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君はひとりじゃない

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(原題:Body/Cialo 2015年/ポーランド 90分)
監督/マウゴシュカ・シュモフスカ 製作/マウゴシュカ・シュモフスカ、ミハウ・エングレルト、ヤチェク・ドロシオ 製作総指揮/ランブロス・ジオタス 脚本/マウゴシュカ・シュモフスカ、ミハウ・エングレルト 撮影/ミハウ・エングレルト 美術/エルビラ・プルータ 衣装/カタリナ・ルウィンスカ、ユリア・ヤルジャ=ブラタニエク 編集/ヤチェク・ドロシオ
出演/ヤヌシュ・ガヨス、マヤ・オスタシェフスカ、ユスティナ・スワラ、エバ・ダウコフスカ、アダム・ボロノビチ、トマシュ・ジェンテク、マウゴジャタ・ハイェフスカ・クシシュトフィク、エバ・コラシンスカ、ロマン・ガンツアルチィク、ブワディスワフ・コバルスキ

概要とあらすじ
2015年・第65回ベルリン国際映画祭で監督賞となる銀熊賞を受賞したポーランド映画で、ポーランドのアカデミー賞であるイーグル賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞した、父と娘の再生を描いた人間ドラマ。病気で母を亡くした娘と検察官の父。心身を病んだ娘は摂食障害となり、日に日にやせていく。喪失感を拭えない父は、検察官として立つ事故現場で人の死に何も感じなくなっていた。埋められない溝ができてしまった父と娘は、お互いを傷つけあった。そんな娘の体を見かねた父は娘をセラピストのもとへと通わせてリハビリをさせるが、そのセラピストによる療法は普通では考えられないものだった。監督はポーランド人女性監督マウゴシュカ・シュモフスカ。ポーランド映画祭2016や15年・第28回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で上映されている。(映画.comより



シニカルでラブリーなヘンテコ映画

ポーランドからやってきた『君はひとりじゃない』
日本ではあたかもハートウォーミングで「泣ける」映画のような
宣伝ビジュアルになっておりますが、
じつは、ミヒャエル・ハネケやロイ・アンダーソン的な風味を持った
シニカルでラブリーなヘンテコ映画です。

検視官のヤヌシュ(ヤヌシュ・ガヨス)
今日も今日とて事件現場に足を運ぶ日々。
木の枝で首を吊った男の死体を地面に降ろし、
ほかの検視官と話をしていると、
死体がむくっと起き上がり、土手を歩いて消えていきます。
面々はそれを呆然と見つめていますが、
それ以降、このエピソードは二度と登場しません。
のっけからキョトンとさせられると同時に
本作がこの世とあの世があいまいに重なり合った世界だと
宣言しています。

8年前に妻を病気で失ったヤヌシュには
オルガ(ユスティナ・スワラ)という娘がいますが、
彼女は母の死以来、摂食障害になり、
やせ細った体に下着のみの格好でいつも部屋でグダグダしています。
オルガは母親の死によって深く傷つき、
父ヤヌシュを憎むようになっていますが、
ヤヌシュもまた妻の死に囚われ続け、
毎日のように死がつきまとう検死官という仕事に疲弊していて、
味覚も麻痺しているようす。
トイレで出産した赤ん坊を殺して逃亡する母親や、
自宅で惨殺された不思議な絵を描く画家など
物語の本筋とは無関係な事件がヤヌシュの精神を蝕みます。

かたや、病院でセラピストをしているアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)
生後間もない子供を亡くして以来、
霊媒師の能力が身についたという中年女性。
セラピストと霊媒師を兼ねるのはやっぱりマズいような気がしますが
それはともかく、
度を超したデカさの犬と暮らすアンナは
マンションで事故死した子供とエレベーターで出会ったり、
霊の言葉を届ける行為で感謝されたりもしています。

症状が悪化したオルガを入院させたヤヌシュが自宅にいると、
突然電気が消えたかと思うと
ステレオから「You'll Never Walk Alone」が大音量で鳴り始めます。
いわゆる「ユルネバ」と呼ばれるこの曲は、
リバプールやセルティックのファンが合唱することで知られ、
日本ではFC東京がそれを真似ていたりしますが
文字通り「君はひとりじゃない」という内容の歌。
(正直に言って、この曲はAメロが恐ろしいほど平板で
 とても名曲とは思えません。
 サビの「ユール・ネーー!・ヴァ・ウォーク」の
 「ネーー!」の部分しか聞き所がないといっても過言ではないです)
そして、時を同じくして
水道管の破裂によってヤヌシュの妻の墓が水浸しになっているという
手紙が墓地から届きます。
これは妻の霊の仕業なのか?
妻の霊は何かのメッセージを送っているのか?

霊の存在などまったく信じていないヤヌシュでしたが、
さすがに気になり始め、
とうとう霊媒師アンナに相談することに。
この間、「ビキニ! ビキニ! ビキニ・デス!」という
謎の曲にのって踊るパンイチのばばあ
が登場します。
(どうやらヤヌシュの彼女らしい)
また、突然アンナの表情が固まったかと思うと
「わっ!」とヤヌシュをびっくりさせるだけのシーンも。
このような、なんだよそれ!と突っ込みたくなる変なシーンが
ちょこちょこ登場するのです。

とにかく、
赤ん坊殺害事件の容疑者の顔がヤヌシュの妻にそっくりだったり、
カフェのウインドウに妻らしき人影が映ったりと、
妻の霊がヤヌシュに近づいてきているような描写が増えていきます。
霊の存在を信じて疑わないアンナが放つ、
他人の意見を寄せ付けない「私だけがわかっている感」
だんだんとイラついてきますがそれはともかく、
アンナから
「空の引き出しに紙と書く道具と奥さんが好きだったものを入れておくと
 直接メッセージが来るわ」
と言われたヤヌシュは
その通りにするも、まったく変化なし。
一瞬でもアンナを信用した自分に腹が立ったヤヌシュは
オルガを退院させます。
しかし、しばらくすると引き出しの中の紙には
ヤヌシュと妻しか知らない事実が書かれていたのでした。

いざ、アンナを自宅に呼び、
それらしい円卓をリビングに運び出して、降霊開始です。
神妙な面持ちで手を繋ぐ3人。
しかし、一向に変化は訪れず、
アンナはヤヌシュが半信半疑なせいだととがめます。
すると引き出しの中のメッセージは私が書いたと言い始めるオルガ。
両親の秘密を母親から聞いていたのかもしれません。
にもかかわらず、アンナは意地になっているのか降霊続行。
すっかり夜が更け、それどころか
白々と朝日が窓から差し込み始めるころになると、
降霊していたはずのアンナが眠気に耐えられずに舟をこぎはじめ、
さらに、いびきをかき始めます。

笑いをこらえきれないヤヌシュが顔を上げると
オルガも涙を流しながら笑っているのです。
なんという、拍子抜けする不思議なエンディングでしょうか。

ずっと意地を張り合い、いがみ合っていた相手と
つい同じことで笑っちゃったときのあの感じ。
わだかまりを一気に氷解させたヤヌシュとオルガは
朝日に包まれながら、新しい日々の始まりを予感させるのでした。



↓これがビキニ・デスだ!
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