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イノセント・ガーデン

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(原題:Stoker 2013年/アメリカ 99分)
監督/パク・チャヌク 脚本/ウェントワース・ミラー 撮影/チョン・ジョンフン 美術/テレーズ・デプレス 編集/ニコラス・デ・トス 音楽/クリント・マンセル
出演/ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グード、ダーモット・マローニー、ジャッキー・ウィーバー、フィリス・サマービル、オールデン・エアエンライク

概要とあらすじ
「オールド・ボーイ」の鬼才パク・チャヌク監督のハリウッドデビュー作で、「プリズン・ブレイク」の俳優ウェントワース・ミラーが執筆し、ハリウッド業界人が選ぶ製作前の優秀脚本「ザ・ブラックリスト」2010年版の5位にも選ばれた脚本を映画化したミステリードラマ。外部と隔絶された大きな屋敷に暮らす繊細な少女インディアは、18歳の誕生日に良き理解者だった父親を事故で失う。母とともに葬儀に参列していたインディアだったが、そこへ行方不明になっていた叔父が突然現れ、一緒に屋敷で暮らすことになる。そのことをきっかけにインディアの周囲で不可解な現象が起こるはじめ……。インディアをミア・ワシコウスカが演じ、母親役でニコール・キッドマン、叔父役でマシュー・グードが共演する。(映画.comより)



えらいもんに目覚めたな。

暴力描写に独特の美学を持つ
「復讐三部作」パク・チャヌク監督
ハリウッドデビュー作『イノセント・ガーデン』
復讐の物語ではないにせよ、
(ていうか、復讐にまつわる映画だけを
 作り続けるつもりもないだろうけど)
人間の業や性(サガ)にまつわる物語であることには
違いありません。

とはいえ、この作品の脚本は監督自身の手によるものではなく
「テッド・フォーク」というペンネームの誰かによって描かれたもので
のちにその脚本家の正体が「プリズン・ブレイク」の坊主頭、
俳優ウェントワース・ミラーだと判明するのですが
脚本を読んだ映画関係者に
「こんな展開は一度も読んだことがない」と言わしめるほど
すこぶる評判がよく、また多くの監督たちが
映画化に名乗りを上げるものの、最終的には
パク・チャヌク監督に白羽の矢が立ったということのようです。
ちなみに「テッド・フォーク」というペンネームは
ウェントワース・ミラーの愛犬の名前からとったのだとか。

それほどまでに映画関係者を魅了し、
執筆に8年も費やしたという脚本は
素人の一観客から見ると、それほどの賞賛に値するものとは
思えませんでした。ごめんよ、プリズン。
8年のうち、7年くらいほったらかしにしてたんじゃないかと
邪推したくなりますが
登場人物は少なく、限定された空間で進行する物語は
複雑な人間関係が描かれているわけではなく、セリフも少ないので
この作品の魅力は監督の映像美に負うところが多いように思います。

不穏なイメージをモンタージュしたようなオープニングは
それだけでかっこよく、
とくに、逆光のなかでスカートを風に揺らしながら
ポケットに手を突っ込んでたたずむ
インディア(ミア・ワシコウスカ)のシルエット
不吉な物語の予感と色気を伴って、M心を揺さぶります。
「花は自分の色を選べない」というインディアのナレーションが
さりげなくこの作品のテーマを表していて
このオープニングが、ただのイメージの集積ではないことは
ラストシーンで明らかになります。

毎年、誕生日に父親から
サドルシューズを贈られていたインディアは
屋敷の広い庭園のどこかに隠されているプレゼントを探しています。
途中で彼女の足に水ぶくれができていたのは
去年貰った靴のサイズが成長した彼女の足に
合わなくなっていることの描写ですね。
インディアはプレゼントが入った黄色いリボンの箱
樹の上で見つけますが、そこに入っていたのはサドルシューズではなく
用途が分からない鍵だったのです。
そんな愛する娘の誕生日の当日に
父リチャード(ダーモット・マローニー)は不慮の死を遂げ、
その葬儀に合わせて、長年世界中を旅していたという
リチャードの弟、チャーリー(マシュー・グード)が現れます。

初めて登場したそのときから
余裕綽々の嫌味なニタニタ笑いを絶やさないチャーリーは
あきらかに不信人物です。
そして、その観客の予想は裏切られることはなく、
中盤そうそうに予想は確信へと変わります。
インディアも、最初からひと癖もふた癖もありそうな陰気な印象で
やはり観客の予想が裏切られることはありません。
このへんが脚本に対する絶賛に
首をかしげたくなる理由のひとつなのですが
この作品は、謎解きの要素があるとはいえ、
ミステリーを主眼に置いたものではなく
インディアが少女から大人の女性へと変化していく過程を描いた
成長の物語
なのです。
そう考えると、誕生日に贈られていたサドルシューズは
インディアの本性を拘束するための
纏足(てんそく)の役割を果たしていたのかもしれません。

夫への愛は冷め、娘インディアともなじめない
イヴリン(ニコール・キッドマン)
結果的に見れば、もっとも哀れな存在だと思うのですが
夫が死んだばかりなのに、突如現れたチャーリーにメロメロで
母娘ではなく、女としてインディアと張り合っています。
イヴリンがインディアに髪をといてもらっているシーンでは
母娘の関係が完全に逆転したように見えます。

公式サイトのプロダクション・ノートによると
パク・チャヌク監督は登場人物たちを鳥に喩え、
イヴリンはクジャク、チャーリーは母鳥、
インディアはヒナ
であると語っています。
父と一緒にインディアが狩りで仕留めた鳥の剥製があったり、
その剥製が置かれた巣の中にあった卵にズームアップして
インディアの眼にオーバーラップするトランジションなど
監督の考えを反映した演出が見られます。
となると、彼らが暮らす屋敷は鳥かごなのです。

インディアに最後に贈られた鍵によって
チャーリーの過去が判明するのですが
フラッシュバックされる過去の映像と現在とが交錯し、
突然登場する「三男」の存在に、一瞬頭が混乱しかけたのですが
結果的には、大きなどんでん返しがあるわけでもなく
ちょっと肩すかしをくらいました。
インディアが好きだった父親は、実は父親ではなく、
チャーリーも家族ではなかった!
 というような展開を期待したのですが
そういう裏切りは一切用意されていません。

呪われた血の宿命と共に、性的にも目覚めたインディアは
クラスメイトの男子に対する暴力に快感を覚え
シャワーを浴びつつ、激しくオナニー。
少女から大人の女性への成長、ここに極まれりといった感じでしょうか。

てなかんじで、ミステリーとしての高揚感は少なかったものの
ちょっとやりすぎじゃないか?と思えるほど
映像的なトリックがふんだんに使われていました。
イヴリンとチャーリーが買い物から帰った後、
インディアにアイスクリームを冷蔵庫に仕舞いにいかせるまでの
三人が会話しながらも、三人が揃っていないような
部屋の間取りを利用したシーン
は見事でした。

『ブラック・スワン』のスタッフによる美術と音楽という
ふれ込みだけあって
室内のインテリアや屋敷の庭をはじめとした映像が
美しいのは間違いありません。





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