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ゴールデン・リバー

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(原題:The Sisters Brothers 2018年/アメリカ・フランス・ルーマニア・スペイン合作 120分)
監督/ジャック・オーディアール 製作/パスカル・コーシュトゥー、グレゴワール・ソルワ、ミヒェル・メルクト、マイケル・デ・ルカ、アリソン・ディッキー、ジョン・C・ライリー 原作/パトリック・デウィット 脚本/ジャック・オーディアール、トーマス・ビデガン 撮影/ブノワ・デビエ 美術/ミシェル・バルテレミ 衣装/ミレーナ・カノネロ 編集/ジュリエット・ウェルフラン 音楽/アレクサンドル・デスプラ
出演/ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッド、レベッカ・ルート、アリソン・トルマン、ルトガー・ハウアー、キャロル・ケイン

概要とあらすじ
「ディーパンの闘い」「君と歩く世界」「真夜中のピアニスト」などで知られるフランスの名匠ジャック・オーディアール監督が初めて手がけた英語劇で、ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッドという豪華キャストを迎えて描いた西部劇サスペンス。2018年・第75回ベネチア国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞した。ゴールドラッシュに沸く1851年、最強と呼ばれる殺し屋兄弟の兄イーライと弟チャーリーは、政府からの内密の依頼を受けて、黄金を探す化学式を発見したという化学者を追うことになる。政府との連絡係を務める男とともに化学者を追う兄弟だったが、ともに黄金に魅せられた男たちは、成り行きから手を組むことに。しかし、本来は組むはずのなかった4人が行動をともにしたことから、それぞれの思惑が交錯し、疑惑や友情などさまざまな感情が入り乱れていく。(映画.comより



彷徨う中年型ロードムービー

豪華キャストでありながら非常に公開規模が小さい(都内で1館だけ)『ゴールデン・リバー』。とてももったいないな〜と思います。むしろ公開されただけでも喜ぶべきなのでしょうか。「決して手を組むべきではなかった4人の一攫千金ウエスタン・サスペンス」という惹句は完全にミスリードで、欲に駆られた男たちの壮絶な争いを想像して観に行くと期待外れになるし、しっとりした人間ドラマが好きな観客の目を背けてしまいます。『ゴールデン・リバー』という大型犬みたいな邦題もまったく記憶に残らない、ふわ〜っとした印象で、ええと、あの映画なんだっけと思い出すときに、巡り巡って「ゆりやん」にたどりつきそうな気がします。姉妹か兄弟かどっちやねんな原題の「シスターズ・ブラザーズ」のほうがよほど魅力的だったのではないでしょうか。

それはさておき、フランス人のジャック・オーディアール監督が西部劇を撮るというのがまず面白い。全員が主役を張れるだけの実力を持つ4人の俳優が一堂に会すると、玉突き事故を起こすんじゃないかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。さすが名優揃い。なかでも中心になっているのが、みんな大好きジョン・C・ライリーというのがいい。

冒頭、暗闇の中で突如始まる銃撃戦。これがめっぽうカッコイイ。銃のことに詳しくないのですが、本作の銃声は重くて太く、ズシンとくる感じが特徴で、恐怖をあおります。このシーンで、「シスターズ・ブラザーズ」であるチャーリー(ホアキン・フェニックス)との冷酷さと、火がついた納屋の馬を気遣うイーライ(ジョン・C・ライリー)の優しさが表れています。

殺し屋として名を馳せる「シスターズ・ブラザーズ」は、提督(ルトガー・ハウアー。気づかなかった!)の命を受けて、モリス(ジェイク・ギレンホール)が追っているウォーム(リズ・アーメッド)という化学者を始末するための旅に出るのです(モリスは殺しができない)。追うといっても、現代と違って2〜4日の時間的開きがあるのがのんびりしていて面白い。道を尋ねても「○○どっち?」「あっち」「距離は?」「2日かな」てな感じ。それで追いつくんだから凄い。

「シスターズ・ブラザーズ」のロードムービーは、チャーリーとイーライがじゃれ合ったり、喧嘩したりの珍道中。粗暴なチャーリーは提督の信望が厚く、コンビのリーダーシップをとっていますが、酒癖が悪いのが難。イーライは女教師にプレゼントされたショールの臭いを嗅いで心を癒やすロマンチスト。互いの髪を切ってやったり、片方が体調を崩すと片方が介抱したりと、兄妹ならではの切っても切れない仲の良さを感じます。歯磨きしたり、水洗トイレにはしゃぐジョンCが可愛い。

かたや、ウォームとモリスのコンビは理知的で、本来ウォームを捕まえなければならなかったモリスは「野蛮な世界を終わらせ、民主主義的な理想郷を作りたい」というウォームの計画に共感し、行動を共にするように。ふたりのイニシャルから「W&M(上下を逆さにしてもW&M)」という会社を作る夢を抱いて意気投合します。そもそもウォームが追われる身になった理由は、化学者の彼が川の中から黄金を見つけやすくする薬品の化学式を発見したから。といっても、それがどんな薬品で、どういう理屈で黄金が見つけやすくなるのか、ボクにはさっぱりわかりませんけど、とにかくその薬品を使えば黄金がザックザック採れるのです。ウォームはその黄金を理想郷建設の元手にしようとしていたのです。

ついに一堂に会した4人。シスターズ・ブラザーズを追ってきた刺客を撃退したあと、黄金を山分けすることで合意した4人は仲間になるのでした。それはすなわち提督を裏切ることになるので、彼らには次から次へと刺客が送られることになり、最後は彼らが提督を殺すほかなくなるのですが。なんだかんだと少しずつ仲良くなり、作業に励む4人が微笑ましい。彼らの共通点は父親に対する嫌悪でした。とくにチャーリーは暴力的な父親を殺しており、イーライは「兄である自分が殺すべきだった」と後悔しています。父親は権力の象徴。彼らは形は違えど自由を求める姿に共感したのかも知れません。

ついに黄金採取の夜。堰き止めた川に薬品を撒くときらきらと黄金が光り始めます。4人は喜び勇んで黄金をすくい上げますが、この薬品がかなりの劇薬ですぐに洗い流さないと皮膚がただれてしまいます。しかし、「残りの薬も全部いれちまおう!」と興奮したチャーリーが手を滑らせて薬品が入ったタンクをぶちまけ、下流にいたウォームとモリスが大量の薬品を浴びてしまうことに。2人は死に、チャーリーも右腕を失うことになってしまいます。

ついに提督を殺さんと乗り込むと、すでに提督は死んでいたという肩すかし。もう追われることもなくなったシスターズ・ブラザーズは、母親が暮らす実家へと戻るのです。2人の息子を迎え入れる母親の姿に感涙必至。ふたりは母親が作った料理を食べ、風呂に入り、かつて暮らした家を懐かしみます。窓からはイーライを労うような優しい光が差し込んでいます。

中年ど真ん中の男たちが、残された人生の生き方を巡る物語でもあります。あるものは理想を追い、あるものは友を求め、あるものは権力をうかがい、あるものは穏やかな暮らしを夢見ています。中年というやつは、このように人生を見つめ直すお年頃でもあるので、共感する人(男性?)は多いのではないでしょうか。

砂漠から突如として海が広がるシーンが壮観でした。男臭いのは確かだけれど、決してマッチョではない穏やかな映画です。







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