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十九歳の地図

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(1979年/日本 109分)
監督・脚本/柳町光男 原作/中上健次 製作/柳町光男、中村賢一 撮影/榊原勝己 美術/平賀俊一 音楽/板橋文夫 録音/瀬戸厳 照明/加藤勉 編集/吉田栄子
出演/本間優二、蟹江敬三、沖山秀子、山谷初男、原知佐子、西塚肇、うすみ竜、鈴木弘一、白川和子、豊川潤、友部正人、津山登志子

概要とあらすじ
青年が大人になっていく過程の中で、人生や人間というものの孤独や哀しみを知っていく姿を描く。脚本・監督は「ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR」の柳町光男、撮影は榊原勝己がそれぞれ担当。吉岡まさるは十九歳、地方から上京してきて、新聞配達をしながら予備校に通っている。三百軒以上もの玄関に新聞を入れる単調な肉体労働の上に、集金に行けば、どこの家からもうさん臭さがれ、無視される。吉岡は配達区域の地図をつくり、各家々の名を書き込み、犬がいるから×印一つ、花があるから×印二つなどとランクをつけ、それぞれの家に嫌がらせの電話をかけたりしている…(映画.comより抜粋



どういう具合に生きてったらいいのか

『十九歳の地図』をずいぶん久しぶりに観てみたら、
なんにも憶えていなかったので
もしかしたら初見なのでは……と自分を疑い始めるくらい
自分の記憶力に自信がありません。
こんばんわ。どうも、ボクです。

新聞配達員の吉岡(本間優二)
配達先を独自の評価基準で採点し、
×が多い家にはいたずら電話をかけて

一方的に罵ったりすることで荒んだ心を満たしている19歳の少年。
彼がつねに煮えたぎらせている敵意は
彼を冷遇したり攻撃したりする相手のみならず、
まんじゅうに添えた「今朝も配達ごくろうさま」という
彼の仕事をねぎらう善意のメモの書き手にさえ向かいます。
要するに、目につくものはなんでも気に入らないのです。
「俺は右翼だ!」などと叫んでみたりしますが、
吉岡に思想などありません。

東京は王子周辺、滝野川の辺り。
女がスカートの裾をめくり上げて立ちションしているような
最下層の人々が暮らす一帯。
都電荒川線で予備校に通う吉岡は
この街自体に辟易していますが、
彼の失望に拍車をかけていると思われるのが
妻に相手にされない新聞配達所の店主(山谷初男)
37歳にもなって学生から借金をしている紺野(蟹江敬三)の存在。
まったくもって大人の男ってやつに
希望を感じられない状況なのです。

とくに紺野という男は最低のクズで
(それはすなわち映画的には最高なんですけど)
痛さに耐えきれずに刺青を入れるのを途中でやめるような半端者。
そのくせ、彫りかけの刺青を胸元からちらちらとのぞかせては
集金するときの脅しに使うような、どうしようもない男です。
しかし、なぜか憎めない。
紺野は「どういう具合に生きてったらいいのか」と嘆くように
生きるのが下手くそで、どうにも頼りない男ではありますが
誰に対しても攻撃的な態度をとりません。
それが吉岡と決定的に違うところです。
紺野を人間らしくさせるのはマリア(沖山秀子)に対する愛情のみ。
とはいえ、哀れな紺野は
マリアに家具をプレゼントするにしても
ひったくりと空き巣くらいしか思いつかないのですが、
紺野もマリアも互いに愛し合っているというよりは
すがり合って生きているというほうが適切で
人生というやつが一筋縄ではないことを痛感します。
紺野がデビュー戦で敗れたキックボクサーである同僚に
優しく振る舞うのも敗者に対する暖かい眼差しがあってこそ。
(もちろん、そこには自己憐憫も含まれると思いますが)
紺野の生き方は無様ですが、彼なりの誠意と愛情があるのです。

そんな紺野を吉岡は見下しつつ、慕ってもいます。
しかし、依然として
駄々をこねているだけの甘ったれた童貞小僧たる吉岡は
紺野が逮捕され拘留されているあいだに
わざわざマリアの部屋を訪れ、クズだキチガイだと罵倒し、
死ねと罵る
のですが
死にたくても死ねないマリアはさらに嗚咽するのです。

大人が形成する社会の理不尽さに対する不満や憤りは
19歳の少年なら誰しも感じるはずのものですが、
ただ不満を募らせ、実害が及ばないイタズラ電話によって
嫌がらせをするしか能のない吉岡はあまりにも幼稚だし、
彼の脅迫がエスカレートすればするほど
実際にはそんなことができない自分の無能さが
浮き彫りになるだけなのでした。
吉岡が新聞の配達先を基準とした地図を自作するのも
彼が視野狭窄に陥っていることの象徴のように感じ、
これがまさに19歳という年齢の危うさなのかと
思いましたさ。





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