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アス

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(原題:Us 2019年/アメリカ 116分)
監督・脚本/ジョーダン・ピール 製作/ジョーダン・ピール、ショーン・マッキトリック、ジェイソン・ブラム、イアン・クーパー 製作総指揮/ダニエル・ルピ、ベア・セケイラ 撮影/マイケル・ジオラキス 美術/ルース・デ・ヨンク 衣装/キム・バレット 編集/ニコラス・モンスール 音楽/マイケル・エイブルズ 視覚効果監修/グレイディ・コファー
出演/ルピタ・ニョンゴ
、ウィンストン・デューク
、エリザベス・モス
、ティム・ハイデッカー
、シャハディ・ライト・ジョセフ
、エバン・アレックス
、カリ・シェルドン
、ノエル・シェルドン


概要とあらすじ
「ゲット・アウト」がアカデミー賞にノミネートされ、脚本賞を受賞するなど大きな話題を集めたジョーダン・ピール監督が、自分たちとそっくりの謎の存在と対峙する一家の恐怖を描いたサスペンススリラー。夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンとともに夏休みを過ごすため、幼少期に住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れたアデレードは、不気味な偶然に見舞われたことで過去のトラウマがフラッシュバックするようになってしまう。そして、家族の身に何か恐ろしいことが起こるという妄想を次第に強めていく彼女の前に、自分たちとそっくりな“わたしたち”が現れ……。「ゲット・アウト」に続き、数々のホラー/スリラー作品を大ヒットさせてきたジェイソン・ブラムが製作。主演には「それでも夜は明ける」でアカデミー助演女優賞を受賞し、「ブラックパンサー」などで活躍するルピタ・ニョンゴを迎えた。(映画.comより



地下鉄大江戸線?

ゲット・アウト(17)』が話題になったジョーダン・ピール監督作2作目の『アス』。『ゲット・アウト』は人種差別が根底に流れるじつにスリリングな作品でしたが、本作のテーマは世界的な問題となっている格差社会。期待するなと言われても無理というもの。

1986年、少女が見ているテレビに映っているのは慈善イベント「ハンズ・アクロス・アメリカ」に参加しましょうという呼びかけ。主催者はUSAフォー・アフリカという慈善団体で、大物ミュージシャンがこぞって参加した、アフリカの貧困救済を目的とする『ウイ・アー・ザ・ワールド』を成功させたばかり。それに対してアメリカ国内の貧困層を救おうと企画された「ハンズ・アクロス・アメリカ」は、カリフォルニアからニューヨークまでの間を人々が手を繋ぐというイベントでしたが、寄付金は想定していた額に遠く及ばず、失敗に終わりました。

それを見ていた7歳のジョーダン・ピール少年は、このイベントの偽善性に恐怖を覚え、さらには比較的裕福な家庭に育った自分はたまたま幸運な境遇にいただけで、恵まれない環境で貧困にあえぐ自分も存在するかもしれないと感じたそうです。その想いが本作の出発点。赤いツナギを着て手を繋ぐ「彼ら」の姿は「ハンズ・アクロス・アメリカ」のシンボルマークに基づいています。

ていう、前提があってからの本編なわけです。両親に連れられてサンタクルーズのビーチにやってきた少女アデレードはなにかに誘われるように「Find Yourself(自分を見つけろ)」と書かれたミラーハウスに入っていきます。当然ながら内部は鏡張りで幾重にもアデレードの姿を映し出します。ところが、いつしかアデレードは自分の後頭部に行き当たるのです。それは自分とまったく同じ姿をした「もうひとりの自分」=ドッペルゲンガーでした。序盤では鏡や双子を使ってこれでもかとばかりに対称性が強調されます。

時は経って、アデレード(ピタ・ニョンゴ
)とその家族、夫のゲイブ(ウィンストン・デューク
)、長女ゾーラ(シャハディ・ライト・ジョセフ)、長男ジェイソン(エバン・アレックス
)の4人家族は別荘があるサンタクルーズにバカンスでやってきます。彼らはいわゆる「アメリカン・ドリーム」を成し遂げた富裕層。前振りにしてはすでに不穏な空気が漂っておりましたが、夜も更けた11:11分、彼らに瓜二つの赤いツナギを着た4人家族がやってくるのです。

彼らはやすやすと家の中に侵入し、ハサミを武器にしてアデレードの家族を制圧します。どうやら彼らは言葉が発せないようですが、アデレードと瓜二つのレッドだけは、だみ声ながらかろうじて喋れるようす。そして彼らはアデレード家族を襲ってくるのですが、予想以上に弱い。特殊な能力を備えているわけでもない彼らは、わりと普通に撃退できてしまうのです。また、ジェイソンが侵入者たちを「これはアス(我々)だ」とつぶやく以外には、みんな敵が自分とそっくりなことにさほど驚かない不思議。もちろん「Us」にはUnited Statesもかかっています。

アデレードたちが奮闘しているその頃、ゲイブの友達である白人家族の家にも同様にドッペルゲンガーたちが現れ、有無を言わさずハサミで喉を切り裂き家族を斬殺します。アデレードの家では随分と長く講釈をたれていて、その挙げ句に逃げられたにもかかわらず。

彼らドッペルゲンガーたちは、まずは自分の「分身」を攻撃しているのですが、状況によっては関係のない人間にも攻撃を加えます。このあたりの設定が非常に曖昧なのは否めません。格闘の経緯で長女ゾーラやアデレードの内なる暴力性が発露される瞬間の意図はわかりますが、だからといって彼女たちの人間性がその後豹変するわけでもなく、モヤっとするポイントが非常に多いです。

かろうじて逃げ延びたアデレードたちの先には、ジェイソンのドッペルゲンガーである覆面のプルートーが待ち受けていました。それはプルートーの罠で、自動車もろとも爆破しようとしていたわけですが、それに気づいたジェイソンは両手を広げて後ずさりします。するとプルートーも同じように後ずさりし、後ろで燃えていた自動車の炎にまみれて死んでしまいます。……てことは、ドッペルゲンガーたちは自らの意志とは関係なく、主たる人間の行動に同調してしまうということになるはずですが、このシーン以外で彼らが自制が効かないような描写は一切ありませんでした。

プルートーを退治したかわりにジェイソンはレッドに捕らわれてしまいます。後を追うアデレードはやっぱり例のミラーハウスへと侵入するのです。彼女が通路を辿っていどんどんと地下へと下っていくと、やがてエスカレーターが。ここは地下鉄大江戸線か?(東京在住の人にしか伝わらないかもだが)

アデレード≒レッドがいうには、彼らドッペルゲンガーたちは「テザード(縛られたものたち)」と呼ばれるアメリカ政府によって作られたクローンなのだとか。オリジナルの人間とは魂レベルで繋がっていて行動は同期するようになっている、と。しかし、政府のクローン計画がうまくいかなかったのでそのまま地下に放置されたのだ、と……。

えーと、限られた人間だけでなく、すべてのアメリカ国民のクローンを作ったということなのかな? だとすれば政府にとっての面倒が2倍になるだけで、いまいち意図も目的もよくわかりません。本来のテーマは、自分が恵まれた境遇にいるのは誰かの幸せを搾取することによって成り立っているのではないかという内省的疑念(とアイデンティティの揺らぎ)だと思っていたのですが、政府が作ったクローンだといわれると、ちょっと話が変わってきます。クローンである以上、オリジナルの主体性は免れないわけで、いつまでたっても彼ら「テザード」は化身でしかありません。もしかして『ブレードランナー』におけるレプリカントの悲哀みたいな? いやぁ、それでもやっぱり話が違います。テザードたちが抽象的な「影」ではなく、具体的なクローンだと設定してしまった時点で、本当に伝えたかった主張がうやむやになってしまった気がします。

少なくとも彼らテザードたちは「特別な」レッドに従って蜂起したわけですから、全財産よこせとか立場を入れ替われとか、なんらかの目的は明らかにされるべきではないでしょうか。テザードたちはオリジナルの生活を脅かす存在でしかないので、オリジナルたちに内省的な発想をもたらすには至っていないのではないでしょうか。できれば、テザードの存在は暗喩にとどめて、正体など明かさず、オリジナル家族とクローン家族(というか、パラレルワールドに存在する不運な自分たち)との対立を見せて欲しかったなと思います。

ラストはアデレードこそがクローンで、レッドが本来のアデレードだというオチになっています。ジョーダンもそれにうすうす感づいているようす。監督が本作を「ロールシャッハ・テストのようなもの」というわりには、かなり説明的かつ冗長で、テーマありきの物語・演出になってしまっていると思いました。旧約聖書エレミヤ書11章11節も妙に強調しすぎだし、設定の寓話性と現代社会に対する風刺とのバランスがあまりうまくいっていないのでは? と、感じてしまいました。

テな感じで文句が多めですが、それは期待の裏返し。次の新作が公開されたら観に行きますよ。おそらく。







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