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心と体と

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(原題:Testrol es lelekrol 2017年/ハンガリー 116分)
監督・脚本/イルディコー・エニェディ 製作/モニカ・メーチ、アンドラーシュ・ムヒ、エルヌー・メシュテルハーディ 撮影/マーテー・ヘルバイ 美術/イモラ・ラーング 衣装/ユディット・シンコビチ 編集/カーロイ・サライ 音楽/アダム・バラージュ
出演/アレクサンドラ・ボルベーイ、ゲーザ・モルチャーニ、レーカ・テンキ、エルビン・ナジ、ゾルターン・シュナイダー、タマーシュ・ヨルダーン、イタラ・ベーケーシュ

概要とあらすじ
長編デビュー作「私の20世紀」でカンヌ国際映画祭カメラドール(最優秀新人監督賞)を受賞したハンガリーの鬼才イルディコー・エニェディが18年ぶりに長編映画のメガホンをとり、「鹿の夢」によって結びつけられた孤独な男女の恋を描いたラブストーリー。ブダペスト郊外の食肉処理場で代理職員として働く若い女性マーリアは、コミュニケーションが苦手で職場になじめずにいた。片手が不自由な上司の中年男性エンドレはマーリアのことを何かと気にかけていたが、うまく噛み合わない。そんな不器用な2人が、偶然にも同じ夢を見たことから急接近していく。2017年・第67回ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞をはじめ4部門に輝いた。(映画.comより



不器用なラブストーリー

第67回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した『心と体と』

雪積もる森の中で餌を探したり水を飲んだりしているつがいの鹿。神秘的なこのシーンは、何度も登場しますが、なにより鹿たちの表情や動きがまるで演技をしているよう。最近のCGはエゲつないことになっているので、もしやこれはCGなのか? とも勘ぐりましたが(とくに後半の森の中を走る雄鹿をカメラでフォローしているシーンはさすがに無理だろうと)、なんと5か月もかけてアニマルトレーナーが慣らしていったほぼ野性の鹿だと知って驚きました。

食肉処理場の人事部長エンドレ(ゲーザ・モルチャーニ)は中年から初老に差し掛かろうとする男。左手が不自由なバツイチの独り者です(ゲーザ・モルチャーニは俳優ではなく、ハンガリーでは著名な編集者だとか)。彼は2階のオフィスにこもりがちで、同僚で友人のイェネー(ゾルターン・シュナイダー)を除いて、従業員たちとはほとんど関わりをもちません。ところがある日、産休に入った検査員の代理としてマーリア(アレクサンドラ・ボルベーイ)がやってきます。柱の陰に立つマーリアが、日光に当たっていたつま先をそっと引っ込める仕草で、彼女の心が閉ざされていることが一瞬でわかります。

食肉処理場が舞台なので当たり前っちゃ当たり前なのですが、食肉として牛が処理されるようすが克明に描かれます。檻から出され、殺されて吊され、首を落とされ大量の血を流す牛たち。こうして精肉された牛肉がボクたちの食料になるので仕方がない……とも思えますが、改めて見せつけられると恐ろしく残酷な行為です。森の中で穏やかに暮らす鹿たちとの対比によって、牛たちが被っている理不尽さを痛感します。

マーリアはおそらくアスペルガー症候群。他者とのコミュニケーションがうまくできず、そのかわり異常なほどの厳格さと記憶力を持っています。空気を読むとか、忖度するなんてことができないのです。彼女の厳格さとは対照的に、職場のなれ合いや陰口をたたく同調圧力も描かれます。もちろん性的な体験もしたことがないのですが、心の中では興味津々。アスペルガー症候群の特徴のひとつといわれるひとり遊びで会話をシミュレーションしたりしています。

ところが、処理場で牛用の興奮剤が盗まれるという事件が勃発。犯人捜しのために招かれた精神科医クラーラ(レーカ・テンキ)のカウンセリングによって、エンドレとマーリアがまったく同じ鹿の夢を見ていたことが判明し、ふたりは急激に意識し合うようになります。フェロモンが出ずっぱりのクラーラはやや高慢な態度ですが、仕事に疲れ切っているようすもうかがえ、エンドレとマーリアの幸福な関係と対照的です。とはいえ、クラーラのカウンセリングがなければ、さらにいえば興奮剤の盗難事件がなければ、ふたりが同じ夢を見ていることを知り得なかったわけで。

どうやらこれは「恋」というやつらしい……と気づいたマーリアが携帯電話を買い、ポルノビデオを観てセックスを学び、大量のCDを試聴して恋愛感情を学習していく過程が微笑ましくも面白い。しかし、少しずつ距離を縮めていたふたりでしたが、マーリアの性質を知らないエンドレが、彼女の身体に触れようとして拒否されたことにショックを受け、まあ、有り体に言ってふてくされて、彼女を拒絶するようになります。

そして絶望したマーリアは、お気に入りの恋の歌をかけながらバスタブに浸かり、ミートハンマーで割ったガラスの破片で左の手首を切るのでした(ミートハンマーがあるなら包丁くらいあるんじゃないかと思いましたが、まあ肉がテーマですからね)。傷口から脈打つように吹き出る血が牛の解体シーンと重なります。極端なマーリア、なんてことを……と思った矢先、エンドレから電話が! やっとふたりは素直な胸の内を打ち明け、めでたく結ばれるのでした。

リアリスティックかつファンタジック。不器用な人間どうしのラブストーリーでした。







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