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ヴィクとフロ、熊に会う

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(原題:Vic + Flo ont vu un ours 2013年/カナダ 95分)
監督・脚本/ドゥニ・コテ 撮影/イアン・ラガルド 編集/ニコラス・ロイ 音楽/メリッサ・ラバーグ
出演/ピエレット・ロビテーユ、ロマーヌ・ボーランジェ、マルク=アンドレ・グロンダン、マリー・ブラサード

概要とあらすじ
元囚人の女性たちを待ちうける不思議な運命を描き、2013年・第63回ベルリン国際映画祭で、映画芸術に新たな視点をもたらした作品に贈られるアルフレッド・バウアー賞を受賞したカナダ映画。刑務所から出所したばかりの女性ヴィクは、新たな人生をスタートさせようと、友人のフロとともに森の中の小屋を訪れる。ところが、過去が亡霊のように2人につきまとい……。フロ役に「太陽と月に背いて」「野性の夜に」のフランス人女優ロマーヌ・ボーランジェ。カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界三大映画祭で高い評価を受けながらも、日本では未公開だった作品を紹介する「三大映画祭週間2014」で上映。(映画.comより



ここが、熊!!

とてもぶっきらぼうな
『ヴィクとフロ、熊に会う』というタイトルは原題の直訳ですが、
本作に熊は登場しません。
しかし、クライマックスで起こる出来事をシニカルに表現した、
なかなか気の利いたタイトルなのです。

少年がベンチに座ってトランペットの練習をするシーンの後、
スーツケースを引きずるタイトルバックがかっこいい。
本作はドラムとパーカッションを主体とした音楽の使い方もセンス抜群で
これは面白いに違いないと予感させてくれます。
フィックスを多用したカメラワークがスタイリッシュ。

女性刑務所から仮出所した61歳の女性、
ヴィクトリア(ピエレット・ロビテーユ)
彼女がどんな罪を犯したのかは明らかにされませんが、
終身刑だったということから
それなりの重犯罪だとわかります。
ヴィクトリアは叔父さんを頼って森の中の小屋を訪れますが、
彼女の服役中に叔父さんは半身不随になり、
植物人間状態で車椅子生活を余儀なくされていました。
家族が不在の間、近所の少年家族が
叔父さんの世話をしていたのです。
仮出所中のヴィクトリアのもとへは
保護観察官のギヨーム(マルク=アンドレ・グロンダン)
週に2度様子を見にやってきます。

ヴィクトリアが無反応な叔父との生活に孤独を募らせていた頃、
フロレンス(ロマーヌ・ボーランジェ)がやってきます。
ヴィクトリアとフロレンスはレズビアンの恋人同士で
フロレンスもまた服役していましたが、
刑期満了で出所したのでした。
そして始まる束の間の甘い生活。
ただ、フロレンスはバイセクシャルで、
外出しては男性を物色したりもしていました。
フロレンスの外出中には、ヴィクトリアのもとに現れた
マリア(マリー・ブラサード)というやけに人なつっこい女性が
菜園の作り方を教えたりしてくれて、
ヴィクトリアとフロレンス(+叔父)の生活は
とくに問題がないように思われました。

ところが、叔父さんの世話をしていた少年の父親が
叔父さんを施設に入院させると言い始め、
徐々に嫌な雰囲気が漂い始めます。
ギョロ目でデブの父親はヴィクトリアに対する敵対心を募らせていて、
それがヴィクトリアが犯した罪の重さによるものなのかは
はっきりとはわかりませんが、
家族であるヴィクトリアを差し置いて
近隣住民らによって叔父さんを施設に預けることが
法的に認められてしまうあたり、
無性に腹立たしいとはいえ、
ヴィクトリアに対する社会的信用の低さが窺えます。

前科者に対する無理解が感じられるにせよ、
それでもまあ、
偏見に基づく排他的な村社会を描いているのかなと思っていると、
突如、マリーがフロレンスの前に現れ、
木に縛り付けたフロレンスの左足をバットで砕く
一気に不穏な空気が充満します。
どうやらマリー=ジャッキーはかつてフロレンスの犯罪者仲間で
並々ならぬ恨みを抱いており、
復讐するためにフロレンスを探していたのでした。
あとから思えば、ヴィクトリアに近づいてきたときの
親しげな印象が気味悪さを増幅させます。

依存体質のヴィクトリアは
フロレンスとの関係に固執していましたが、
フロレンスはヴィクトリアに嫌気が差し始めていて、
ジャッキーから身を隠すためにも
ヴィクトリアとの別れを決意していました。
その間、あくまで対象と一定の距離を保ちながら、
ビジネスライクに接していた保護観察官ギヨークは
徐々にふたりと親密さを増すように。
本作は、あからさまにLGBTに対する中傷や差別が
描写されることはありませんが、
おそらくギヨームはゲイ
(彼が友達がひとりいるというのは恋人のことでは?)
だからこそ彼女たちにシンパシーを感じ始めたのではないでしょうか。

そして、フロレンスの左足のギプスが取れたのを見計らって、
再びマリア=ジャッキーが登場。
帰宅したヴィクトリアとフロレンスの道をふさぐように停められた
ワゴン車が放つ不吉さが尋常ではありません。
不審に思うふたりがワゴン車をよけて通り過ぎようとしたとき、
道路脇に仕掛けられていた熊用の罠を踏んでしまうのです。
ここが、熊!!

もちろん、マリア=ジャッキーの仕業。
直接関係のないヴィクトリアが災難なのはいうまでもなく、
脚ばかりを狙うやり方や
「あたしはほんとに嫌な女なんだよ」と
平常心でいうマリア=ジャッキーの得体の知れなさ、
さらには、それ以上は攻撃せず、
放置したまま立ち去るところが
あっさりしていて、かえってタチが悪い!

枯れ葉にまみれ立ち上がれないふたりのもとに
冒頭のトランペット少年が現れ、
調子外れのショパン『葬送行進曲』を吹きながら立ち去る
ふざけた演出がナイス。

結局、ふたりは熊用の罠に繋がれたまま息絶えてしまいますが、
警察によって運ばれる2体の死体の横を
ヴィクトリアとフロレンスが歩いて去って行くシュールな演出。
地面に横たわったフロレンスがカメラを見つめ、
「終わりね」とつぶやくラストカット
は、
かつて手を染めた犯罪の呪縛から
彼女が解放されたことを意味すると同時に、
文字通り映画の終わりを告げる「Fin」なのでしょう。

エンドロールの唐突なピコピコシンセ音楽の
悪意あるふざけかたも含めて
独特な味わいを持つ「嫌」映画でした。





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