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ある女流作家の罪と罰

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(原題:Can You Ever Forgive Me? 2018年/アメリカ 106分)
監督/マリエル・ヘラー 製作/アン・ケアリー、エイミー・ノイオカス、デビッド・ヤーネル 製作総指揮/ジャワル・ナー、パメラ・ハーシュ、ボブ・バラバン 原作/リー・イスラエル 脚本/ニコール・ホロフセナー、ジェフ・ウィッティ 撮影/ブランドン・トゥロスト 美術/スティーブン・カーター 編集/アン・マッケイブ 音楽/ネイト・ヘラー 音楽監修/ハワード・パー
出演/メリッサ・マッカーシー、リチャード・E・グラント、ドリー・ウェルズ、ジェーン・カーティン

概要とあらすじ
有名人の手紙を偽造していた女性作家リー・イスラエルの自伝を、「ゴーストバスターズ」「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」などで知られるメリッサ・マッカーシーの主演で映画化。かつてベストセラー作家だったリーは、今ではアルコールに溺れて仕事も続かず、家賃も滞納するなど、すっかり落ちぶれていた。どん底の生活から抜け出すため、大切にとっていた大女優キャサリン・ヘプバーンからの手紙を古書店に売ったリーは、セレブからの手紙がコレクター相手に高値で売れることに味をしめ、古いタイプライターを買って有名人の手紙の偽造をはじめる。さまざまな有名人の手紙を偽造しては売り歩き、大金を手にするリーだったが、あるコレクターがリーの作った手紙を偽者だと言い出したことから疑惑が広がり……。監督は「ミニー・ゲッツの秘密」のマリエル・ヘラー。第91回アカデミー賞で主演女優賞、助演男優賞、脚色賞の3部門にノミネート。(映画.comより



偽物に宿る作家性

軒並み高評価にもかかわらず、日本では劇場公開されなかった『ある女流作家の罪と罰』。地味だと思ったんでしょうか。

51歳のリー・イスラエル(メリッサ・マッカーシー)は、かつては伝記小説でベストセラーを出したこともある作家でしたが、時流に乗り遅れ、また偏屈で人嫌いな性格から仕事がなくなり、生活が困窮していました。簡単に言うと「落ち目」ってやつですが、未来に夢を抱くには遅すぎるけれどリタイヤするには早すぎる51歳という彼女の絶妙な年齢がもたらす葛藤に共感する人は少なからずいるのではないでしょうか。飼い猫を除いて身寄りのないリーが直面している問題を人ごととは思えません。

家賃を滞納し、年老いた飼い猫の治療費すら払えないリーは、ある日、女優キャサリン・ヘプバーンから贈られた大切な手紙をやむなく売りに出すことにします。すると、その有名人がしたためたプライベートな手紙が思わぬ高値で売れてしまうのです。そこでリーは数々の有名作家たちの書簡をねつ造して金に換えることを思いつくのでした。その数、なんと400通。

古いタイプライターを購入し、手書きのサインを模倣し、オーブンで紙を焼いたりして手紙を偽造するリー。しかし、彼女はもともと伝記作家。偽造する手紙を書いた本人よりもその人のことをより深く理解し、いかにも本人が書きそうで、より魅力的な(希少価値が高そうな)手紙を書いてみせるのです。リーは、ゼロから物語を作り上げる才能はなかったのかもしれませんが、観察力 or 分析力には優れていたのかもしれません。それは人付き合いが下手な彼女ならではのシニカルな人間観察の結果が、贋作にもっとも適していたということなのではないでしょうか。

もちろん、リーには詐欺行為を行なっているという罪悪感はつきまといます。しかしそれと同時に、ねつ造した手紙は自分の作品なのだという自負もあるのです。このアイデンティティの揺らぎがなんとも切ない。リーは自身の作家的資質に対する失望と自尊心の狭間を行き来しつつ、そうはいっても直面している経済的問題を解消してくれる手紙の偽造にのめりこんでいくのでした。人を出し抜く痛快さも感じていたかもしれません。

リーの唯一の友人となるのがジャック・ホック(リチャード・E・グラント)。彼もまた作家でしたが、すっかり落ちぶれて酒浸りの日々。それでも妙に陽気で楽観的なところが魅力です。リーとジャック・ホックはとても気が合うふたりだったのですが、リーがレズビアンでジャック・ホックがゲイなので、決して恋愛には至らないところが真の友情という感じがして心地よいのです。

やがて彼女が売りに来る手紙が偽造だと知られることとなり、FBIまで捜査に乗り出してきます。とにかく明るいジャック・ホックは、図書館にある本物の手紙を盗み出して売ればいいじゃんと提案します。やむなくリーはそれを実行するのですが、バレるバレないのサスペンスも見どころのひとつ。

しかし、彼女はとうとう逮捕されてしまいます。裁判で弁護士のアドバイスを無視したリーが「自分は作家ではなかった」と吐露するシーンに胸が痛い。彼女はこの答弁でようやく真摯に自分と向き合ったのです。原題の「Can You Ever Forgive Me?」とは「私を許してくれる?」の意。自分に気持ちを寄せてくれていたのに騙すことになった書店員に。愛想を尽かされたかつての恋人に。そして、ジャック・ホックに。久しぶりに再会したジャック・ホックはエイズに冒されていました。

自伝の執筆を決意したリー。そんなとき、とある店でかつて自分が偽造した有名人の手紙が額装されて売られていることを知るのです。リーがその店に向けて皮肉たっぷりの手紙を送りつけると、それが偽物だと知らされた店員は額装された手紙をディスプレイから取り除こうとしますが、一瞬ためらったあと、元に戻します。何も語られていないけれど、これって店員が「まてよ。リー・イスラエルが偽造した手紙ならむしろ価値があるのでは?」と思い直したのではないでしょうか。図らずもリーの「作家性」が評価された皮肉なラストだと思いました。

全編に流れるジャズが心地いい傑作でした。こういうの、ちゃんと公開してくださいよ。ねえ。







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