作と名高いポン・ジュノ監督『母なる証明』を久しぶりに観返してみました。いまさらながら調べてみると、本作は第82回米アカデミー賞外国語映画賞部門の韓国代表に選出されたんですね。それから10年後、オスカーを手にすることになろうとは。

草原にひとり佇む母親(キム・ヘジャ)が踊り始めるオープニングは、楽しげでもあり哀しげでもあり、とにかく印象に残るシーンなんですが、このオープニングは終盤で母親が大変な過ちを犯してしまった直後にあたるにもかかわらず、当の終盤のシーンでは動揺した母親は自分の手のひらを見つめるだけで、踊ったりしません。ラストシーンにおけるバスの車内で、結局母親は踊ることになるのですが、これは鍼灸師の彼女が太ももにある「嫌なことを忘れるツボ」に自分で針を刺したためと思われるので、オープニングのダンスは母親が見る夢のように幻想的なシーンとなっております。

「母」という普遍的なテーマだからかどうかわかりませんが、本作の中心となっているのは女性。母親(役名がないのも普遍性のためか)をはじめとして、被害者となるアジョン(チョン・ミソン)とその祖母、近所の写真屋の店員などなど、男性(父親)不在が際立っています。アジョンの葬式に現れた母親に平手打ちを食らわすくわえ煙草の女性は一度しか登場しないのに強いインパクトを残します。

ポン・ジュノ監督作品の中でもミステリーの完成度が非常に高く、たくみに散りばめられた伏線を効果的に回収します。そして、母親の純粋な母性、息子トジュン(ウォンビン)の知的障害者ゆえの無垢なイメージ、頼りにならない警察など、観客の先入観を利用した展開が非常に巧みだと思いました。

知的障害のある息子の冤罪を晴らそうとひとり懸命に奔走する母親。なにしろ警察は当てにならない。母親に観客が肩入れするのは当然のこと。真犯人かと思われたトジュンの友達ジンテ(チン・グ)の無実は判明したが、母親に慰謝料を請求してくるあたり、信用なりません。なにしろジンテ自身が「オレを含めて誰も信用するな」といいます。これは観客に対する警告でしょうか。

いかにも真相に近づいていきそうな展開にワクワクしつつ、いよいよたどり着いた廃品回収者の男が語ったのは、トジュンの犯行の一部始終でした。トジュンには突然キレる「バカ」という言葉のトリガーがあったのです。

新しい事実が発見されるかと思いきや、もともとトジュンの逮捕は冤罪ではなく妥当だったという結果。つまり、トジュンの無罪を証明するために母親のとった行動がむしろ息子の犯行を裏付けてしまうという皮肉です。さらに、事件当時のことを思い出すよう懸命に促した結果、トジュンが思い出したのは、5歳の時に母親から農薬入りの栄養ドリンクを飲まされたことでした。恐るべき、やぶ蛇。

生活に困窮した母親は、トジュンとともに心中しようと考えたわけですが、もともとトジュンに知的障害があったのか、はたまた母親に飲まされた農薬によって知的障害を患ったのかは定かではありません。いずれにしろ、母親が抱えていた後ろめたさが、息子に対する過度な愛情へと繋がっているのでしょう。繰り返し登場する地面を這う水(血を含め)は、じわじわと母親を追い詰める罪悪感のメタファーかもしれません。序盤ではトジュンが立ちションしたあと、母親は小便の痕を隠そうとしていたし、眠っているジンテの指先に迫る水は、目覚めさせてはいけないものがあるという警告かも(という深読み)。

そして、突如登場した真犯人によってトジュンは釈放されます。施設から逃走していたジョンパルという男はアジョンの彼氏を自称していて、彼の衣服から発見されたアジョンの血痕が決定的証拠となったのです。もちろんアジョンの鼻血が伏線となっているわけですが、それよりもジョンパルもまたトジュンと同じ知的障害者であるという衝撃。結果的に母親は知的障害を持つ息子の罪をまた別の知的障害を持つ男に肩代わりさせることになってしまいます。しかもジョンパルには身寄りがなく、なにがなんでも庇ってくれる母親もいません。これもまた巡り巡って母親自身に突きつけられた因果応報なのです。

トドメは、母親が殺した廃品回収者の男が暮らしていた住まいの焼け跡からトジュンが見つけ出した鍼を入れるケースを母親に渡すのです。無論トジュンに母親の殺人を問い詰める意図はありませんが、結果的に自分が働いた悪事の証拠を突きつけられることになってしまいます。

とくにゴアシーンがあるわけじゃないんですけど、一番怖かったのは、母親が押切機(という名前なのを初めて知った。草とかを切る道具)を扱うときによそ見ばっかりしてること。言わん凝っちゃない、指を切っちゃってましたけど、切り株とか首チョンパとかは平気なのに、こういうのはホント怖い。







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