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ペパーミント・キャンディー

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(原題:Peppermint Candy 1990年/韓国・日本合作 130分)
監督・脚本・原作/イ・チャンドン 製作/ミョン・ゲナム、上田信 撮影/キム・ヒョング 美術/パク・イルヒョン 編集/キム・ヒョン 音楽/イ・ジェジン
出演/ソル・ギョング、ムン・ソリ、キム・ヨジン

概要とあらすじ
韓国現代史を背景に1人の男性の20年間を描き、韓国のアカデミー賞である大鐘賞映画祭で作品賞など主要5部門に輝いた人間ドラマ。「オアシス」「シークレット・サンシャイン」のイ・チャンドン監督が1999年に手がけた長編第2作。99年、春。仕事も家族も失い絶望の淵にいるキム・ヨンホは、旧友たちとのピクニックに場違いなスーツ姿で現れる。そこは、20年前に初恋の女性スニムと訪れた場所だった。線路の上に立ったヨンホが向かってくる電車に向かって「帰りたい!」と叫ぶと、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させた妻ホンジャとの生活、惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇した光州事件。そしてヨンホの記憶の旅は、人生が最も美しく純粋だった20年前にたどり着く。2019年3月、イ・チャンドン監督の「バーニング 劇場版」公開にあわせて、4Kレストア・デジタルリマスター版が日本初公開。(映画.comより



人生ってやつは。

決して若くない年齢になってから人生に行き詰まると、昔のことばかりが頭に浮かんでくるようになるものです。意識して過去を懐かしんでいる(もしくは悔やんでいる)わけではないのですが、どういうわけか、そうなのです。将来に希望が持てず、前向きになれないからだと言われればそのとおりなんでしょうけど、自分でも不思議になるくらい過去の記憶が溢れてくるのです。

イ・チャンドン監督『ペパーミント・キャンディー』は1998年の韓国の日本文化開放後、初めての日韓合作映画です。鉄橋の下の河原で目を覚ましたキム・ヨンホ(ソル・ギョング)がフラフラと立ち上がると、そこでは「カリボン峰友会(ソウルのカリボンドン地区で働いていた人々の同窓会)」の面々が20年ぶりの同窓会と称したピクニックの最中でした。偶然にも(!)ヨンホはかつて「カリボン峰友会」のメンバーでした。旧交を温めるかと思いきや、奇行を繰り返すヨンホは同窓会をかき乱し、鉄橋の上に駆け上って向かってくる列車を待ち構えます。「帰りたい!」と叫びながら。

本作は人生どん詰まりのサンホが、忌の際でみる走馬燈のように過去を振り返る物語です。チャプターごとに時が遡り、ときおり挿入される線路の映像も逆回しです。ただし、当然ながらそれぞれのシーンは通常の時間の経過を辿って描かれ、戻って進んでを繰り返すので非常に不思議な感覚をもたらします。

河原に現れる数日前。仲間の裏切りによって事業が失敗したサンホは拳銃を手に入れてかつての共同経営者を襲撃します。自殺を試みるも実行できず、どうやら別れたらしい元妻の家を訪れますが、ドアチェーンも外してもらえず、追い返されます。土砂降りの雨の中、根城にしている掘っ立て小屋に帰ると、見知らぬ男が。その男はスニム(ムン・ソリ)という女性の夫で、病床に伏したスニムがサンホに会いたいと言っていると告げます。心当たりのあるソンホは男に従ってスニムが入院している病院を訪れますが、彼女はすでに意識不明の状態。涙ながらに彼女に語りかけたサンホが立ち去ろうとすると、スニムの夫が彼に「あなたのものだ」とカメラを渡しますが、受け取ったサンホはそのカメラを売り払ってしまいます。

ここから物語の時系列通りに綴ります。このスニムという女性こそ、サンホの最愛の女性であり、「帰りたい!」と叫んだ場所なのでしょう。20年前、同窓会のピクニックに参加したふたりは、どちらからともなく惹かれ合います。「いつかカメラを担いで、名もない花を撮り歩きたい」と語るサンホ。その後、徴兵されたサンホの元にはスニムからの「ペパーミント・キャンディ」入りの手紙が届き続けます。スニムはサンホの部隊まで面会にも訪れましたが会うことはできませんでした。面会に来たスニムとすれ違うように出動するサンホ。このシーンは『タクシー運転手 約束は海を越えて(17)』でも描かれた光州事件で、サンホは罪のない少女を誤って殺してしまいます。

兵役を終えたサンホは警官となり、行きつけの定食屋で働いていたホンジャ(キム・ヨジン)といい仲に。容疑者に対する拷問まがいの取り調べを強要されたサンホは、警官としての逞しさが増す反面、徐々に精神が壊れ始めます。せっかく会いに来てくれたスニムの前でホンジャの尻を撫でて見せ、スニムが貯金を貯めて買ったというカメラも受け取らずに返してしまいます。

この時点で、サンホは自分がすっかり汚れてしまい、もう後戻りできないところまで来てしまったと考えていたのでしょう。だからこそ本当の想いを断ち切ってスニムとの縁を切ろうとしたのです。

その後、ホンジャと結婚したサンホ。彼のやさぐれ度合いはさらに深刻になっていくわけですけど、スニムへの想いで半べそかきながらも、張り込みの休憩中に立ち寄ったバーの店員と一夜を共にし、警察をやめて家具店を経営し始めると若い従業員の女性とねんごろになり、なんだかモテモテなのです。いまいちサンホに同情できないのは、この1点がすべてです。

そして、すべてを失ったサンホは死に瀕したスニムと再会して自らの人生を激しく悔やむのです。徴兵をきっかけにしてサンホはスニムとの関係を断たれてしまったという一面は確かにありますが、スニムの一途さと比べるとサンホの自滅のようにも思えます。ていうか、死の間際にかつての恋人への変わらぬ恋心を伝えられたスニムの夫のいたたれまれなさったら。

時代に翻弄され、妥協と順応を余儀なくされた挙げ句にすべてを失ったサンホ。少なからず誰の人生にも重なる部分があるでしょう。むしろ、スニムの強さが際立っていたようにも思います。

大事なものに気がついたときには、すでにやり直しが効かないのですな。人生ってやつは。







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