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クソすばらしいこの世界

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(2013年/日本 78分)
監督・脚本/朝倉加葉子 撮影/木津俊彦 編集/洲崎千恵子 音楽/森野宣彦
出演/キム・コッピ、大畠奈菜子、北村昭博、しじみ、甘木ちか、阿部友保

概要とあらすじ
今回が長編デビューとなる女性監督・朝倉加葉子が、「息もできない」の韓国人女優キム・コッピを主演に迎え、ロサンゼルスの片田舎を舞台に描く本格スラッシャーホラー。ロサンゼルスに留学してきた韓国人のアジュンは、日本人留学生たちに誘われキャンプにやってくるが、英語も話せず、酒やドラッグに溺れて遊んでばかりの彼らに苛立ちを覚える。そんな時、冷酷な殺人鬼がコテージを襲撃し、アジュンは惨事に巻き込まれる。共演に「ムカデ人間」の北村昭博ら。(映画.comより)



今すぐ、スピード・ラーニング!

「本日は『クソすばらしい…』の上映にお越しいただき…」
「約10分間の予告編に続いて、『クソすばらしい…』」

と、場内アナウンスで「クソすばらしい」を連呼しなければならない
ポレポレ東中野のスタッフに同情しながら
よく笑わずに言えるもんだと感心もするのです。
もし僕なら、「クソすばらしい」につられて
「クソお客様のご迷惑にならないよう、クソ携帯電話の電源を…」などと
決して言ってはいけないと強く意識すればするほど、
間違いなく言ってしまうでしょう。
ま、この程度のタイトルに怖じ気づいているようでは
映画館のスタッフは務まらないのかも知れません。

『クソすばらしいこの世界』
長編デビュー作となる朝倉加葉子監督
企画段階から、スラッシャー(殺人鬼が登場する映画) を撮るなら
アメリカで撮りたかったという意図は
オープニングのだだっ広い自然を捉えたショットを見れば
誰もが納得するでしょう。
おそらくは『悪魔のいけにえ』に端を発するであろう
アメリカの荒涼とした風景が
社会的な秩序より、野性的な本能によって覆われているとともに
人気の無さが、かえって誰かに見られているような
恐怖を呼び起こすのです。

留学という経歴を手に入れるためだけにアメリカにやってきた
全く英語がしゃべれない日本人4人+1人は、
ホラー映画の定番通りに観客の反感を買う乱痴気騒ぎに興じています。
そんなバカグループに人数合わせのためだけにキャンプに誘われた、
韓国人留学生アジュン(キム・コッピ)
一行が目的地に到着した頃には、既に嫌気が差して
早くひとりで帰りたいと思っています。

アメリカにいながらにして、
仲介役となる日本人の女のこを除けば
まともに英語がしゃべれるのはアジュンだけという設定が
この作品のテーマのひとつであるディスコミュニケーション
端的に表していますが
言葉が通じないというのは表面的な問題であって
根本的な考え方からして、アジュンとこの日本人留学生たちとは
決して相容れることはないでしょう。
加えて、登場するアメリカ人たちはなおさらです。

学生たちを恐怖に陥れるアメリカ人一家
一応は、ひとりの「イエロー」に車を目撃されたのが
留学生たちを襲うきっかけになっているものの
行動原理がいまひとつ理解できませんでした。
当然、殺人鬼一家なのだから、行動の動機なんてどうでもいいのですが
(というか、理解できないものであるべきですが)
「イエロー」に見られたという事態に切迫感が感じられず
目に付くものは片っ端から殺すようにしか見えない兄弟(とくに兄)の
行き当たりばったりな行動はいかにも長続きがしそうにないのです。
スラッシャーホラーなんだから、
ごちゃごちゃ言うなと怒られそうですが
登場人物の感情をりかいできるかどうかは
その映画に「ノれる」かどうかの分かれ目になると思うのです。

「イエロー」に目撃される場面も
車の陰に隠れたサスペンス的演出より
弟が店の裏に死体を埋めようとしている最中を
「イエロー」がおしっこをしながら見てしまう、とかのほうが
わかりやすいのではないでしょうか。

また、虐待されているおじさんを除けば
肝心な殺人兄弟のキャラクターが薄いのも残念なところ。
デブとチビとか、マッチョとヤセとか
兄と弟のキャラクターの見た目に差をつけて欲しかったです。

これは、殺人兄弟に限らず留学生たちにも感じたのですが
アジュンに扮するキム・コッピ北村昭博以外の
登場人物たち(とくに日本人の女のこたち)が
一体どんな顔をしているのかわからないのです。
「それは、コッピと北村には見覚えがあるからだ」と言われると
強く反論できないのですが、ははは、
登場人物たちを設定上の言動からしか把握することができず
「この唇は絶対ヤリマンだ」とか
「あのしゃくれ顔が腹立つ」などの顔の印象が全く残らないのです。
クローズアップを多用しろなどと言うつもりはありませんが
やっぱりキャラクターを面白がりたいのです。

そして、おそらく最も賛否が分かれるであろう
まさかの『転校生』的急展開!
この展開をどう評価したらいいのか判断に困るのですが
おそらく観客のほとんどが「ええええ〜??」と心の中で叫んで
この作品の見方に戸惑うはずで、
そういう意味では衝撃的かつ斬新。
その後、突然のメイドコスプレや、
ラストの「転校」のきっかけがよくわからないなど
どんどん論理が破綻していくのですが
もう「転校」しちゃったんだから、
細かいことはどうでもよくなります。

細かいことはどうでもよくなります。
とか言いながら、
オープニングのボンネットに顔を叩きつけるシーンに
スピード感がなく、叩きつけられているように見えないとか、
一番激痛が走るであろう手脚を切断された瞬間で普通のアアア〜など
襲われる人間の叫び声とやられた行為とがシンクロしていないとか
ゴア表現がありながらそれほど痛さを感じないとか
ツッコミたいところは数あれど
ジャンル映画に果敢に挑み、賛否が分かれるとしても
オリジナルな発想を盛り込んだ
朝倉加葉子監督の姿勢と心意気は評価したいところ。

さんざん文句をつけておいて、いまさらですが
この作品全体を酷評する気にはなれず
ホラー映画って難しいなぁと、改めて感じたのでした。





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