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海炭市叙景

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(2010年/日本 152分)
監督/熊切和嘉 製作/菅原和博、前田紘孝、張江肇 原作/佐藤泰志 脚本/宇治田隆史 撮影/近藤龍人 美術/山本直輝 編集/堀善介 音楽/ジム・オルーク
出演/谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、三浦誠己、山中崇、南果歩、小林薫

概要とあらすじ
90年に自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の連作小説を、「鬼畜大宴会」の熊切和嘉監督が映画化。谷村美月、加瀬亮、小林薫ら演技派俳優陣が結集する。佐藤の故郷である函館をモデルにした“海炭市”が舞台。造船所からリストラされた貧しい兄妹、立ち退きを拒否する老婆、妻の裏切りに傷つくプラネタリウムで働く中年男、事業と家庭に問題を抱える若社長、息子に避けられ続ける路面電車の運転士など、地方都市の憂うつと再生を繊細なタッチで描きだす。(映画.comより



どうしてこうも人生は上手くいかないのか。

佐藤泰志原作による「函館三部作」
第1作にあたる『海炭市叙景』
2010年の作品にもかかわらず、まるで70年代の日本映画のような
ざらつきと湿り気を持っています。
年越しをまたいだ同時期に起きるさまざまな人間模様を
オムニバス形式で語られる本作の群像劇が微妙に干渉し合うのは、
決して広くはない地方都市だからこそではないでしょうか。
舞台となる「海炭市」は函館をモデルにしています。

小学生の頃、事故で両親を失った
帆波(谷村美月)颯太(竹原ピストル)の兄妹は
たくましく成長し、造船会社に勤めています。
会社の事業縮小に抗議する組合のストに
わずかな希望を託していましたが叶わず、
リストラされてしまいます。
年越しそばのかき揚げを半分ずつ分けるほど
経済的に困窮しているふたりでしたが、
颯太の申し出により初日の出を観に行ったふたりは
小さな幸せとわずかな希望を抱いているようにも見えます。
しかし、颯太は帆波ひとりを帰りのロープウェイに乗せ、
姿を消してしまいます。


豚屋敷と揶揄される家でひとり暮らししている老婆トキ
再開発のための立ち退きを断固拒否しています。
日本各地でこのようなことが起きているのではないかと想像しますが、
年老いたひとり暮らしの女性に
引っ越して新しい生活を始めろといっても無理な話。
あくまでマイペースを貫くトキでしたが、
ある日飼い猫のグレが姿を消してしまいます。

プラネタリウムの職員、隆三(小林薫)のエピソードは
理想と現実を隔てる問題をもっとも具体的に表現しています。
プラネタリウムで「偽の星空」をみせることを生業としている隆三は
スナックで働く妻(南果歩)に不信感を募らせ、
ひとり息子からは家族の問題を「関係ない」とまでいわれてしまいます。
自分に対する妻と息子の無理解に憤る隆三でしたが、
その一端が隆三自身にもあると自覚しており、
なんとも八方ふさがりな彼の
こんなはずじゃなかった感に心痛みます。

隆三のプラネタリウムに足繁く通い、
やはり、ここではないどこかを夢想していた少年アキラの父親、
晴夫(加瀬亮)は、地元のガス屋でありながら
内地からやてきた浄水器のセールス話にのって
なんとかして生活を安定させようとしていますが、
彼がもがけばもがくほど現実は空回りし、
苛立ちを募らせた晴夫は妻に暴力を振るい、
同級生との浮気で現実逃避しています。

晴夫に浄水器のセールスを持ちかけた博(三浦誠己)もまた
この土地の出身で、やはり金欠でした。
路面電車の運転手である父とも疎遠で、
彼もまた、はかりしれない鬱屈をため込んでいるようす。

でなわけで、
さまざまな状況に置かれた人々を描き出す本作は
なにかしらの希望や解決策を提示するものではありません。
多くを望んでいるわけでもないのに、
どうしてこうも人生は上手くいかないのか。

それぞれ個別の事情によって語られる人生のもどかしさは
誰しも共感を覚えるのではないでしょうか。

再開発の工事が始まった豚屋敷のトキのもとに
戻ってきた猫が妊娠していたのは、
かすかな希望を感じさせるエンディングでした。





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