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隣の影

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(原題:Under the Tree 2017年/アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ合作 89分)
監督/ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン 製作/グリーマル・ヨンソン、ソール・シグルヨンソン 脚本/ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン 撮影/モニカ・レンチェフスカ 編集/クリスティアン・ロズムフィヨルド 音楽/ダニエル・ビヤルナソン
出演/ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン、エッダ・ビヨルグビンズドッテル、シグルヅル・シグルヨンソン、ソウルステイン・バックマン、セルマ・ビヨルンズドッテル、ラウラ・ヨハナ・ヨンズドッテル

概要とあらすじ
些細な隣人トラブルの連鎖から人々が暴走していく様子を描いたアイスランド発のブラックサスペンス。閑静な住宅地で暮らす老夫婦が、隣家の中年夫婦からクレームをつけられた。老夫婦宅の庭にそびえ立つ大きな木が、いつも日光浴をするポーチに影を落としているというのだ。それをきっかけにいがみ合うようになった2組の夫婦は、身近で相次ぐ不審な出来事を全て相手の嫌がらせだと思いこむようになる。妻に追い出されて老夫婦のもとへ転がり込んできた息子も、庭のテントで寝泊まりして隣人の監視を手伝う羽目に。やがて老夫婦がかわいがっていた飼い猫が失踪したことから、両家の人々は越えてはならない危険な一線を越えてしまう。アイスランドのアカデミー賞と言われるエッダ賞で作品賞、監督賞など7部門を独占。日本では「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018」国際コンペティション部門に「あの木が邪魔で」のタイトルで出品され、監督賞を受賞した。(映画.comより



しょーもないことの積み重ねが…

アイスランドといえば、数々のSFやファンタジー映画のロケ地として知られ、『馬々と人間たち(13)』『ひつじ村の兄弟(15)』『立ちあがる女(18)』などの作品から広大で神々しい大自然をイメージしてしまいますが、当然、普通の住宅街もあるのですね。そこで起こる隣人トラブルを描いた『隣の影』は、日本の郊外でもいかにもありそうな出来事。監督はハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン。……長い。……覚えられそうにない。

まずは冒頭、マンションの壁を伝って聞こえてくる隣人の喘ぎ声に辟易した若い夫婦が、それに触発されておっぱじめるワケでもなく、耳栓をして眠りにつこうとすると、どうにも眠れない夫アトリ(ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン)はベッドから抜け出し、かつての恋人とのセックスを撮影したビデオをPCでこっそり観るのです。そしてその現場を、妻アグネス(ラウラ・ヨハナ・ヨンズドッテル)に見つかってしまいます。見苦しく取り繕うアトリ、愕然とするアグネス。アグネスに三行半をたたきつけられたアトリは家を追い出されて、実家に帰るほかなくなってしまいます。

しかし、これは本作のサブ・プロット。物語の本筋とは直接には関係ありません。それでも、さまざまな事情を抱えて生きている登場人物たちののっぴきならない感情を象徴するようなエピソードになっています。マンションの住民を悩ませる喘ぎ声の主が誰なのか、ビデオを観ていたことを決して謝らないアトリが「これは浮気じゃない」と言い続ける理由などは、徐々に理解できるようになっていて、とても巧みだな思いました。

アグネスに家を追い出されたアトリは、アグネスを職場まで追い回し、果ては幼稚園にいる娘を勝手に連れ出したりもします。アグネスとの不仲の原因は滑稽だけど、彼の行動は常軌を逸したDV夫のそれでしかありません。『ジュリアン(17)』のような社会派映画を観ているよう。

アトリが身を寄せたのは、父バルドウィン(シグルヅル・シグルヨンソン)と母インガ(エッダ・ビヨルグビンズドッテル)が暮らす実家。アトリには兄がいましたが、行方不明でもはや死んでいると思われています。母インガはそのことに精神的ショックを受けているようすで、いつも赤ワインをのんでいます。

で、バルドウィン&インガの家の庭には、立派な樹が植えられているのですが、彼らの隣に住むコンラウズ(ソウルステイン・バックマン)エイビョルグ(セルマ・ビヨルンズドッテル)の夫婦の庭に影を落としていたのでした。エイビョルグが庭で日光浴をしようとしても、その樹がつくる影が邪魔になるのです。なにしろ日照時間が短いアイスランドでは、日光は貴重なのです。

夫のコンラウズはできるだけ穏便に隣人のバルドウィンに対して、せめて木の枝を剪定してほしいと申し出て、バルドウィンもそれなりに納得し、庭師に剪定を依頼します。しかし、事件が起きるのです。バルドウィンの車のすべてのタイヤが何者かによってパンクさせられます。そこですぐさまインガは、隣のエイビョルグの仕業だと根拠もなく断定します。口汚くエイビョルグを罵るインガ。それに反応してやはり口汚く対抗するエイビョルグ……。

ま、些細な隣人トラブルが大変なことになっていくお話なのですが、つねにトラブルのトリガーになっているのは頭がイカれたインガばあさんなので、この人さえいなければ……もしくは夫のバルドウィンが妻の異常性に向き合っていればこれほど大事にはならないんじゃないの? とは思います。

やがて、インガばあさんの飼い猫が行方不明に。長男の行方不明によって精神が崩壊しているインガばあさんは、さらに追い詰められて、猫をさらったのは隣人のエイビョルグだとやはり無根拠に判断。とんでもない行動に出ます。エイビョルグが買っている犬を連れ出し、なんと、剥製にしてしまうのです。生きている犬を殺してわざわざ剥製にするという施設がどういう施設なのかわかりませんが、とにかく、インガばあさんは剥製にした犬をエイビョルグ宅の玄関にあてつけで放置するのです。

まあ、怒りますよね。ていうか、驚きますよね。ここから物語は急激にエスカレート。完全にたがが外れます。怒り狂ったエイビョルグの夫コンラウズは、チェーンソーで因縁の樹を切り倒そうとします。騒音に気づいてかけつけたバルドウィンともみ合いになり、バルドウィンに押されたコンラウズがもたれかかった樹が倒れ、コンラウズを見張るために樹の下のテントで眠っていたアトリの上に……。

つまらない隣人トラブルは最悪の事態を迎えますが、それでも気が済まないバルドウィンはコンラウズ宅に侵入し、修羅場。戦い合ったふたりはともに命を失います。この隣人トラブルの元凶であるインガばあさんが、ひとり窓辺でタバコをふかしていると、いなくなったはずの飼い猫がしらっと戻ってくるという、皮肉な結末でした。

先にも述べたように、すべての隣人トラブルのきっかけをつくっているのはインガばあさんなので、さまざまな小さなすれ違いや猜疑心の積み重ねが雪だるま式に惨事を巻き起こすというほど、巧みな脚本ではありませんでしたが、登場人物が抱える問題を均等に描き、人にはそれぞれの事情があるんだけれど、それを配慮できない世知辛さみたいなことは十分に伝わりました。とにかく、男性がだらしなくて頼りにならないのが現代的。こういった、しょーもないことの積み重ねが人を生きづらくさせているのでしょう。







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