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だれのものでもないチェレ

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(原題:Arvacska 1976年/ハンガリー 89分)
監督/ラースロー・ラノーディ 原作/ジグモンド・モーリツ 脚本/ユディット・エレク、ラースロー・ラノーディ 撮影/シャーンドル・シャーラ 音楽/ルドルフ・マロシュ
出演/ジュジャ・ツィンコーツィ、ヨーゼフ・ビハリ、アンナ・ナジ、マリアン・モール

概要とあらすじ
1930年代、ホルティ独裁政権下のハンガリーの農村で、富農に引き取られた孤児チェレは、過酷な労働と虐待に耐える日々を送っていた。ある日、家を飛び出したチェレだったが、再び孤児院に収容され、また別の農家へと養子に出されてしまう。そこでチェレは馬小屋に暮らす心優しい老人に出会うが、一家の秘密を握っていた老人は、チェレの養母に毒殺されてしまう。実話を基にしたジグモンド・モーリツの小説の映画化。1979年に日本で初公開され、2010年にリバイバル上映される。(映画.comより



だれのものでもない宝だろ?

ハンガリーでは国民的映画だという
『だれのものでもないチェレ』
徹頭徹尾救いのない「嫌な映画」です。
いや、心温まるシーンがわずかに存在するものの
それとて、幼いヒロイン・チェレ(ジュジャ・ツィンコーツィ)の絶望を
より深めるためにあるかのようです。

しかも本作の原作は、
投身自殺をしようとした19歳の少女の話を聞いたジグモンド・モーリツ
その内容に沿って小説にしたもので、
この映画も原作にほぼ忠実に描かれているとか。
それを知ると、7歳の子供に対して
大人はこれほどまで高圧的で残酷な振る舞いが出来るものかと
唖然としてしまいます。

牛を追いかけて草原を駆けている全裸の子供。
牧歌的な光景に、無邪気な男の子かと思いましたが、
これがチェレという7歳の少女なのです。
聞き分けのない牛を追いかけているうちに、
はっきりとは表現されませんが、
チェレは近所のキチガイ男に強姦されます。
少なくとも性的ないたずらを受けるのです。

家に帰っても、ほかの子供たちは服を着ているのに
チェレだけは裸のまま。
チェレは役所から支給される養育費目当てに引き取られた孤児なのです。
(チェレという名前は本名ではなく、
 どうやら孤児に対する蔑称らしい)
とにかく、気が狂ってんのかという養父母によって虐待されるチェレは
裸のまま家畜の世話をさせられ、
いたずら半分で畑のスイカを食べると、
盗みを働いたと激昂され、
火のついた炭を握らされます。

とうとう逃げ出したチェレが街に着くと、再び役所に保護され、
所在なさげに引き取り手を待つ多くの孤児に混ざっています。
ここでの孤児の扱いをみれば、
心優しい人々、もしくは子供に恵まれない人々が
養子を求めて集まっているのではなく、
あたかも奴隷を物色するように、
支給される金目当てと労働力として
孤児が求められている
ことがわかります。

再び引き取られることになった家では
かろうじて服は着せてもらえるようになったものの、
チェレに対する虐待は続きます。
ジャバマリというその家の母親はなにかにつけチェレを叱りつけ、
よくもそんなにずっと怒っていられるもんだと
逆に感心してしまいますが、
要するに、家畜をしつけているのと同じなのです。
ジャバマリはチェレの尻をスリッパで叩き、
頭を叩いては流血させ、首を締め上げます。
周りの大人たちも、とくにジャバマリの度を超した折檻を
とがめるようすもありません。

唯一、チェレが安息のときを過ごせるのは
牛小屋で暮らす下男の老人と一緒にいるときでした。
この老人だけはチェレを可愛がり、教会にも連れて行きますが、
どうもこの老人、あまりにもひとがよすぎるようで、
ジャバマリに家をだまし取られた過去があったのでした。

高圧的なわりには
家をだまし取ったことがバレるのを恐れているジャバマリは
「告げ口ができなくなる薬」を入れたミルクを老人に飲ませ、
毒殺してしまいます。
おそらく老人は、そのミルクが毒入りであることを
承知の上で飲んだと思われ、
彼もまた、人生に絶望していたのではないでしょうか。

たったひとりの庇護者まで失ってしまったチェレ。
チェレは、「森に家を建てにいっている」という
会ったこともない母親との再会を夢見ているのですが、
疑心暗鬼になっているジャバマリは
それすら憲兵への密告ではないかと疑い、
チェレまでも毒入りミルクで殺そうと企みます。
そうとは知らないチェレが
泣き始めた赤ん坊にミルクを与えようとするのに気づいたジャバマリは
慌ててチェレからミルクを取り上げ、
「こいつ! 毒入りミルクを赤ん坊に飲ませようとしやがって!
 この人殺しがーー!!」

という、これ以上ない難解な逆ギレをみせるのでした。

ラストは、チェレが藁につけた火がやがて炎となり、
ジャバマリの家を焼き尽くすようすが夕日と重なって終わります。
この結末はチェレが報われない非業の人生を終えたかのようにみえますが、
真実のチェレは生き延びていたわけです。
ただ、原作の元となった19歳の少女は
自殺しようとしていたわけで、
その後もチェレの苦難が続いていたかと思うと
いたたまれない気持ちになります。

いやあ、たとえ自分の子供じゃなくっても、子供は宝でしょ。
だれのものでもない宝じゃないの。





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