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ハクソー・リッジ

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(原題:Hacksaw Ridge 2016年/アメリカ・オーストラリア合作 139分)
監督/メル・ギブソン 製作/デビッド・パーマット、ビル・メカニック、ブライアン・オリバー、ウィリアム・D・ジョンソン、ブルース・デイビ、ポール・カリー、テリー・ベネディクト 脚本/ロバート・シェンカン、アンドリュー・ナイト 撮影/サイモン・ダガン 美術/バリー・ロビンソン 衣装/リジー・ガーディナー 編集/ジョン・ギルバート 音楽/ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ
出演/アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ルーク・ブレイシー、テリーサ・パーマー、ヒューゴ・ウィービング、レイチェル・グリフィス、ビンス・ボーン

概要とあらすじ
メル・ギブソンが「アポカリプト」以来10年ぶりにメガホンをとり、第2次世界大戦の沖縄戦で75人の命を救った米軍衛生兵デズモンド・ドスの実話を映画化した戦争ドラマ。人を殺してはならないという宗教的信念を持つデズモンドは、軍隊でもその意志を貫こうとして上官や同僚たちから疎まれ、ついには軍法会議にかけられることに。妻や父に助けられ、武器を持たずに戦場へ行くことを許可された彼は、激戦地・沖縄の断崖絶壁(ハクソー・リッジ)での戦闘に衛生兵として参加。敵兵たちの捨て身の攻撃に味方は一時撤退を余儀なくされるが、負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、たったひとりで戦場に留まり、敵味方の分け隔てなく治療を施していく。「沈黙 サイレンス」「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが主演を務め、「アバター」のサム・ワーシントン、「X-ミッション」のルーク・ブレイシーらが共演。第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門でノミネートされ、編集賞と録音賞の2部門を受賞した。(映画.comより



モヤっとさせる正義のヒーロー

メル・ギブソン監督が10年ぶりに撮った話題作
『ハクソー・リッジ』です。

信仰上の理由から武器を持つことを拒否した衛生兵が
激しい戦いの中、75人もの兵士の命を救う
という、
あまりにもヒロイックで美しすぎるお話なので、
これがフィクションだとしたら鼻白んでしまいそうですが、
なんと実話だというから驚きです。
信仰心の厚い衛生兵デズモンド・ドスを演じるのは、
ついこの前も『沈黙 サイレンス』で日本にやってきてエラい目にあっていた
アンドリュー・ガーフィールド

『プライベート・ライアン』が引き合いに出されたりするほど
ゴア表現がすごいぞと耳にしていたので、
いきなりの戦闘シーンに、
おお! 最初からこの調子でいくのか! と身構えましたが、
そこから時間はデズモンドの幼少期まで遡るので
あっけにとられました。
そして、デズモンドが戦場に赴くまでの過程を
ものすごく懇切丁寧にたっぷりと時間をかけて描いていきます。

デズモンドと弟が昇って遊ぶ切り立った崖
当然ながら「ハクソー・リッジ」との対比を思い起こさせるし、
やがて妻になる看護婦(テリーサ・パーマー)を見初めるときの
コミカルな演出など、予想を裏切るメルギブの繊細な演出。
デズモンドの父親(ヒューゴ・ウィービング)
第一次世界大戦の経験からPTSDを患っているのも重要です。
(ま、事実だからそうなんだろうけど)
とにかく、デズモンドは
喧嘩がエスカレートして弟をレンガで殴ってしまったことにショックを受け、
「汝、殺すなかれ」という聖書の言葉を実直に飲み込んで
兵役志願したあとも、それを実行するのでした。
(ところで、デズモンドより先に弟が志願入隊したのですが
 その後は一切描かれませんでしたな)

デズモンドが入隊したあとも、
同僚たちをひとりひとり丁寧に自己紹介させたり、
下地作りに余念がありません。
鬼軍曹による訓練シーンは
どうしても『フルメタル・ジャケット』が思い浮かびますが
この部隊は『フルメタル〜』よりはかなり雰囲気が穏やか。
しかし、デズモンドが銃を持つことを拒否したために、
当然、一悶着起こるのですね。

まあ、多少の脚色はあるにせよ、
本作で描かれている経緯はなんせ事実なワケで、
こればっかりは文句のつけようがないのですが、
それでもやっぱり
「武器を持たずに戦場に行く」というデズモンドの主張は
手放しで称賛できないモヤっとした感触を残します。
自分の命を省みず、ギリギリまで救助活動を行なったこと自体は
そりゃあもう素晴らしいとしかいいようがありません。
しかし、自分は絶対に「殺し」に加担しないけれど、
自分以外の兵士が武器を手にして敵を殺すのはアリとしてしまうところに
自己中心的な正義感とちょっとしたズルさを感じざるを得ません。
とくに、部隊が撤退したなか、ひとりで救助活動を続けるデズモンドが
負傷した軍曹を毛布かなんかの上にのせて引きずりながら
日本兵から逃走するシーン
では
軍曹はがんがん発砲して日本兵を撃ち殺しているし、
そのおかげで自分が生き延びていることに対して
デズモンドはなんとも思わないのでしょうか。

「神との対話なんてしませんよ。あれはインチキですから」
といっていたわりには
戦場で「私にどうしろと?」と神に問いかけるデズモンドの
善悪や真偽の基準がいまいち釈然としないのには
一貫した狂気のようなものさえ感じます。
『沈黙 サイレンス』のときには文字通りだんまりを決め込んでいた神さまは
本作では「助けてくれ〜」という負傷兵の声を借りて
デズモンドの問いに即答
し、
喜んだデズモンドは嬉々として救助活動を行なうのでした。

戦闘シーンは、噂に違わぬゴア描写が連続するものの、
それ自体を過激だとは思いませんでしたが、アイデアは満載。
死体を盾にして走り回るのはふざけすぎかと思いましたが、
ヘルメットに弾が当たったときの「ちん」という音の軽さ
むしろ恐怖を煽りました。
そして、まさに死屍累々のこの場所が
疑いようのない「地獄」であることを
手に取るように実感しました。
内臓が飛び出し、手足がもぎれる接近戦の壮絶な地獄絵図は
戦争に対する生理的な嫌悪感を喚起させるに十分で、
普遍的な反戦の意図が込められているのは確かです。

ただ、「ハクソー・リッジ(=前田高地)」と名付けられた本作は
沖縄戦の悲惨さを伝えようとするものではなく、
あくまでデズモンドというヒーローの活躍を
讃えるもの
だとも感じました。
最後に挿入される実際の映像も含めて
デズモンドを手放しで称賛するような演出には不満が残りますが
単純に戦争アクション映画として観ればいいのかな、
という気がします。

あと、気になるほどじゃありませんが、
最近の映画にしては珍しいくらいにVFXがチープでしたな。





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