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COLD WAR あの歌、2つの心

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(原題:Zimna wojna 2018年/ポーランド・イギリス・フランス合作 88分)
監督/パベウ・パブリコフスキ 製作/ターニャ・セガッチアン、エバ・プシュチンスカ 脚本/パベウ・パブリコフスキ、ヤヌシュ・グロワツキ、ピヨトル・バルコフスキ 撮影/ウカシュ・ジャル 美術/カタジーナ・ソバンスカ、マルセル・スラビンスキ 編集/ヤロスワフ・カミンスキ
出演/ヨアンナ・クーリグ、トマシュ・コット、ボリス・シィツ、アガタ・クレシャ、セドリック・カーン、ジャンヌ・バリバール、アダム・フェレンツィ、アダム・ボロノビチ

概要とあらすじ
ポーランド映画で初のアカデミー外国語映画賞に輝いた「イーダ」のパベウ・パブリコフスキ監督が、冷戦下の1950年代、東側と西側の間で揺れ動き、時代に翻弄される恋人たちの姿を、美しいモノクロ映像と名歌で描き出したラブストーリー。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。ポーランドの音楽舞踏学校で出会ったピアニストのヴィクトルと歌手志望のズーラは愛し合うようになるが、ヴィクトルは政府に監視されるようになり、パリへと亡命する。夢をかなえて歌手になったズーラは、公演活動で訪れたパリやユーゴスラビアでヴィクトルと再会。パリで一緒に暮らすが、やがてポーランドに戻ることに。ヴィクトルは彼女の後を追ってポーランドも戻るのだが……。(映画.comより



オヨヨ〜♪

『イーダ(13)』のパベウ・パブリコフスキ監督の新作『COLD WAR あの歌、2つの心』。「COLD WAR=冷戦」ですから、さぞかし重苦しい映画だろうと覚悟しておりました。たしかに東西の分断とスターリニズムの台頭が主人公たちの生き方に大きな影響を与えているのは間違いありませんが、それはあくまで背景に過ぎず、美しくも激しい愛と音楽の映画でした。

ピアニストのヴィクトル(トマシュ・コット)は、ポーランドの農村に伝わる民族音楽の記録を残すべく、歌や演奏を録音して回る旅をしておりました(というのは映画を観ててもよくわからなかったけど、あとで調べてわかりました)。のっけから聞こえてくるフォークロアな楽曲の数々(マズルカというんだそうな)がどれも魅力的です。やがてヴィクトルたちは音楽舞踏学校を設立して、歌や踊りの才能がある若者を募るのでした。そのオーディションにやってきたのがズーラ(ヨアンナ・クーリグ)。ヴィクトルは一瞬でズーラに魅了されてしまいます。ズーラに扮するヨアンナ・クーリグは、美しいのはもちろんのこと、劇中の歌もすべて自分で歌っているという才人です。

トラブルメーカーと言われるズーラは、父親を包丁で刺した罪で執行猶予中。激しい性格の持ち主なのは間違いありません。それもまた彼女の魅力なのでしょう。ついにヴィクトルとズーラの恋の炎が燃え上がり、初めてのキスを激しく交わすシーンでは、ズーラはしっかりと目を開けてヴィクトルを見つめていて、彼女の気の強さが表れています。

しかし、スターリンによる恐怖政治の影響が強まってくると、音楽舞踏学校に対しても圧力がかかり、指導者スターリンを称えるようなプロパガンダ・ソングを歌えと言われるように。権力にすりよることを厭わないカチマレク(ボリス・シィツ)によって当局の要望は受け入れられることになりますが、純粋に音楽が好きなヴィクトルはこれをよしとせず、西側に亡命することを決意するのです(この時代、まだベルリンの壁は建設されておらず、移動は容易だったとか)。もちろん、ズーラと共に。

しかし、ヴィクトルが指定した待ち合わせ場所にズーラは来ないのです。ズーラが行きたくても行けないようななんらかの障害があったわけではありません。彼女は自らの意志でヴィクトルとの亡命に合意できなかったのです。分かちがたく愛し合った2人が政情に翻弄され、理不尽な別れを強いられながらも決してその愛は揺るがない物語……ではないのです。これが本作の一筋縄ではいかないところ。

フランスとポーランドに分かれて暮らす2人は、それぞれに新しい恋人を作り、ズーラにいたっては結婚もしています。にもかかわらず、再会すると再び恋の炎が燃え上がるのです。それなら、もうずっとふたりで暮らせばいいじゃんと思うのですが、話はそう簡単ではなく、パリで同居してジャズのレコードを作り始めたヴィクトルとゾーラは、おもにズーラの「所有物にされたくない」という思いによってまたしても滅裂。ズーラは再びポーランドへと戻ってしまうのでした。

さすがにこれでふたりの恋は終わりだろうと思いきや、スパイとして囚われ15年の刑を食らったヴィクトルに面会に来たズーラは「なんとかする」といい、あろうことか政治家と近しいカチマレクと結婚して子供まで授かり、ヴィクトルを釈放させるのでした。そのうえで「私をここから連れ出して」とヴィクトルにいうのです。なんなんでしょうか、これは。愛する人のために貞操を……とかいう考えすら陳腐に思える、この2人だけが共有する愛の形です。まあそれは、おもにズーラの奔放さに由来するのですが。

スタンダードサイズの画面に映し出される白黒の映像は、被写体を画面の下半分に収めたりする独特の構図が非常にスタイリッシュで美しいのですが、音楽映画としても秀逸で、多くのシーンで音楽が流れ、それが民族音楽からジャズを経てビル・ヘイリーの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」というロックンロールが登場するまでの時代の変遷を映し出しているところが素晴らしいです。ズーラがオーディションで披露した、ソビエトのミュージカル映画のなかで歌われていた『心』という曲がやがて「オヨヨ〜」が印象的な『2つの心』という曲へと繋がる構成も巧みでした。

ヴィクトルとズーラのモデルとなったのはパブリコフスキ監督の両親だそうで(『イーダ』のモデルはおばあちゃんだとか)、エキセントリックな母親にヨーロッパをあちこち連れ回された監督はさぞかし大変だったろうなと思います。でも、それをネタにして映画を撮れたんならいいのかも? 長大な物語になりそうなところを88分という上映時間に収めたのもナイス。とにかく音楽にうっとりする作品です。







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