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ビフォア・ザ・レイン

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(原題:Before the Rain 1996年/イギリス・フランス・マケドニア合作 115分)
監督・脚本/ミルチョ・マンチェフスキー 製作/ジュディ・クーニヤン、チェドミール・コラール、サム・テイラー、キャット・ビラーズ 撮影/マヌエル・テラン 美術/シャロン・ロモフスキー、デイヴィッド・マンス 音楽/アナスタシア 編集/ニコラス・ガスター
出演/ラデ・シェルベッジア、グレゴワール・コラン、カトリン・カートリッジ、ラビナ・ミテフスカ

概要とあらすじ
マケドニアを舞台に、ギリシャ正教徒とアルバニア系ムスリム人住民のあいだで高まる緊張を、マケドニアとロンドンを結び、時間軸が複雑に交錯する三つの挿話で描きだすドラマ。監督・脚本のミルチョ・マンチェフスキーはマケドニア出身で、ニューヨークを拠点にミュージック・ビデオやCMを手掛け、これが初の劇場用長編映画になる。製作はジュディ・コウニハン、チェドミール・コラール、サム・テイラー。撮影は「野性の夜に」のマニュエル・テラン、音楽はエスニック音楽グループのアナスタシア。出演は旧ユーゴ出身の国際的名優レード・セルベッジア、「オリヴィエ・オリヴィエ」のグレゴワール・コラン、「ネイキッド」のカトリン・カートリッジ、ほか。94年ヴェネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞。96年度キネマ旬報外国映画ベストテン弟9位。(映画.comより



報復の円環構造

なんせ、
94年ヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞してるんですから
とてもとても評価の高い『ビフォア・ザ・レイン』ですよ。

DVDの特典映像に含まれていた
ミルチョ・マンチェフスキー監督のインタビューによれば
「社会的メッセージを控えめにした」とのことですが、
社会的メッセージなくしてなにを感じ取れというのでしょうか。
マケドニアを舞台にした物語は、
否応なく宗教的対立や民族的対立をベースにしています。

■第1部 「言葉」
時代の判別が困難な修道院で「沈黙の修行」を実行中の
修道僧キリル(グレゴワール・コラン)が床につこうとすると、
見知らぬ少女ザミラ(ラビナ・ミテフスカ)が隠れていました。
とある殺人事件に関わっていたアルバニア人のザミラは、
ここへ逃げてきたのでした。
短髪のザミラはどうみても男の子のようでしたが
どうやら罰として髪の毛を切られたもよう。
キリルはザミラが裸足なのをみて不憫に思ったのか、
彼女をかくまってやりますが、
翌日には、ザミラによって弟を殺されたという男たちが
銃を携えて現れて修道院で傍若無人な振る舞いで威嚇し、
ザミラを捜索するも彼女は発見できず。
遊び半分に屋根の上にいた猫を銃撃する輩。
銃弾にはじけ飛ぶ猫をえげつないリアリティで描写します。
ザミラを伴って夜な夜な修道院を抜け出したキリルは
「ロンドンにいる写真家の叔父に会いに行こう」といいますが、
ザミラを追うムスリム系の親族に捕まります。
ザミラはキリルのことを
「彼はわたしを愛しているの」と説明しますが聞き入れられず、
去って行こうとするキリルを追いかけたザミラは
兄によって背後から銃殺されるのです。
正直に言って、ザミラとキリルがいつ愛情を通わせたのかわからないし、
たとえいかなる対立があろうとも
自分の妹をいともたやすく撃ち殺してしまう兄に
首をかしげてしまいます。
「言葉」と題するからには、このチャプターで表現されているのは
ディスコミュニケーションでしょうか。

■第2部 「顔」
ロンドンの雑誌社に勤める編集者アン(カトリン・カートリッジ)
夫との夫婦生活に不満を抱いているかわりに、
ピューリッツァー賞を受賞した写真家の
アレックス(ラデ・シェルベッジア)とデキています。
しかもすでにアレックスの子供を妊娠しているようす。
アレックスは場をわきまえない小汚い粗野な男ですが、
アンはそんな彼の「ワイルド」なところに惹かれたんでしょうか。
まあ、アレックスは第1部のキリルがあてにしていた叔父なのですが、
そんなことはどうでもよく、
はっきりいって、このチャプターは
アンのクソビッチ具合が強調されるだけで、
胸くそ悪いことこの上ありません。
母親と別れた直後、タクシーの中でアレックスに乳首を吸わせ、
その足で夫とのディナーに行くと、
あなたの子供を妊娠したと嘘をついた挙げ句に
離婚したいと申し出ます。

「話がしたかったの」「まだ迷ってるの」というアンに対して
愕然とする夫は「心はもう決まっているじゃないか」と返します。
そりゃ、そうです。
なにを甘えたことをヌカしているんでしょうか、このくそメンタは。
すると、店員とモメた挙げ句に店を追い出された男が戻ってきて
銃を乱射。
アンの夫は眼を撃たれて死んでしまいます。
眼を撃たれるのは、アレックスによる戦地での拷問話に呼応しています。
「あなたの顔が…」と繰り返すアン。
うるせーよ、バカ。

■第3部 「写真」
故郷マケドニアに16年ぶりに戻ってきたアレックス。
旧交を温めますがすでに彼は部外者でもあります。
アレックスは、報道写真家としてより過激な写真を撮るために
紛争の前線を渡り歩いてきたのですが、
理不尽に射殺される捕虜を救うことが出来ず、
それどころかカメラのシャッターを切り続けていた
ことで
自分も殺戮の加害者であると認識し、
良心の呵責に耐えかねているのでした。
従兄弟の死体を見るときですら、
彼の心の中ではシャッター音が鳴っています。
従兄弟を殺したとされる第1章のザミラをかばい、
手を取って連れ去ろうとするアレックスを
やはり背後から射殺する身内。
またしても丸腰の人間を、
これほどいともたやすく背後から撃てるもんだろうか……。

ともかく、ひとり逃げおおせたザミラは
第1部の修道院へと向かい、
本作の時間軸がループしていることが明らかになります。
延々と終わることのない報復の円環構造を示唆している構成は
見事だと思いますが、
巧みとは言いがたい俳優たちの演技と
あまりにもセンチメンタルで大仰な劇判、
ときおり登場する露悪的なグロ描写(羊の出産シーン含め)に
あんまりウットリできませんでした。





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