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台北ストーリー

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(原題:青梅竹馬 Taipei Story 1985年/台湾 119分)
監督/エドワード・ヤン 製作/ホウ・シャオシエン 脚本/エドワード・ヤン、チュー・ティエンウェン、ホウ・シャオシェン 撮影/ヤン・ウェイハン 音楽/ヨーヨー・マ
出演/ツァイ・チン、ホウ・シャオシエン、ウー・ニェンツェン、クー・イーチェン、リン・シュウレイ、クー・スーユン、ウー・ヘイナン、メイ・ファン、チェン・シューファン、ライ・ダーナン

概要とあらすじ
「クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」のエドワード・ヤンが、1985年に手がけた2作目となる長編監督作品。親の家業である紡績業を継いだ元野球選手のアリョン。彼の幼なじみで恋人のアジンはアメリカへの移住を考えている。過去の栄光にしがみつく男と過去から逃れようとする女、そして彼らを取り巻く人々の姿が、経済成長の中で変貌する80年代の台北を舞台に描かれる。主人公のアリョン役には製作と脚本も担当したヤンの盟友ホウ・シャオシェン。アジン役に当時のヤンの妻であった人気歌手ツァイ・チン。ウー・ニェンチェン、クー・イーチェンら台湾の映画作家たちが俳優として出演し、ホウ作品の脚本を数多く手がけるチュウ・ティエンウェンが共同脚本を担当。日本では長らく劇場未公開だったが、エドワード・ヤン生誕70年、没後10年となる2017年に、4Kデジタルリストア版で劇場初公開が実現。16年の第17回東京フィルメックスでも上映された。(映画.comより



まだまだ観たくなるエドワード・ヤン。

『牯嶺街少年殺人事件』が25年ぶりに公開され、
喜びに浸ってからまだ間もないのに
今度はリストアされた『台北ストーリー』が劇場初公開。
ことが動くときというのは一気に動くものでしょうか。
エドワード・ヤン監督生誕70年(没後10年)というアニバーサリーが
後押ししたのかもしれませんが、
ともかく、作品修復に尽力された方々にはリスペクトっすよ。
しかも主演は『非情城市』などの監督で知られるホウ・シャオシェン
役者としても堂々とした存在感です。
まったく作風が違うエドワード・ヤンとホウ・シャオシェンが
手を組んだ本作は、「台湾ニューシネマ」の結晶
いってもいいのではないでしょうか。
脚本にはチュー・ティエンウェンとホウ・シャオシェンが
クレジットされていますが、
実際にはエドワード・ヤンがひとりで書き上げたとのこと。

開始早々、中央に映し出された
なんということはないサッシの窓の陰影
すでにエドワード・ヤン印。
部屋をまたいだカメラアングルにも「らしさ」が溢れています。
空き部屋を下見するアジン(ツァイ・チン)
アリョン(ホウ・シャオシェン)
新婚夫婦か同棲生活を始めようとしている恋人同士のようにみえますが、
非常に微妙な関係。
本作は80年代における台湾の置かれた状況や空気感
登場人物たちに投影しつつ描かれるラブストーリーです。

ロスにいる義兄を頼って食品輸入業を始めようとしているアリョンは
少年時代はリトルリーグのエースとして活躍した経験があり、
どうやら野球をしていた過去が彼を苦しめているようなのですが、
たかがリトルリーグで味わった栄光に
なぜそこまでアリョンが囚われているのかよくわかりませんでした。
公式Facebookによると、
台湾の少年野球で活躍することは
「WBCと甲子園を足して二で割ったくらいの意味がある」んだそうで、
プロの野球選手になるのを断念したほどの重い挫折なのです。
終盤で登場するニュース映像は実際のもの。

不動産会社に勤めるアジンは
有能な自立する女性の象徴のような存在ですが、
既婚者のボスと微妙な関係でもあり、
クールな出で立ちとは裏腹な依存体質の傾向が伺え、
心に空洞を持っているような弱さが見受けられます。
彼女がサングラスをかけているのは
自分の弱さを他人に悟られないためではないでしょうか。

会社が買収されて職を失ったことで、
アジンはさらに自分の居場所を不安定にします。
ガラス張りの渡り廊下(?)の幾何学的な構図には
『恐怖分子』のワンシーンと共通する美しさがあります。

だらしないアジンの父親と、耐えるばかりの母親。
無軌道なアジンの妹とその友だちが
世代による生き方の違いを浮き彫りにさせます。
鬱屈した現状をリセットするための脱出先として
アメリカや日本が想定され、
アジンの幼馴染みであり、アリョンの元彼女でもある
日本人と結婚した女性の存在が
(この元カノがはっとするような美人)
アジンとアリョンが抱える焦燥感を際立たせます。
富士フイルムのネオンをバックにしたカット
美しくも印象的です。

過去に固執しているアリョンは
あまりにも煮え切らない態度に終始しますが
その反面、義理に厚いところがあります。
かたやアジンはすべてを投げ打ってでも
ここではないどこかへの逃避行を望んではいるものの、
本来の弱さが彼女を妨げています。
アジンが妹たちと遊ぶようになるのは
自暴自棄になった彼女の幼児退行のようにもみえます。


アジンにつきまとうガキに刺されたアリョンが
ゴミの中のテレビに見えもしない過去の栄光を見て
思わず笑ってしまうのは、
彼が過去への執着をようやく客観視できたということでしょうか。
また、アジンが世話好きな女性から紹介された仕事が
アメリカのコンピュータ会社の台北支店だというシニカルな結末は
結局のところ、アメリカ行きも日本行きも
人生をやり直すための「万能薬」ではなく、

自分で自分の殻を抜け出さない限り、
現状を変える手段はないとでもいっているようでした。

まだまだ観たくなるエドワード・ヤン。





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