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エル ELLE

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(原題:Elle 2016年/フランス 131分)
監督/ポール・バーホーベン 製作/サイード・ベン・サイード、ミヒェル・メルクト 原作/フィリップ・ディジャン 脚本/デビッド・バーク 撮影/ステファーヌ・フォンテーヌ 編集/ヨープ・テル・ブルフ 音楽/アン・ダッドリー
出演/イザベル・ユペール、ローラン・ラフィット、アンヌ・コンシニ、シャルル・ベルリング、ビルジニー・エフィラ、ジョナ・ブロケ、ジュディット・マーレ、クリスチャン・ベルケル、アリス・イザーズ、ビマーラ・ポンス、アルチュール・マゼ、ラファエル・ラングレ、リュカ・プリゾ

概要とあらすじ
「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督が「ピアニスト」のイザベル・ユペールを主演に迎え、「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」の原作者フィリップ・ディジャンの小説「oh...」を実写映画化したエロティックサスペンス。ゲーム会社のCEOを務める女性ミシェルは、ある日突然、自宅に侵入してきた覆面男に襲われてしまう。何事もなかったかのように今まで通りの生活を送ろうとするミシェルだったが、襲われた時の記憶がフラッシュバックするようになっていく。犯人が身近にいることに気づいたミシェルはその正体を突き止めようとするが、自分自身に潜んでいた欲望や衝動に突き動かされて思わぬ行動に出る。第74回ゴールデングローブ賞で最優秀主演女優賞と最優秀外国語映画賞を受賞し、第89回アカデミー賞でもイザベル・ユペールが主演女優賞にノミネートされた。(映画.comより



あらゆる記号化に対するアンチテーゼ

ポール・バーホーベン監督の問題作、とかいうと
問題作じゃないポール・バーホーベンの作品があるのかと
怒られそうですけど、
とにかく挑発的な内容の『エル ELLE』です。
当初はアメリカで制作するはずが、
主演にと声をかけた女優が揃って出演拒否。
ノリノリで快諾したのはイザベル・ユペールだけだったそうですが、
結果、ヒロインのミシェル役は
イザベル・ユペール以外に考えられません。
1953年生まれのユペールはこのときなんと、64歳!!
決して身近にいる60代の女性と比較してはいけません。

本作はいきなり、レイプシーンから始まります。
黒い目出し帽をかぶった侵入者にレイプされたミシェルは
ゆっくり起き上がると割れた食器をかたづけ、
風呂に入り(シャワーではなく湯船に浸かる)
夜にやってくる息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)のために
寿司の出前を注文します。
およそ我々が知っている、もしくは想像する
「レイプされた女性の振る舞い」とはかけ離れた
落ち着きぶり
なのです。
そしてこの冒頭シーンにおける「不可解な」ミシェルの行動が
本作の重要な主張のほとんどを物語っています。

本作は、他者の身勝手なイメージの押しつけと
あらゆるレッテル貼りやカテゴライズを
徹底的に拒否すること
を目的としています。
被害者が被害者らしく泣きわめき、傷つき悲しむ……という
あらゆる記号化に対するアンチテーゼを体現してみせるのがミシェルです。
だからといって、レイプされたあとのミシェルの振る舞いが
レイプ被害者の心理的な真実を代表しているわけではないし、
ましてやレイプ被害者はこのように振る舞うべきだと
啓蒙しているわけではありません。
ただ、「被害者像」を勝手に押しつけるなと主張しているのです。
それがもっとも象徴的に表れているのが
ミシェルが友人にレイプがあった事実を伝えるシーン
字幕ではニュアンスが伝わりませんでしたが、
「どうもレイプされたっていうことらしいんだけど」(by 高橋ヨシキ氏)
という遠回しな表現を使っているそうです。
それは告白しづらい事実だからではなく、
それを言った途端に「被害者」として認知されるのを嫌がったからですが、
恐れたとおり、友人たちはレイプという言葉に対する典型的な反応を示したため、
ミシェルは辟易としてしまうのです。

ミシェルが特別な「強い女性」で
レイプされてもへっちゃらというわけではありません。
再びあるかもしれない次の襲撃に備えて
窓の鍵を取り替え、催涙スプレーや武器を用意するし、
レイプされそうになって返り討ちにするのを妄想したりもします。
当然、ミシェルはレイプを許容しているわけではなく、
あくまで情緒的なだけの無意味な行動をとらないだけなのです。
それは、彼女の宗教キチガイの父親が引き起こした大量殺人事件の際に
警察やマスコミによって翻弄もしくは蹂躙された経験から
導き出した彼女の哲学なのでしょう。

幼い頃に父親が大量殺人で逮捕され、
「砂かぶりの少女」と名付けられて衆目に晒されたミシェルが
いったいどうやってゲーム会社の社長にまで上り詰めたのか疑問ではありますが、
これとて殺人犯の子供が社会的に成功するはずがないという
バイアスがかかっているかもしれません。
とにかく社長であるミシェルが経営するのが
エロゲーの制作会社という、念の入れ方が素晴らしい。

それにしても本作に登場する男たちは
軒並み役に立たないクズばかり。

とりわくミシェルの息子ヴァンサンのダメっぷりは見事です。
ちんけなヤクの売人をやめてやっと就いた仕事はファーストフードの店員。
にもかかわらず、お腹の大きい彼女と新居を借りるためには
ミシェルのスネをかじるほかなく、
生まれてきたのはあきらかに黒人の血を引く子供だったりして、
ことごとくどうしようもないバカなのです。

やがて、ミシェルを襲った犯人が判明します。
それは、向かいの家に住むパトリック(ローラン・ラフィット)だったのですが、
ミシェルはそれまでにパトリックを誘惑したり、
双眼鏡で覗いてオナったりしていたのでした。
パトリックはまんざらでもなさそうだし、
友人のパートナーともヤッてるミシェルだし、
不倫がどうしたとかいうまえに気が合うんならいいんじゃないのと思いますが、
問題は、このパトリック。
レイプというか、DVしないと興奮しないド変態だったのです。

パトリックの特性をそれなりに受け入れたミシェルでしたが、
暴力を伴う逢瀬はそう上手くいかず、
ミシェルをレイプ中のパトリックをヴァンサンが殺してしまいます。
警察嫌いのミシェルもさすがに通報。
すべて一段落したあと、
転居しようとするパトリックの妻は
ミシェルに「夫を受け入れてくれてありがとう」と言い残します。
かたや、夫をミシェルに寝取られていた共同経営者の女性は
ミシェルに対して「一緒に住んでもいい?」と持ちかけます。
なんでしょう? この丸く収まってる感じ。

なんせ「エル」=女性というタイトルの映画ですから、
ミシェルという希有な「強い女性」を描いているのではなく、
女性というのはそもそも強いんだということを
これでもかとばかりに念を押す、
さわやかな後味の作品です。







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