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わたしは、ダニエル・ブレイク

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(原題:I, Daniel Blake 2016年/イギリス・フランス・ベルギー合作 100分)
監督/ケン・ローチ 製作/レベッカ・オブライエン 製作総指揮/パスカル・コーシュトゥー、グレゴワール・ソルラ、バンサン・マラバル 脚本/ポール・ラバーティ 撮影/ロビー・ライアン 美術/ファーガス・クレッグ、リンダ・ウィルソン 衣装/ジョアンヌ・スレイター 編集/ジョナサン・モリス 音楽/ジョージ・フェントン
出演/デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ、ディラン・マキアナン、ブリアナ・シャン

■概要とあらすじ
2016年・第69回カンヌ国際映画祭で、「麦の穂をゆらす風」に続く2度目の最高賞パルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督作品。イギリスの複雑な制度に振り回され、貧困という現実に直面しながらも助け合って生きる人びとの姿が描かれる。イギリス北東部ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク。心臓に病を患ったダニエルは、医者から仕事を止められ、国からの援助を受けようとしたが、複雑な制度のため満足な援助を受けることができないでいた。シングルマザーのケイティと2人の子どもの家族を助けたことから、ケイティの家族と絆を深めていくダニエル。しかし、そんなダニエルとケイティたちは、厳しい現実によって追い詰められていく。(映画.comより



当たり前の権利

引退宣言を撤回したケン・ローチ監督が撮った『わたしは、ダニエル・ブレイク』。世界的に深刻化する格差社会を前にして、黙ってはいられないと考えたのでしょうか。イギリスの雇用支援金制度にスポットを当てているけれど、そこで描かれるのは社会制度の理不尽さや人間としての尊厳という普遍的なテーマです。

ニューカッスルで暮らす59歳の大工、ダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は心臓病を患い、医者から仕事を止められます。そこで雇用支援金の給付を得るための審査を受けると、まだ働けるという理由で給付の対象外とされてしまいます。審査の不当を役所に訴えでるものの、電話では長時間待たされ、役所に出向くと求職者手当を公式サイトから申請しろと。パソコンが使えないは途方に暮れるのです。

かたやロンドンからふたりの子供を連れて引っ越してきたシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)は審査の時間に遅れてしまったために、求職者手当の手続きを受け付けてもらえません。そのやりとりを見ていたダニエルは職員の理不尽な態度に激怒し、役所から追い出されるのでした。

医者から働けないと言われているのだから、診断書を提出すればいいような気もするが、そうでもないんでしょうか。とにかく、役所の対応が回りくどくて複雑。そして高圧的。ダニエルに同情的な職員もいるけれど、その親切心も特別扱いになるからやめろと言われてしまいます。形式的になりすぎて役所本来の目的がないがしろに。

求職者手当を受けるには求職活動をしている証拠が必要だといわれ、そのためには履歴書が必要だから履歴書の書き方講座を受講しろと。しかも、もし受講を拒否したら処罰される、と。「処罰」? 一体、なんの罪で? 仕方なく履歴書を作ったダニエルが仕事を求めて歩き回ると、とある園芸店から採用の電話が。ところがダニエルは心臓病で働くことができません。園芸店の店主から「手当目当ての仕事探しだったのかよ!」と怒鳴られるダニエル……。八方ふさがりです。

このような理不尽な福祉制度の問題は、イギリスに限った話ではありません。ボクの知り合いの例では、重度の障害を抱えた息子をもつシングルマザーが、自宅で息子の世話をしているためフルタイムでは働けず、生活保護の受給を申請しましたが、遠方の病院に通院するための車を所有していることを理由に「生活に余裕がある」と判断され、生活保護を受けられませんでした。そもそも生活保護は、最低限の生活を国が保証する国民の真っ当な権利のはずなのに、それを手にするためにはいくつものハードルを越えなければなりません。また、制度的な不備もさることながら、生活保護受給者に対する世間の冷淡さも問題で、日本ではすぐに自己責任論が巻き起こります。なんでも自己責任というなら、そもそも国など必要ないのですが。

食生活もままならず、ボランティアによるフードバンクを訪れたケイティが、空腹に耐えかねて発作的に缶詰をむさぼってしまうシーンは本当に胸が痛くなります。やがて生理用品を万引きしてしまうまでに困窮したケイティは、貧困のせいで娘がいじめられていることを知って、とうとう売春宿で働くことに……。

ダニエルの周りには、彼を助けようと親身になってくれる友人が少なくありません。しかし、個人の助け合いだけでは限界があります。だからこそ公的機関による支援が必要になるのですが、役所の対応に辟易したダニエルはついにブチ切れ、役所の壁に缶スプレーで「俺はダニエル・ブレイクだ。飢える前に申し立て日を決めろ。電話のクソなBGMも変えろ」と書き殴るのでした。快哉を叫ぶ通行人たち。

生活を取り戻したかのようにみえる(それが売春によってというのに言葉を失うが)ケイティに連れられて、支援打ちきりの不服申し立てに出向いたダニエルでしたが、トイレで心臓発作を起こし、帰らぬ人となってしまいます。ダニエルの葬儀で彼が申し立ての時に用意していた文書を読み上げるケイティ。「私は、ダニエル・ブレイク。人間だ。犬ではない。当たり前の権利を要求する。敬意ある態度というものを。1人の市民だ。」







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