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屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

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(原題:Der Goldene Handschuh 2019年/ドイツ・フランス合作 119分)
監督・脚本/ファティ・アキン 製作/ヌアハン・シェケルチ=ポルスト、ファティ・アキン、ヘルマン・バイゲル 原作/ヘインズ・ストランク 撮影/ライナー・クラウスマン 美術/タモ・クンツ 衣装/カトリーン・アッシェンドルフ 編集/アンドリュー・バード、フランツィスカ・シュミット=ケルナー 音楽/F・M・アインハイト 音楽監修/ピア・ホフマン
出演/ヨナス・ダスラー
、マルガレーテ・ティーゼル
、カーチャ・シュトゥット
、マルク・ホーゼマン
、ハーク・ボーム
、トリスタン・ゲーベル
、グレタ・ゾフィー・シュミット


概要とあらすじ
「ソウル・キッチン」「女は二度決断する」のファティ・アキン監督が、1970年代のドイツ・ハンブルクに実在した5年間で4人の娼婦を殺害した連続殺人犯の日常を淡々と描いたサスペンスホラー。第2次世界大戦前に生まれ、敗戦後のドイツで幼少期を過ごしたフリッツ・ホンカ。彼はハンブルクにある安アパートの屋根裏部屋に暮らし、夜になると寂しい男と女が集まるバー「ゴールデン・グローブ」に足繁く通い、カウンターで酒をあおっていた。フリッツがカウンターに座る女に声をかけても、鼻が曲がり、歯がボロボロな容姿のフリッツを相手にする女はいなかった。フリッツは誰の目から見ても無害そうに見える男だった。そんなフリッツだったが、彼が店で出会った娼婦を次々と家に招き入れ、「ある行為」に及んでいたことに、常連客の誰ひとりも気づいておらず……。2019年・第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品。(映画.comより



殺人鬼のダメな日常

ソウル・キッチン(1990)』『女は二度決断する(2017)』などのファティ・アキン監督が初めて撮ったホラー映画『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』。これはホラー映画なのか? という異論があるかもしれないが、インタビューで監督自身がそう言っているのでこれはホラー映画なのです、たぶん。

1970〜1975年、ハンブルグで4人の娼婦を殺害した実在の殺人鬼フリッツ・ホンカ。幼少期のファティ・アキン監督の記憶によると、フリッツ・ホンカは子供を恐れさせる民話的存在だったとのこと。

冒頭いきなり、汚い室内のベッドに横たわる女性をゴミ袋に詰めようと四苦八苦し、無理だとわかると女性の首と手足をのこぎりで切断するフリッツ・ホンカ(ヨナス・ダスラー)。バラバラにした死体をトランクに詰め込んで捨てに行こうとすると階下の住人に目撃され、ようやく死体を捨て去ると自転車とぶつかりそうになり腰を抜かします。もう最初から哀れなほどグズグズなのですが、その姿は妙なリアリティを感じさせます。捨てられた死体はすぐに発見されたため、ホンカは残った死体の一部を壁の中に隠してごまかすことに。

当時40代のフリッツ・ホンカを演じているのは、なんと23歳(撮影時)のヨナス・ダスラー。カリっとしたなかなかのイケメンですが、特殊メイクによって斜視、大きく曲がった鼻、醜い歯並びを施し、『ノートルダムのせむし男』のような猫背でフリッツ・ホンカの異様な風体を怪演しております。

ホンカが毎夜のように通うバー「ゴールデン・グローブ」には、近所の常連客や年老いた娼婦たちが集ってます。彼らはみな人生にやさぐれているような人々。酒に酔うことで哀れな現実を紛らわすしかないのです(あまり他人事とは思えないが)。年老いた娼婦からも相手にされない醜いホンカは、無一文で店にやってきたゲルダ・フォス(マルガレーテ・ティーゼル
)に声をかけて自宅に誘うとさっそく暴行。はやくも2人目の犠牲者かと思われましたが、そこからふたりの奇妙な同居生活が始まります。

やたらと女性を求めるくせに不能なホンカは、ゲルダの陰部にソーセージを突っ込んだり、それはまあ酷い扱いなのですが、それでもホンカにすがるしかないゲルダは献身的に家事をこなして彼に尽くそうとします。さらにゲルダに娘がいると知ったホンカは、娘を好きにしていいという契約書にサインさせます。すんなりと従うゲルダ。彼女はあまりにもしたたかに生き延びようとしているのです。

ホンカは街で偶然出会ったペトラ(グレタ・ゾフィー・シュミット
)という女子高校生に一目惚れし、心奪われていました。成績が悪いペトラは留年するのですが、教師から「いま勉強しておかないと、なりたい自分になれないわよ」と言われます。彼女もまた「ゴールデン・グローブ」に集う娼婦たちのようになる可能性を秘めているのです。

食事と寝どころを提供するという修道女(?)に誘われてゲルダが姿を消し、狼狽したホンカはどういうわけか突然改心し、断酒を決意。警備員の職に就き、再起を図れるかと思いましたが、ここで出会った掃除婦ヘルガ・デニングセン(カーチャ・シュトゥット
)と親しくなるうちに酒を勧められて断れず、またしても飲んだくれに。そして酔うと暴力的になるホンカはやっぱりヘルガに襲いかかってしまうのでした。

再び「ゴールデン・グローブ」に戻ってきてしまうホンカ。しかしそこに、ボーイフレンドに連れられたペトラが現れるのでした。ていうかこの金持ち転校生のボーイフレンドはなんで「ゴールデン・グローブ」という飲んだくれが集まる店に惹かれ、ペトラを誘ったのでしょうか。どう考えてもろくなことにはならないと思うのですがそれはともかく、タイヤの空気を抜かれた自転車を押しながら夜道を帰宅するペトラの後をひたひたと追うホンカの不気味さたるや。悪いことが起こる予感に満ちていて非常にスリリング。

しかし、ホンカが目にしたのは階下のギリシャ人宅から出荷した炎で燃え上がる自宅の屋根裏でした。「おれは居住者だ。屋根裏に済んでいる」とあっさり言ってしまうホンカ。鎮火したアパートからはすぐに切断された死体が発見され、ホンカはやむなく逮捕されてジ・エンド。

行きつけのバーに行って酔っ払い、女性を連れ帰っては殺すというルーティンを繰り返すホンカ。実在したシリアル・キラーを描いた映画は数あれど、本作ほどグズグズな殺人鬼は珍しいのではないでしょうか。やってることは極悪なんだけれど、とりたてて悪人というわけではなく、計画性もなく、それどころか犯行を隠蔽しようと努力をするでもないホンカの日常に、観終わった後で呆然としてしまいました。

ホラー映画といわれるほど血しぶきが舞うゴアシーンがあるわけではなく、即物的な暴力、見るも無様な格闘、そしていかにも腐臭漂う不潔な室内などが醸し出すリアリティこそ見どころではないでしょうか。ちょっとジョー・スピネルの『マニアック(1980)』を思い起こしました。







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