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BUG バグ

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(原題:Bug 2007年/アメリカ 102分)
監督/ウィリアム・フリードキン 脚本・原作/トレイシー・レッツ 撮影/マイケル・グレイディ 音楽/ブライアン・タイラー 美術/フランコ・カルボーネ
出演/アシュレイ・ジャッド、マイケル・シャノン、リン・コリンズ、ハリー・コニック・Jr.、ブライアン・F・オブライアン

概要とあらすじ
息子を亡くし心に深い傷を負ったアグネスは、仮釈放中の元夫ジェリーによる暴力から逃れるためモーテル暮らしをしていた。そんなある日、彼女は友人からピーターという男を紹介される。お互い辛い過去を持つアグネスとピーターは次第に心を通わせていくが、やがて部屋の中に存在する“バグ(虫)”に悩まされるようになり……。「エクソシスト」「フレンチ・コネクション」の名匠ウィリアム・フリードキン監督が放つ衝撃スリラー。(映画.comより



狂って狂って狂ったまんま

シャブ中が禁断症状を訴えるときにみせる
「寄生虫妄想」ってのはよく耳にしますが、
シャブをやっていない人でも、なんとなく心が落ち着かないときには、
スネとか首のうしろとかがむずむずして
気になることってありますよね。

というわけで、ウィリアム・フリードキン監督『BUG バグ』です。
もともとオフ・ブロードウェイの演劇だそうで、
マイケル・シャノンは舞台でも主演を務めているんだとか。
そう聞くと、確かに本作は演劇的。
ほとんどがモーテルの一室のみで繰り広げられる密室劇といっても
過言ではありません。

モーテルでひとり暮らしのアグネス(アシュレイ・ジャッド)の元には
頻繁に無言電話がかかってきます。
その相手は最近出所したらしい元DV夫ジェリー(ハリー・コニック・Jr.)
仕業に違いないとアグネスはにらんでいます。
あの男が戻ってきたら面倒なことになると心配しているアグネスを気遣ってか、
仕事仲間で親友のRC(リン・コリンズ)
ピーター(マイケル・シャノン)という大人しそうな男を
アグネスに紹介するのでした。
スーパーマーケットのタマネギと空のカートのカットが挿入されますが
10年前に6歳になるアグネスの息子が
行方不明になっている
ことを意味しているというのは
あとになってわかります。
レズビアンのRCが子供の親権を巡って争っていて、
やがてそれを勝ち取ったりするのも、
アグネスの喪失感を強調するためかもしれません。

行く当てがないというピーターを泊めてやったアグネスは、
ピーターを警戒しつつも惹かれていき、やがてふたりは結ばれます。
ズームを多用するとても肉感的なセックス・シーンのあと
唐突に挿入されるカマキリのカット。

元夫ジェリーの存在はやっかいだけど、
お互い信頼できるパートナーを見つけたかに思えたのも束の間、
ピーターが「虫がいる」と言い始めます。
ピーター曰く、その虫はアリマキだそうですが、
目視できないほどの小ささ。
しかし、ピーターの腕には確かに虫に噛まれた痕があるようで、
アグネスは彼のいうことをすっかり信じてしまうのでした。

用意された設定がただひたすらエスカレートしていくだけの物語は
意外性に欠け、退屈になりがちですが、
どこまでもストレートに狂気の度を深め、
一度も立ち止まることなく突っ走る
本作に限っては、
そのシンプルな構造こそが魅力です。
湾岸戦争に行き、軍の病院で新薬の実験台にされたが逃亡したというピーターは
虫だ虫だというくせに、それを他人に知られることを恐れ、
部屋に大量の殺虫剤をまき、虫取り紙を吊すように。
やがて、ピーターは生体実験で奥歯に仕込まれた虫の卵嚢が孵ったと言い始め、
自分の奥歯をペンチで抜いてしまいます。

ピーターの被害妄想と強迫観念は留まるところを知らず、
どんどんと壮大な国家的陰謀論へと発展していきます。
嘘(妄想)を正当化するには、より大きな嘘(妄想)が必要なのでしょうか。

とうとう後戻りできないところまで狂ってしまった
ピーターとアグネスは
謎の電波を妨害するために部屋の内部をアルミホイルで覆い尽くします。
すると、ピーターの居場所を突き止めた医師の男が現れて、
ピーターが分裂症で4年間病院に監禁されていたことを告げ、
身柄を拘束しようとするも、ピーターに滅多刺しにされてしまいます。
(映画の始まりで医師の死体が一瞬写ります)
絶叫するアグネスの手を掴み、包丁でえぐった医師の腹部を触らせて
「ほら、ロボットだよ!!」というピーター……。

このあたりからの発狂演技の応酬がすさまじく、
互いに長台詞をまくし立てるのですが、
内容が支離滅裂すぎてまったく理解できないのが恐ろしい。怖い。
すると、なぜか宅配ピザが到着。
「おまえが注文したのか?」「わからないわ!」
即座に食べようとするアグネスを制止してピザを顕微鏡でのぞくピーター。
「だめだ! 毒入りだー!」「ぐわぁーー!!」
そしてついにふたりは全身にガソリンを浴び、着火。
「あっ」というアグネスの一言を最後に
炎に包まれるラストカットが素晴らしい。

怒濤の勢いで狂いまくり、狂ったまんまエンディングを迎えるのですが、
エンドロールのあいだに
行方不明になったアグネスの息子のおもちゃとシャツをとらえたカット
意味ありげに挿入されます。
ピーターを探して現れた医師がアグネスの息子を見つけてやるといったのは、
気休めのようにも聞こえるし、本当のことのようでもあります。
何度も繰り返される空撮は大きな陰謀の存在を示唆しているようでもあり、
迫り来るヘリの音や窓から差し込む強烈なライトははっきりと描写され、
ピーターの妄想なのか、真実なのか、
意図的に曖昧にされています。

ストレートに狂いまくる映画とか言っておきながらなんですが、
結局、無言電話の犯人が誰なのか明らかにされないし、
アグネスの車だけに挟まれていた自動車修理のちらしとか、
謎の部分も多い作品です。
ま、「取り憑かれて」エラいことになるという意味では
『エクソシスト』との共通点もあるかと。





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