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メッセージ

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(原題:Arrival 2016年/アメリカ 116分)
監督/ドゥニ・ヴィルヌーブ 製作/ショーン・レビ、ダン・レビン、アーロン・ライダー、デビッド・リンド 原作/テッド・チャン 脚本/エリック・ハイセラー 撮影/ブラッドフォード・ヤング 美術/パトリス・バーメット 衣装/レネー・エイプリル 編集/ジョー・ウォーカー 音楽/ヨハン・ヨハンソン 視覚効果監修/ルイ・モラン
出演/エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ、マーク・オブライエン、ツィ・マー

概要とあらすじ
「プリズナーズ」「ボーダーライン」などを手がけ、2017年公開の「ブレードランナー 2049」の監督にも抜擢されたカナダの鬼才ドゥニ・ビルヌーブが、異星人とのコンタクトを描いた米作家テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を映画化したSFドラマ。ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる役目を担うこととなり、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが……。主人公ルイーズ役は「アメリカン・ハッスル」「魔法にかけられて」のエイミー・アダムス。その他、「アベンジャーズ」「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナー、「ラストキング・オブ・スコットランド」でオスカー受賞のフォレスト・ウィテカーが共演。(映画.comより



他者を理解し融和をもたらせ

巨匠への階段を一気に駆け上がる勢いの
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督『メッセージ』
大作を手がけるようになると
作風に影響するんじゃないかという心配をよそに
「らしさ」をしっかり残しつつ、
作品のスケールがグレードアップしているのは見事です。

普通なら、万事順調な日常を描くことで
その後訪れる惨事に対する落差を強調するものですが
真っ暗な天井から始まる本作は
謎の飛行体が現れ、世界中がパニックに陥る前の導入部から
どこかどんよりしています。
言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)の講義には
数人の生徒しか参加せず、閑散としています。
観終わったあとだからできる深読みをしてみると、
言語に興味を持たなくなり、
スマホや携帯電話での閉じたコミュニケーションしか
行なわなくなった人々を揶揄しているような気がします。

世界各地に謎の飛行体が現れていることが
ニュースで伝えられるようになると、
ルイーズが勤務する大学でも我先にと帰宅する人々で溢れます。
上空を飛び去る飛行機の爆音による不安感が素晴らしい。
そこからルイーズのもとに宇宙人との通訳を依頼するために
ウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)が現れ、
物理学者イアン(ジェレミー・レナー)らとともに
地面からわずかに浮いた状態の飛行体がいる現場へと
あれよあれよという間に到着します。
この間の照明が異常なほど暗い。
大学でウェバー大佐の話を聞くルイーズは逆光の中にいて、
顔の半分は陰で覆われています。
イアンが初登場するヘリコプター内部はほぼ闇の中で
意図的に不明瞭さを表現していると感じられます。
序盤におけるこのような演出と
雲海のような雲がかかる草原に浮かぶ飛行体の
神聖さと禍々しさの両方を兼ね備えた存在感が抜群です。

そして、飛行体の内部へ。
カナリアがちゅんちゅん鳴いてるのに
防護服に身を包んだ人間たちのびびり具合がトホホなのはさておき、
そこに現れたのは、
イカタコ型のエイリアン=ヘプタポッドだったのです。
「SFの常識を覆す」的な惹句を目にしていただけに、
このエイリアンの造形にはちょっぴりガッカリ。
まあ、グレイタイプよりはましかもしれませんが、
これとて古式ゆかしきエイリアン像で、
未知の生物=醜いものというステレオタイプからの脱却は
果たせなかったのでしょうか。
(前後がないことが本作のテーマと結びついた造形ではあるけれど
 そういや『複製された男』にも巨大クモが出てきたな)

アイデアと勇気を持ってエイリアンに挑んだルイーズが
導き出したのが、円形の文字
墨で書かれたような表意文字というのは、
あからさまに漢字を思い起こさせ、
原作者テッド・チャンが中華系であることと無縁ではないはずですが、
漢字よりもさらに高度な「丸文字」は
文章のような内容を含んでいるのでした。

その文字を解読するルイーズに対しては
なんかわからんがスゲーとしか言いようがないのですが、
「武器を提供」という意味を読み取った各国は
互いに情報を共有することを止めてコミュニケーションを分断させ、
エイリアンへの攻撃姿勢を露わにします。
まったくもって人間の愚かさよ。

「言語によって思考が決まる」という
サピア=ウォーフの仮説に基づいて
原因があって結論にいたるという時間軸の流れに沿った思考は
地球人のものであって
エイリアンたちは時間をもっとランダムに、
アーカイブに接するように捉えている
ことがわかります。
時間を俯瞰するようなその感性はルイーズに影響を与え、
彼女は予知夢をみるように。
冒頭の娘とのやりとりから娘の死を迎えるエピソードは
回想ではなく、未来のルイーズの姿だったというわけです。
ルイーズは予知夢を頼りに
中国の将軍に直接電話をかけて説得し、
どうやら直後に自分がいうらしい言葉を将軍に告げることで
世界の分断を食い止めることに成功しますが、
ここでお馴染みのタイムパラドクスが生じることになり、
まあ、ひいき目に言えば
やっぱり一方向に流れる時間の呪縛から逃れることは
地球人には難しいなあという思うばかりです。

しかし本作の肝は、未来がわかるようになったからといって
その未来を避けるために現在を操作しようとしないところ。
イアンと結婚して娘をもうけるものの、
その後イアンと離婚し、その娘が若くして死んでしまうことを
すでに知っているルイーズは
そのうえでイアンと結ばれる決意をするのです。
それほどまでルイーズがイアンを愛していたというのは
本作から感じられませんでしたが、
たとえ悲劇が待ち受けていようとも
自分の人生を受け入れる
とでもいうような
ルイーズの達観を感じました。
そして、冒頭の天井のカットを繰り返します。
エイリアンが書く円形の文字はもとより、
本作の構成自体が円環構造を意識しているのは明らかです。

エイリアンたちが地球を訪れた目的は
3000年後の彼らが地球人の助けを必要としているためで、
それまで地球人が生き延びるための知恵をもたらすことでした。
おまえら、くだらない内輪もめをしてる場合じゃないぞ、と。
物語の背景になっている理論はとても難しいけれど、
彼らが求めるものは、他者を理解し融和をもたらせという
至極シンプルなものだったのです。
本作で描かれるのは他者を理解するための努力であり、
これこそが、排外主義が蔓延する現代に対する
最も重要な「メッセージ」なのではないでしょうか。





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