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鬼婆

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(1964年/日本 103分)
監督・脚本/新藤兼人 製作/絲屋寿雄、能登節雄、湊保 撮影/黒田清巳 美術/新藤兼人 音楽/林光 録音/大橋鉄矢 照明/菱沼誉吉 編集/榎寿雄 題字/岡本太郎
出演/乙羽信子、吉村実子、佐藤慶、殿山泰司、宇野重吉、松本染升、加地健太郎、田中筆子

概要とあらすじ
「母(1963)」の新藤兼人がシナリオを執筆、監督した民話もの。撮影もコンビの黒田清巳。時は南北朝、戦乱にふみにじられた民衆は飢え、都は荒廃し民は流亡した。芒ケ源に鬼女が住むと噂されたのもその頃である。芒ケ原に二人の女が棲んでいた。中年の女と、その息子の嫁は、芒ケ原に流れてくる落武者を殺し、武具類を奪っては武器商人の牛に売って生活を支えていた…(映画.comより抜粋



深くて暗い「穴」

新藤兼人監督の『鬼婆』。14世紀末の南北朝時代(湊川の戦いから50年以上あと)を舞台にした物語です。

一面生い茂る葦をバックに「穴 深く暗い」という文字が載せられ、「太古から現代へ闇を透して通じる」と続きます。本作では具体的な「穴」が登場しますが、どう考えてもこの「穴」は女性の陰部の暗喩であり、背の高さほどもある葦はまるで女性の陰毛のよう。葦が覆い尽くす川縁を舞台にした密室劇でもあります。

そんな場所にふたりの傷ついた武士が肩を抱き合いながらやってきます。どうやら戦から逃れてきた彼らが疲れ果てて倒れ込むと、草むらの中から飛び出してきた槍に刺され、殺されてしまいます。ぬっと現れた中年女(乙羽信子)若い女(吉村実子)のふたりは黙々と武士たちを身ぐるみ剥いだかと思うと、ふんどし一丁になった武士を大きく口を開けた穴の中に捨て去るのでした。

乙羽と乙羽の息子の嫁・吉村(役名がないので)は、戦から紛れてきた武士を殺し、牛(殿山泰司)と呼ばれる男に追いはぎした甲冑や刀を売ってなんとか生計を立てていたのです。乙羽の息子=吉村の夫は、戦に駆り出されてしまい、働き手がいなくなっていたのでした。このあたりの設定や乙羽の口から漏れ出る恨み節などからは、太平洋戦争における大日本帝国に対する反撥が窺えます。それが冒頭の「太古から現代へ闇を透して通じる」の真意なのではないでしょうか。とにかく、乙羽の眼光が鋭い。リアリティのないアイラインが寓話性を高めます。

そんなふたりが暮らす掘っ建て小屋に、八(佐藤慶)という男がひょっこりと現れます。この八はかつて地元(?)で暮らしていた男で、乙羽の息子同様、戦に駆り出されましたが、根っからのずるがしこさで戦禍をくぐって逃げのびて、地元に舞い戻ってきたのでした。八がいうには、乙羽の息子は死んでしまったとのこと。

やがて八は、若い吉村に色目を使い始めます。まあ、自然なことといえばそうかもしれません。しかし、乙羽は吉村を八に取られるとひとりぼっちになって生活にも困るため、なんとか八を追い払おうとするのですが、吉村は八の誘惑を堪えきれず、ふたりは夜ごと身体をかわすように。乙羽が眠ったのを見計らって八が暮らす掘っ建て小屋にひた走る吉村の疾走感。恋とはいつも全力疾走なのじゃ。

そのことに感づいた乙羽は、吉村の後を付けてふたりが抱き合っているところを盗み見しますが、その帰り道、乙羽は自分の胸をもみしだき、枯れ木に抱きつきます。彼女もまた性欲に飢えていたのです。吉村に対する乙羽の態度は、生活を鑑みてだけのことではなく、少なからず嫉妬も含まれているのでしょう。

毎夜、八のもとへと逢い引きに向かう吉村を、今夜こそは追いかけようと乙羽が起き上がると、鬼の面を被った武士(宇野重吉)が現れ、隊とはぐれてしまったので都まで案内しろといいます。しぶしぶ従う乙羽にその武士が「自分が鬼の面を被っているのは、あまりにも美しい顔をしているからだ」とうそぶくと、乙羽は「美しいものを見たことがないから、駄賃代わりにその顔を見せてくれ」と申し出ますが、軽くあしらわれてしまいます。やがて、件の「穴」に差し掛かると乙羽は大きくジャンプし、武士は穴の底へと落ちてしまいます。この武士は、乙羽の息子のような若い部下を無残に死なせた上官であり、鬼の面の隠された美しい顔(虚像)を自負していることからも、やはり先の戦争における理不尽を思い起こさせます。「穴」に降りていった乙羽が武士の面をはぎ取ると、武士の顔は美しいどころか、酷くただれていました。

かねがね、八に惹かれる吉村に「汚らわしいことをしていると地獄の畜生道に落ちるぞ」と脅していた乙羽は、八の元へと向かう吉村を武士から奪い取った鬼の面を被って待ち伏せました。2回目に待ち伏せたときなんか、ほぼ空を飛んでいます。恐怖におののいた吉村は八と会うことができず、乙羽の作戦は大成功。

ところが大雨の夜、やはり鬼の面を被った乙羽に脅された吉村は草むらの中を走っているときに八と再会。熱く抱き合ったあと、掘っ建て小屋に帰ってみると、そこにはあの鬼が。後ずさる吉村でしたが、それは鬼の面が外せなくなって苦しむ乙羽でした。今までの鬱憤を晴らすかのごとく、乙羽に呪詛を吐く吉村。今後、なんでも自分に従うことを条件に、鬼の面を外してやろうとしますが、びくともしません。ついには棒で乙羽の顔面を打ちつける吉村。やっと鬼の面が割れて露わになった乙羽の顔は激しくただれていたのでした。その顔に怯えて走り出す吉村。わけがわからず追いかける乙羽。吉村が「穴」を飛び越え、乙羽が穴に差し掛かったところで、ジ・エンド。自由を求める若者を束縛する反面、じつは藁をもつかむ気持ちで彼らにすがっている乙羽が「鬼婆」となるのは皮肉だし、なんとももの悲しく、切ない。

レンタルしたDVDには、「佐藤慶のプライベートフィルム」という特典映像がついていました。佐藤慶自身が撮影したのかどうかわかりませんが、本作の撮影風景が記録されています。そこには、千葉県の葦ヶ原のロケ地に建てられたプレハブ小屋(というかちょっとした集落)で、なんと3か月に及ぶ合宿でのスタッフたちの姿が映し出されています。「穴」を映し出す俯瞰ショットがクレーンではなく、櫓を組んでいたりするのも興味深いのですが、大勢の若いスタッフたち(もちろん新藤兼人監督も若い!)が映画作りに挑み、撮影の合間には半裸で昼寝したり、トランプで遊んだりしている姿を見ると、その熱意とともに呑気な雰囲気が感じられて、なんだかうらやましくなりました。







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