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オーバー・フェンス

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(2016年/日本 112分)
監督/山下敦弘 原作/佐藤泰志 脚本/高田亮 撮影/近藤龍人 製作/永田守 撮影/近藤龍人 照明/藤井勇 録音/吉田憲義 美術/井上心平 編集/今井大介 音楽/田中拓人
出演/オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、松澤匠、鈴木常吉、優香、塚本晋也

概要とあらすじ
「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」の原作者・佐藤泰志の芥川賞候補作を、オダギリジョー、蒼井優、松田翔太ら豪華キャスト競演で映画化。「苦役列車」の山下敦弘監督がメガホンをとり、原作者が職業訓練校に通った自身の体験を交えてつづった小説をもとに、それぞれ苦悩を抱える孤独な男女が共に生きていこうとする姿を描き出す。妻に見限られて故郷・函館に戻った白岩は、職業訓練校に通いながら失業保険で生計を立て、訓練校とアパートを往復するだけの淡々とした毎日を送っていた。そんなある日、同じ訓練校に通う代島にキャバクラへ連れて行かれた白岩は、鳥の動きを真似する風変わりなホステス・聡と出会い、どこか危うさを抱える彼女に強く惹かれていく。(映画.comより



わかってもらえない人たち

佐藤泰志原作の「函館三部作」の最終章となる
『オーバー・フェンス』
『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』には
深い感銘を受けました。
果たして山下敦弘監督による本作はいかなるものか。

職業訓練校では
さまざまな年齢の生徒たちが授業を受けています。
職業訓練校に通う主な目的は、
就職に有利ななんらかの資格を得ることなのでしょう。
しかし、生徒たちのなかには
すでに年金暮らしをしている年寄りや
どう考えても職人になるつもりなどなく、
キャバクラ経営を目論んでいる代島(松田翔太)のような人間もいます。
少なくともこの職業訓練校で
なにかを学びたいと考えている生徒は
手に職をつけることを目的とした成人のはずですが、
教官が妙に高圧的なために、
まるで刑務所のような印象を受け、神経を逆なでされます。

白岩(オダギリジョー)は、多忙な仕事ゆえに家庭をないがしろにし、
離婚した過去を持ちますが、
あいかわらず結婚指輪を外していないのをみると
元妻&娘に対して相当な未練があることがわかります。
まるで人生を諦めたかのようにみえる白岩は
とくに目的もなく職業訓練校に通い、
同級生たちとの会話でも自己主張することなく
微笑みでやり過ごしていますが、
彼の柔和な態度は、俺の気持ちがわかるわけないという
他者に対する拒絶の現れでしょう。

やがて、代島を介して知り合った
白岩とキャバ嬢の聡(蒼井優)はどちらからともなく惹かれ合うように。
明らかにメンヘラな聡は、幾度となく鳥の求愛ダンスを踊るように
愛に飢えた女性です。
聡は相手の反応に対して過敏で
流しで執拗に体を洗うのも、自己肯定力の低さと
承認欲求の表れ
のように思われます。

白岩と聡は急接近しますが、
聡が白岩に近づくように仕向けたのは代島で……
みたいなことはなく、
(そうじゃないかと思っていたのですが)
バツイチ男とメンヘラ女のぎこちない恋愛
話が収まってしまったのは残念なところ。

ソフトボール大会で迎えるラストシーンが
希望に溢れている
のは、
三部作の締めくくりとしてはひとつの解答なのかもしれませんが、
エンドロールに入る直前の編集のキレも含めて
幾ばくかの不満を感じざるを得ませんでした。

ただ、地方都市の閉塞感が
登場人物たちの不透明な人生を象徴しているのは一貫しているし、
とくに本作においては、
オレ(アタシ)の気持ちがわかるわけないだろ! という
満たされない自己承認欲求への渇望が描かれていました。
聡と職業訓練校の森(満島真之介)
ほぼ同じ悩みを抱えていると言ってもいいし、
白岩の元妻(優香)が子供を枕で窒息死させようとするほど
精神に異常を来したのは、
おそらく白岩が妻の心労を顧みていなかったからでしょう。
逆に、久々に再会した元妻のあっけらかんとした態度や、
元妻の父親(声:塚本晋也)がよこした手紙も
白石なりの苦悩があったことを「わかっていない」のです。
キャバクラの共同経営者として誘う代島に対して
白岩が「おれのこと何もしらないじゃん」と返すのは
さりげなくも重要な台詞で、
本作に登場するのは
「わかってもらえない人」ばかりなのではないでしょうか。

正直に言って、『そこのみにて光輝く』と比べてしまうと
物語の起伏に乏しいのは否めませんが、
他者を理解する、もしくは許容することの難しさと
それが叶ったときにもたらされるカタルシスを
失望しつつ期待するような作品でした。





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