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素敵なダイナマイトスキャンダル

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(2018年/日本 138分)
監督・脚本/冨永昌敬 原作/末井昭 製作/川城和実、太田和宏、古川博志 撮影/月永雄太 照明/藤井勇 録音/菊池信之 音響/山本タカアキ 美術/須坂文昭、北岡康宏 装飾/須坂文昭 編集/田巻源太 音楽/菊地成孔、小田朋美
出演/柄本佑、前田敦子、三浦透子、峯田和伸、松重豊、村上淳、尾野真千子、中島歩、落合モトキ、木嶋のりこ、瑞乃サリー、政岡泰志、菊地成孔、島本慶、若葉竜也、嶋田久作

概要とあらすじ
実母がダイナマイト心中を図ったという強烈な体験を持つ雑誌編集者・末井昭の自伝的エッセイを柄本佑主演、「パビリオン山椒魚」「南瓜とマヨネーズ」の冨永昌敬監督によるメガホンで映画化。母・富子が隣家の息子とダイナマイトで心中した末井青年。18歳で田舎を飛び出し、昼は工場勤務、夜はデザイン学校という生活から、看板会社への就職、そしてエロ雑誌の世界へと足を踏み入れる。表紙デザイン、レイアウト、取材、撮影、漫画と、あらゆる業務をこなしながら、編集長として「立て!男のエキサイト・マガジン」をキャッチフレーズに雑誌「NEW SELF」を創刊。カメラマンの荒木ら精鋭たちがメンバーとして集い、雑誌は軌道に乗るが、わいせつ文書販売容疑で発禁となってしまう。柄本が主人公の末井役を、尾野真千子が母・富子役を演じるほか、前田敦子、三浦透子、峯田和伸、松重豊、村上淳らが出演。(映画.comより



あるようでない、ないようである

エロ本界の革命児・末井昭
自伝的エッセイを映画化した
『素敵なダイナマイトスキャンダル』

末井昭の半生と
彼が手掛けた雑誌の舞台裏が網羅されている本作。
『New Self』『ウイークエンドスーパー』あたりは
記憶にないのですが、
じつは今でも『写真時代』を2冊持っております。
ヘアヌードが世間を賑わすはるか前、
少年の股間を鷲づかみにする雑誌は多くありましたが、
なかでも『写真時代』の過激さと下世話さは
飛び抜けておりました。
しかも、名だたる新進気鋭の作家たちが寄稿していて、
ただのエロ本には収まらない雑誌でした。

警察署で松重豊扮する警官に
『写真時代』のわいせつな部分に対する指摘を
のらりくらりとかわす末井(柄本佑)
(本作の登場人物たちは、なぜかみんなメガネが汚れている)
こんな嫌らしい雑誌をつくって
お母さんに申し訳なく思わないの?
なんて説教されているところから
末井の幼少期へと遡ります。

なんといっても凄いのは
末井の母親(尾野真千子)が隣家の息子と不倫した挙げ句、
ダイナマイトで心中しているという事実。
自殺の方法にもいろいろあると思いますが、
ダイナマイトで爆死というのは並大抵の決意ではないでしょう。
末井は母親のダイナマイト心中に囚われているようでもあり、
無頓着なようでもありますが、
全編を通じて末井の真意は不明のままです。
それはともかく、結核を患った母親を演じる尾野真千子が
絶妙に色っぽい。
病人だからか、ほつれた髪がさらに色気を後押ししているし、
帯に挟んだダイナマイトがかっこいい。

成長して上京した末井は
過酷な工場勤務を経て青山デザイン学校へ入学。
少しずつデザイナーとしての道を歩み始めるのです。
折も折、旭日旗のような放射線を多用する末井のデザインは
横尾忠則や栗津潔の影響をもろに受けた作風。
ていうか、この時代のグラフィックデザインというのは、
イラストレーションや現代美術との境界が
曖昧だったように思います。
やがて末井は、キャバレーやピンサロの看板や
エロ雑誌のイラストを描くようになり、
流れに任せてエロの方向へと進んでいきます。
決して確固たる信念を持ってエロに挑んでいたわけではないのが
人生の機微であり、面白い。
どうも末井は、こだわりがあるようでない、
ないようである
、とらえどころがない不思議な人物です。

しかし、それで名をなすまでに至ったというのが
末井の胆力であり才能なのでしょう。
峯田和伸が演じる同僚が
持ち前のセンスを活かすことができずに
職を辞してしまう
のとは対照的ですが、
勝ち組・負け組と安易に仕分けられるものでもありません。

いつしか末井は、いちデザイナーから編集長へ。
雑誌がどんどん売上を伸ばす一方、
お上の目も厳しくなってきます。
いかにも80年代アイドル風な顔立ちの
愛人(三浦透子)
ができたと思ったら、
その女性が精神を病んで暴走。
先物取引に手を出して負債を抱えます。
そんな乱気流にのったかのような末井の人生の背景で、
写植の切り貼り、版下づくり、ペーパーセメントなどなど
DTP以前の組版作業が忠実に再現されているのも見どころ。
DTPはレイアウトや文字修正の作業を楽にしてくれましたが、
その反面、いくらでも直せることができるため、
編集者やライターの劣化を招き、
結果的にデザイナーやレイアウターの負担が
増えていると思います。

後半、唐突にサックスを吹き始める頃から
末井は得体の知れない怪物のようになっていきます。
時はバブルまっただ中。
イケイケどんどんで金銭感覚が麻痺している末井は
ポケットの小銭を「重いから」という理由で
道ばたに捨てるのです。
(実話)
やがて『写真時代』も廃刊となり、
エロに見切りを付けた末井が作ったのが
『パチンコ必勝ガイド』
そして、なぜか女装してTVCMに出演するのです。

タトゥもそのままに荒木経惟に扮した
菊地成孔のいかがわしさもよかったけれど、
でたらめな生活をし、愛人騒動まで起こしているのに
内職を手伝ってくれる
前田敦子が演じた末井の妻も魅力的でした。
エンドロールでは、尾野真千子と末井本人による
決してうまいとはいえないデュエットが。

結局、末井にとって
母親のダイナマイト心中がどのように影響しているか
わかりませんが、
『カリフォルニア・ドリーム』をバックに
末井と愛人・笛子がボートでデートしているシーンから
シームレスに母親が不倫相手と心中する直前に移行する
のをみると
この母と息子の間には抗いがたい因果が存在するのだと
いっているように思えます。

そして最後、スクリーンのど真ん中に映倫マーク。
気の利いた幕引きでした。





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コメント

尾野真千子と末井昭によるあの歌の、荒涼&切なみが大好きです。
一時は毎日のように聞いてキュアされていました.....

非常に特異な体質の一方的なカミングアウト。
通り魔ざます。さーせん。


2018/11/02 (金) 00:36:41 | URL | 朕です #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 朕さん
コメントありがとうございます。
確かに、決してうまいとはいえないあの歌からは
不器用な愛情や生きづらさを感じますね。
毎日聴くのは辛そうだけど。

2018/11/02 (金) 08:42:01 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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