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テリー・ギリアムのドン・キホーテ

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(原題:The Man Who Killed Don Quixote 2018年/スペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル合作 133分)
監督/テリー・ギリアム 製作/マリエラ・ベスイェフシ、ヘラルド・エレーロ、エイミー・ギリアム、グレゴワール・メラン、セバスチャン・デロワ 製作総指揮/アレッサンドラ・ロ・サビオ、ジョルジャ・ロ・サビオ、ジェレミー・トーマス、ピーター・ワトソン、ハビエル・ロペス・ブランコ、フランソワ・トゥウェード 脚本/テリー・ギリアム、トニー・グリゾーニ 撮影/ニコラ・ペコリーニ 美術/ベンジャミン・フェルナンデス 衣装/レナ・モッスム 編集/レスリー・ウォーカー、テレサ・フォント 音楽/ロケ・バニョス
出演/アダム・ドライバー
、ジョナサン・プライス
、ステラン・スカルスガルド
、オルガ・キュリレンコ
、ジョアナ・リベイロ
、オスカル・ハエナダ
、ジェイソン・ワトキンス
、セルジ・ロペス
、ロッシ・デ・パルマ
、ホビク・ケウチケリアン
、ジョルディ・モリャ


概要とあらすじ
「未来世紀ブラジル」の鬼才テリー・ギリアムが映画化を試みるも、そのたびに製作中止などの憂き目に遭い、幾度も頓挫してきた企画で、構想から30年を経て完成にこぎつけた、ギリアム念願の一作。自らをドン・キホーテと信じる老人と若手映画監督の奇妙な旅路を描く。仕事への情熱を失っていた若手CM監督のトビーはスペインの田舎での撮影中、謎めいた男からDVDを渡される。それはトビーが10年前の学生時代に監督し、賞にも輝いた「ドン・キホーテを殺した男」だった。映画の舞台となった村が近くにあることを知ったトビーは、現地を訪れるが、ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエルが自分を本物の騎士だと信じ込むなど、村の人々はトビーの映画のせいですっかり変わり果てていた。トビーをドン・キホーテの忠実な従者サンチョだと思い込んだハビエルは、トビーを無理やり連れ出し、冒険の旅へ出るが……。自らをドン・キホーテと思い込む老人ハビエルを「2人のローマ教皇」のジョナサン・プライス、トビー役を「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役で知られるアダム・ドライバーが演じた。(映画.comより



ついにやっと今度こそ本当に!

長きにわたって「製作中止!」「製作再開!」というニュースばかり目にしてきた『ドン・キホーテを殺した男』改め『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』が、ついにやっと今度こそ本当に完成!!

その苦難の顛末は、本来メイキングとして撮影されていたものをドキュメンタリーとして公開した『ロスト・イン・ラ・マンチャ(2002)』で生々しく描かれています。ざっくりいうと、予算の縮小、行方がわからない俳優、ロケ地上空を飛び回る戦闘機、突然の悪天候による機材の損傷と撮影延期、保険会社との契約問題、そしてとどめにドン・キホーテ役のジャン・ロシュフォールが椎間板ヘルニアで離脱(馬に乗れない!)……そしてついに製作中止となるわけですが、これは災難の第一部。

その後何度も製作再開を試みるものの、やっぱり資金繰りが頓挫。主役だったジョニー・デップはやる気をなくし、今度はなんと、ロバート・デュヴァルを経てドン・キホーテ役に就任したジョン・ハートの膵臓ガンが発覚。そして、製作中止……。その後も脚本の所有権などでごたごたは続き、あっという間に30年。

『ロスト・イン・ラ・マンチャ』を観た限りでは、テリー・ギリアムが好き放題に予算を食いつぶし、スタッフには無理難題を押し付けて傍若無人に振る舞っていたようには思えませんでした。次から次へと湧いてくるアイデアに妥協しないギリアムがスタッフに高い要求をすることはありましたが、それはいたって普通のこと。予想もしない災難が重なった「不可抗力」な事態がもたらした結果のようにみえました(まさにこの「不可抗力」の解釈を巡って保険会社と争いになるのですが)。かのオーソン・ウェルズもドン・キホーテの映画化に挑んだものの、実現しなかった過去があり、「呪われた企画」と呼ばれるのもむべなるかな。

従者サンチョ・パンサを引き連れたドン・キホーテ。古びた風車を目にしたドン・キホーテは「巨人だ!」と叫び突進し、羽にひっかかって宙ぶらりんになったところで「カット!」。それはCM監督のトビー(アダム・ドライバー)が撮影中のワンシーンでした。背景に風力発電用の風車が林立しているのが面白い。いまいち撮影に集中しているようにはみえないトビーがスタッフと食事をしていると、彼の上司であるボス(ステラン・スカルスガルド)が妻ジャッキ(オルガ・キュリレンコ)を伴って現れ、自分が出張から戻ってくるまで妻の面倒を見てくれとトビーに託します。

さっそく部屋にこもってジャッキと「いいこと」を始めるトビーでしたが、ジプシー(オスカル・ハエナダ)と呼ばれる謎の男が売っていた一枚の写真に触発されて過去の記憶を呼び覚まします。それは10年前、トビーが学生時代に監督した『ドン・キホーテを殺した男』という自主製作映画でした。かつて映画賞を受賞するほど話題を集めたその作品のDVDを観賞しつつ、ジャッキといちゃついていると、ドアをノックするものが。なんと出張に出かけたはずのボスでした。慌てて逃げ出したトビーは、かろうじて浮気がバレずにセーフ。

その翌日、かつて『ドン・キホーテを殺した男』を撮影したロケ地の街がそう遠くないところにあると知ったトビーは、撮影中の現場を抜け出し、スタッフのバイクを借りて想い出探しに向かいます。バイクなのは馬の代わりでしょうか。

トビーのフラッシュバック。『ドン・キホーテを殺した男』の配役に現地の人を採用しようと決めていたトビーは、ドン・キホーテ役にぴったりの靴職人ハビエル(ジョナサン・プライス)を発見。しかし、演技経験のないハビエルはなかなかドン・キホーテらしく振る舞ってはくれません。一方、バーではとびきりキュートなウエイトレス、アンジェリカ(ジェイソン・ワトキンス
)を発見。「君はスターになれる」と褒め称えますが、彼女には厳しい父親がいつも目を光らせていたのでした。

あいかわらずスタッフがバーに集まっていると、すっかり気を許したアンジェリカにふざけてちょっかいを出すスタッフが。すると突然、それまで脚本を読みふけっていたハビエルが立ち上がって剣を抜き、アンジェリカを守ろうとしたのです。「我こそはドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ!」。いつしかハビエルの内にドン・キホーテの魂が芽生えていたのです。最高だよ、ハビエル!

……という想い出を懐かしんでいたトビーでしたが、10年の間にトビーの一言でその気になったアンジェリカは家を飛び出してショービズの世界へ。そしてハビエルは未だに自分はドン・キホーテだと思い込んでいたのでした。

スティック型スタンガンみたいな棒を振り回すばあさんとの格闘の末、なんとか撮影現場に戻ったトビーでしたが、そこで待ち受けていたのは警察とボス。ハビエルの小屋が火事になったため、容疑者としてとらえられたトビー。パトカーには強盗の濡れ衣を着せられたジプシーも乗っていました。しかし、ふたりを連行するパトカーの前に忽然とハビエル=ドン・キホーテが出現。トビーをサンチョ・パンサだと思い込むハビエル=ドン・キホーテとトビーの不思議な旅が始まるのです。

倒錯した世界にどっぷりと浸りきっているハビエル=ドン・キホーテが、それ故にむしろ明快な反面、理不尽に連れ回されるトビーの心は揺れ動いています。彼は正気を保ってはいますが、夢の中ではドン・キホーテが存在する世界に迷い込み、現実と妄想を行ったり来たりします。その往来は徐々にテンポを速め、中世の衣裳を身に纏った仮装パーティによって、現実のほうが妄想に限りなく近づいていくのです。中盤から終盤に向かって、テリー・ギリアム的な猥雑感と祝祭感が密度を増していき、テリー・ギリアムの映画としか表現できない世界を構築していきます。

アンジェリカの夫「ウォッカ王」の悪ふざけによって笑いものにされたハビエル=ドン・キホーテは意気消沈し、我に返ったのか強者にかしずくかのように床をふいています。むしろアンジェリカをさらって逃げようとしているトビーのほうが勇ましく……。誤って窓から転落したハビエルは死んでしまいました。彼は死に際に「全部わかっていた」というようなことを口走ります。ハビエルは自覚的にドン・キホーテになりすましていたのでしょうか。

アンジェリカとふたりで『ドン・キホーテを殺した男』のロケ地だった街へと向かうトビー。しかし、トビーの目の前にでっぷり肥った3体の巨人が現れるのです。果敢に立ち向かうトビーが戦っていたのは、もちろん風車です。助けに向かったアンジェリカを見つめて「サンチョ・パンサよ」と呼ぶトビー。ハビエル亡き後、ドン・キホーテの魂はトビーに引き継がれたのでした。

理不尽に振り回されるCM監督トビーはもとより、ハビエル=ドン・キホーテもテリー・ギリアムの自己を投影した存在。長い年月をかけて苦難の道のりを辿ってきた本作の制作過程も自虐的ジョークにして盛り込んでいますが、そんな苦難あってこその本作なんでしょう。テリー・ギリアムは本作の制作を通じて、映画作り=表現とは、見えない巨人に立ち向かうかのようなものだという当初からあった確信をより深めていったに違いありません。

というか、いまや引く手あまたの大活躍中であるアダム・ドライバー
が主役を務めるのも、本作の制作がここまで延びに延びた結果であり、その邂逅を引き寄せるアダム・ドライバーの引きの強さというか強運に驚きます。

というわけで存分に楽しんだんですけど、正直にいって、とんでもない大作というわけでもないし、30年にもわたって苦しまなければならないほど難儀な作品だろうかと感じました。もちろん、幾多の練り直しを経てテリー・ギリアムの当初の計画からは規模が縮小されたのかもしれないし、技術的な進歩がなにかしらポジティブな影響をもたらしているかもしれません。それでも本作こそが現在における『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』に偽りはないし、ついにテリー・ギリアムは宿願のドン・キホーテになれたんだと思いました。おめでとう、テリーさん!







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