" />

RAW 少女のめざめ

raw.jpg



(原題:Grave 2016年/フランス・ベルギー合作 98分)
監督・脚本/ジュリア・デュクルノー 製作/ジャン・デ・フォレ、ジュリー・ガイエ、ナディア・トリンチェフ、ジャン=イブ・ルバン、カッサンドル・ワルノー 撮影/ルーベン・インペンス 美術/ローリー・コールソン 衣装/エリーズ・アンション 編集/ジャン=クリストフ・ブージィ 音楽/ジム・ウィリアムズ
出演/ガランス・マリリエール、エラ・ルンプフ、ラバ・ナイト・ウフェラ、ローラン・リュカ

概要とあらすじ
2016年・第69回カンヌ国際映画祭で批評家連盟賞を受賞した、フランス人女性監督ジュリア・デュクルノーの長編デビュー作品。厳格なベジタリアンの獣医一家に育った16歳のジュスティーヌは、両親と姉も通った獣医学校に進学する。見知らぬ土地での寮生活に不安な日々を送る中、ジュスティーヌは上級生からの新入生通過儀礼として、生肉を食べることを強要される。学校になじみたいという思いから家族のルールを破り、人生で初めて肉を口にしたジュスティーヌ。その行為により本性があらわになった彼女は次第に変貌を遂げていく。主人公ジュスティーヌ役をデュクルノー監督の短編「Junior」でデビューしたガランス・マリリエールが演じる。(映画.comより



そして「富士そば」へ

「失神者続出」というショッキングな惹句で
前評判も高い『RAW 少女のめざめ』
煽りに煽っているわりに公開規模は小さく、
東京での上映は六本木ヒルズのTOHOシネマズのみということで、
よほどのことがない限り赴くことのない六本木という街を
もののついでに散策してみましたが、
巨大なビルが屹立する洗練されたそこはなんとも居心地が悪い。
どこかで昼飯をと思いながらうろつくものの、
あたりを見渡すと一食¥3,000〜¥4,000という価格の店ばかり。
得体の知れぬ殺気のようなものを感じたボクは
這々の体で「富士そば」に逃げ込んだのでした。

そんなことはどうでもいいのです。
少女が大人の女性へと移り変わる過程を
ホラー風味でファンタスティックに描く本作は
2014年のデンマーク映画『獣は月夜に夢を見る(2014)』と
とてもよく似たアプローチの作品でした。
『獣は月夜に〜』は、北欧つながりで
スウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女(2008)』
引き合いに出されたりしていましたが、
魚の加工工場に勤めるヒロインが
いつしか母親の血を引くモンスターとして目覚めるあたり、
本作ととてもよく似ています。

冒頭の一点透視図法的構図の
見飽きた感はさておき、
獣医大学へと進学するジュスティーヌ(ガランス・マリリエール)
親元を離れて学生寮に入る導入がすでに自立の直接的表現。
ジュスティーヌが「神童」と呼ばれているのは、
成績優秀だからかもしれないけれど、
両親が同校の卒業生であり獣医だからであると同時に、
彼女の「血筋」を揶揄しているのでしょう。
優秀な奴が嫌いだと、
ジュスティーヌに理不尽で冷淡な態度を取る教授は
もしかしたら彼女の両親(とくに母親)のことを
知っていたのかもしれません。

学生寮に入ったジュスティーヌが
いきなり覆面をかぶった「先輩」たちから
手荒い洗礼を受けるのも『獣は月夜に〜』と同じ。
仲間入りするためのイニシエーション=通過儀礼です。
その実、新入生歓迎パーティーへとなだれ込むのは
まあ大目にみるとして、
その後も血を浴びせられたり、ウサギの腎臓を喰わされたり、
ペンキだらけにさせられたり
するのは
たかが1〜2年の歳の違いしかないくせに
先輩だの後輩だのと強制される理不尽な主従関係が
心の底から大嫌いなボクにとっては地獄でしかありません。
そういえば、日本にも無理矢理作られた獣医学部がありましたね。
ま、いいか。
先輩たちの仕打ちに耐えることをもってして
大人の仲間入りだとするには
あまりにもこの獣医学部はバカガキだらけのようにみえますが、
とにかく、ジュスティーヌが
閉鎖的で束縛された環境下に置かれていることが重要なのでしょう。
まあ、現実社会が理不尽なことだらけだと思えば
納得できます。

ベジタリアンだったジュスティーヌは
生のウサギの腎臓を先輩たちに食べさせられたことによって
徐々に肉食へと目覚めていきます。
しかも(できれば)人肉を食べたくなるのです。
全体的にみて、失神するほどショッキングなシーンは
ありませんでしたが、
ジュスティーヌが全身をかきむしるシーン
目を背けたくなるほど嫌でした。
かゆみってね、最強最悪だと思うのよね。痛みよりね。
で、掻きすぎてかさぶたになったところを
女医が剥がしていくのはあからさまに脱皮。
象徴的なモチーフは
わりとわかりやすいかたちで出て来ます。

やはり獣医学部の学生で
ジュスティーヌの姉アレックス(エラ・ルンプフ)
大人しいジュスティーヌと正反対の奔放な性格。
というか、
ジュスティーヌに悪さばかり教え込もうとするアレックスは
まるで悪魔のようですが、
ふたりは不思議な兄弟愛で結ばれているようす。
アレックスがジュスティーヌの陰毛を処理していたとき、
ハサミで切断されたアレックスの中指に
こらえきれずむしゃぶりついた
とき、
ジュスティーヌの食人=カニバリズムは
ついに解放されるのでした。
それをとがめないアレックスもまた
ジュスティーヌと同じ「肉食」だったのです。

同じく体の穴を出し入れする食欲と性欲
つねに相関関係にあり、切っても切れない象徴的行為。
処女のジュスティーヌは性欲にも目覚め、
ゲイのルームメイトとセックスします。
ルームメイトの彼がゲイという設定は
判断が難しいところではありますが、
ふたりの関係は恋愛ではなく、
性欲を満たすための相手ということでしょうか。

成長に伴う肉体の変化について
女性が感じる違和感は
男性のそれとは確実に違うものなのでしょう。
カニバリズムを描いているわけではありませんが
『ワイルド わたしの中の獣(2016)』
ヒロインが抑圧していた野性を解放する物語でした。
男のボクには想像してみるほかありませんが、
女性は皆少なからず、
自分のなかの獣性を感じ取っているのでしょうか。

ラストで、ジュスティーヌの父親が
傷だらけの体をみせ、
ジュスティーヌの母親もまた
「肉食」だった
ことがわかります。
母親がジュスティーヌをベジタリアンとして育てたのは、
過保護な育児のメタファでもあり、
ジュスティーヌの「目覚め」させないための
親心だったのでしょうが、
特別な食人女系家族の物語に落とし込む結末は
テーマを矮小化させているような気が
しないわけではありません。
父親の傷の程度もイマイチ中途半端に感じました。

でもまあ、本来、男(オス)は
このくらいの扱いのほうがいいのかもしれませんけど。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ