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スマホを落としただけなのに

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(2018年/日本 116分)
監督/中田秀夫 原作/志駕晃 脚本/大石哲也 プロデューサー/刀根鉄太、下田淳行、辻本珠子 撮影/月永雄太 照明/藤井勇 録音/室薗剛 美術/磯見俊裕、塚本周作 装飾/平井浩一 編集/青野直子 音楽/大間々昂、兼松衆
出演/北川景子、千葉雄大、成田凌、田中圭、原田泰造、バカリズム、要潤、高橋メアリージュン、酒井健太、筧美和子、桜井ユキ、北村匠海

概要とあらすじ
志駕晃の同名ミステリー小説を「リング」の中田秀夫監督のメガホン、北川景子の主演で映画化。いつものように彼氏に電話をかけた麻美は、スマホから聞こえるまったく聞き覚えのない男の声に言葉を失うが、声の主はたまたま落ちていた彼氏のスマホを拾った人物だった。彼氏が落としたスマホが無事に戻ってきたことに一安心する麻美だったが、その日から麻美の日常は一変する。まったく身に覚えのないクレジットカードの請求、それほど親しくない友だちからの執拗な連絡……それらは麻美のさまざまな個人情報が彼氏のスマホからの流出を疑う事象の数々だった。一方その頃、ある山中で若い女性の遺体が次々と発見される事件が起こる。すべての遺体には、いずれも長い黒髪が切り取られているという共通点があり……。北川が主人公・麻美を演じるほか、連続殺人事件の担当刑事役を千葉雄大、セキュリティ会社社員役を成田凌、麻美の彼氏役を田中圭がそれぞれ演じる。(映画.comより



気晴らししたかっただけなのに。

いろいろと真剣に向き合わなければならない問題が山積しているので、できるだけ「軽い」映画を観て現実逃避するべく選んだ『スマホを落としただけなのに』。随分と失礼な動機ですが、とはいえ監督はJホラーの巨匠、中田秀夫監督ですから。なにかしら見どころがあるのではないかとも思ったわけです。しかし、予想通りの「軽い」映画でした。

『スマホを落としただけなのに』というタイトルの野暮ったさはともかく、そこから想像したのは「風が吹けば桶屋が儲かる」的な、スマホを落とすという些細な出来事を機に予想を上回る事態が次々と巻き起こり、どんどん雪だるま式に悲惨な方向へと転がっていって、取り返しのつかない窮地に陥る……というようなサスペンスを期待していたのですが、スマホを落としたことはあくまで代替可能なきっかけに過ぎませんでした。実際は「スマホを落としたら拾ってくれた人がサイコパスだった」です。本作はスマホを落としたことよりも、拾ったやつがサイコパスだったことのほうが大問題なのです。

インターネットを利用したスマホやPC(もしくはサイト内)に残される個人情報は、日々蓄積され、もはや「人格」といってもいいほど。本人が自認すらしていない「本当の自分」がスマホやPCに刻まれているといっても過言ではないでしょう。そんな危ういネット環境に身を置く者がスマホを落とすことから、小さな綻び(もしくは小さな悪意)によって誤解を生み、その収拾に追われるうちにさらなる誤解を生んで、もはや誰が加害者で何が真実なのか、自分が何者なのかわからなくなる……といったストーリーを想像していたのですが、ま、無い物ねだりだったかもしれません。

タクシーの車内でスマホを落とした誠(田中圭)。婚約直前の恋人・麻美(北川景子)に誠のスマホを拾ったという人間から電話が入り、麻美は指定されたカフェに誠のスマホを受け取りに行きます。しかし、すでにスマホを拾った男=犯人によって、誠のスマホ内のデータは抜き去られていたのでした。というのが、お話のはじまり。

そもそもタクシーの中で拾ったスマホを、どういう口実で犯人がカフェに託したのかよくわからないし、カフェの店員もスマホの持ち主ではない麻美にあっさり渡していいものか……というような疑問が立て続けに巻き起こりますが、本作においてそんなことは些細なことなのです。

とにかく、誠と麻美はネット・リテラシーが低すぎ。SNSの不可解な友達申請や怪しいリンクでもバンバンクリックします。暗証番号は誕生日です。いつも思うんですけど、登場人物のバカさ加減によって起きるサスペンスは、それだけで白けるのです。犯人は誠のクレジットカード情報を利用して何台もテレビ(モニタ?)を買ったりするんですけど、それを知った誠は「仕方がない」みたいに、あっさり諦めるのです。全然、仕方がなくねえだろ!

ボクも一度、どこかの誰かにカード情報を盗まれて家電のサイトで買い物をされそうになった経験がありますけど、そのときは不審に思ったカード会社から連絡が来て事なきを得ました。おかげでカードを失効&再発行するはめになりましたが、カードの裏に記載されているセキュリティ・コードはだいたいその都度手入力なので、悪用するハードルも高くなっていると思うのですが。ま、本作の犯人はそれすららくらくと突破したんでしょうね、きっと。でも、ネットで買った大量のテレビ(モニタ)はどこに配送されたのよ? 誠は「なんか、こんな請求来たんだよね〜」とか呑気だけど、手続きの描写に多少の嘘はあったとしても、ここは誠の部屋に次から次へとテレビ(宅配ピザでもそばの出前でもなんでもいいよ)が届いて困惑するというシーンは必要でしょう。画的に大変な被害を被っている表現がまったくないのはいかがなものか。

テな具合で、本作には登場人物たちのネット・リテラシーの低さによる「事件」が頻発するのですが、そんな危険があったのかと驚くような犯罪テクニックは一切なく、社会的信用が失墜することもなく、せいぜい誠と麻美の痴話げんかの種になるだけ。SNSを乗っ取られて麻美に執拗に絡んでいたバカリズムも「俺じゃないよ」の一言で事を済ませてしまいます。いやいや、本人じゃなかったね、あーよかったじゃなくて、アカウントを乗っ取られてることが問題なんですけど。

かたや、連続殺人事件を追う警察。「虫嫌だ〜」とかいっていた新米刑事の学(千葉雄大)がベテラン刑事・毒島(原田泰造)とコンビを組むことになるのですが、このふたりがコンビを組むことになる経緯はまったく表現されません。かろうじて学が元IT企業に勤めていたからネット犯罪に詳しそうというだけ。警察ってそんなに簡単に転職できるのか疑問ですが、とにかく学は自身のIT知識でもって無双状態に。でも実際は知識じゃなくて、ほぼほぼ山勘! しかも彼には母親から虐待を受けたトラウマがあり、それが真犯人の心情とリンクしていて、なんかお前の気持ちわかるよ的な雰囲気になるのですが……まじどうでもいい!! いろいろ盛り込み過ぎなんだよ! たのむからスマホに集中してくれ! ス・マ・ホ! ス・マ・ホ!

さらにはクライマックスで、じつは麻美は麻美じゃなくて、山本美奈代という人物だったということが非常に冗長に明かされます。美奈代と同居していたシン・麻美は、没頭していた株投資で失敗を重ね、あろうことか美奈代名義で多額の借金をしていたのです。そこで窮地に追い詰められたシン・麻美は美奈代として自殺することで借金を帳消しにし、美奈代に自分=麻美として生きるように促したのでした。それを受けた美奈代は、整形手術によって麻美とそっくりの顔になり、麻美として生きてきたのでした。100万歩譲って、シン・麻美が美奈代になりすまして死ぬのはいいとしても、美奈代が整形までして麻美になりすます必要はまったくないと思うのですが。自分(美奈代)以外なら誰でもいいのでは? ていうか、顔を変える以前に、戸籍とか、住民票とか、健康保険証とかさ……。たいへんだよねぇ。

ぜんぜん素直に飲み込めないエピソードですが、それはともかく、もはやネット・リテラシーとかアカウント乗っ取りとかスマホとか、1mmも関係ないエピソードがどんでん返しとして用意されていたわけで、なんにもどんでん返ってないのです。一見、ネット上のなりすましと実際のなりすましをうまいこと絡ませたように思えますが、麻美=美奈代というエピソードはあくまで現・麻美の個人的な過去の秘密に過ぎず、そもそも観客は美奈代という人物を知らないので、そうなんだ〜と鼻をほじるほかありません。

へらへら笑う真犯人の目の前で、その事実を現・麻美から長々と告白された誠も同様にキョトンとしたことでしょう。だって、誠はシン・麻美の存在を知らずに現・麻美を好きになったわけで、好きになったシン・麻美が誠の知らないうちに現・麻美に入れ替わっていたわけではないのですから、かろうじて、隠し事があったこと(わりと突拍子もないけど)に驚く程度ではないでしょうか。それともあれか? 整形してたことにショック受けたのか? 顔か? まあなんにせよ、どーでもいいですね。

結局、ネット上のなりすましや風評被害、人格というものに対するまともな考察はなく、トラウマを抱えたケラケラ笑うサイコパスという日本映画にありがちな犯人をあてがって、なんとか体裁を整えた(整ってないけど)だけの愚策でした。なにやら続編を作ろうとしているようです。信じがたいですね。ケチのつけどころが多くて、そこそこ長文になってしまいました。気晴らししたかっただけなのに。







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