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ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー

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(原題:Baskin 2015年/トルコ・アメリカ合作 97分)
監督/ジャン・エベノル 製作総指揮/トッド・ブラウン、ムーグ・バユトラス、マイク・ホステンク 脚本/オグルジャン・エラン・アカイ、ジャン・エベノル、ジェン・オズグル、エルシン・サディコグ 撮影/アルプ・コルファリ 編集/エルカン・オゼカン 音楽/ウラス・パッカン
出演/ムハレム・バイラク、マフメット・アキフ・ブダク、ファディク・ビュルビュル、デリン・チャンカヤ、マフメット・チェラホグ、ギョルケム・カサル

概要とあらすじ
ある夜、仲間からの応援要請を受け、人里離れた山奥へ向かった5人の警官。そこには不気味な廃屋が佇み、無人のパトカーがライトを照らしたまま乗り捨てられていた。そこら中に、肉塊のようなものが吊るされた不気味な屋敷。懐中電灯の光だけを頼りに、恐る恐る奥へと進んでゆくと、警官らしき姿の男が、繰り返し壁に頭を打ち付けている。すると正気を逸し、言葉も話せないその男は、震える手で壁の向こうを指差した。恐怖を感じながらも、ひとりの警官が覗き込むと、そこでは地獄のような拷問と禁断の儀式が行われ、溢れる鮮血と死の匂いがあたりに充満していたのだった…。(Amazonより



夢の中でみる夢のように

人肉ケバブを題材にした
『ザ・シェフ 悪魔のレシピ』を観たとき、
食人グログロなホラーだと思ったら
意外にも社会派映画だったことに驚いて、
『ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー』なんてのもあるから
ややこしいなあなどと書いたわけですが、
今度こそ、人肉をケバブにして
いっひっひ〜という映画だと思ったら
このトロマ的邦題のミスリードたるや半端なく、
またしても完全に予想を裏切られました。

なにしろ、本作には金網の上で肉を焼くカットこそあれど、
ケバブはまったく登場しません。
トルコといえばケバブという、なんとも短絡的な発想による邦題は
本作の魅力をビタイチ表現していませんが、
そのおかげでまったく予想できない展開に
のめり込むことができたのです。

となりの部屋から聞こえてくる母親のうめき声(あえぎ声?)で
真夜中に目を覚ました少年。
居間にあるつけっぱなしのテレビの砂嵐をぼんやりとみていると
自分の部屋からなにやら汚れた右腕が伸びてきます。
恐怖に怯えた少年は母親が眠る部屋のドアを慌てて叩きますが
反応はなく、さらに右腕が近づいてきて……という冒頭。
当然、なんのこっちゃら、わかりません。

シーンは変わって、
街はずれた場所にあるレストランでは、
5人の警官たちがくだらない猥談をしながら食事をしています。
厨房の裏では、フードをかぶった人影がバケツで運んできた肉を
料理人が受け取っています。

網の上で焼かれる肉片に何度もクローズアップし、
おそらく父親と息子であろうふたりの店員の表情を
ほとんど写さないカメラワークをみて
ああ、この店がキチガイレストランで
調子に乗ったチンピラみたなポリ公どもに
人肉ケバブを振る舞っていっひっひなんだなと思っていると
いちゃもんをつけて店員を懲らしめた警官たちは
意気揚々と車に乗り込んで引き上げていくのです。


ひとりが体調不良を訴えていますが、
呑気に歌を歌っていた警官たちのもとに
ほかのパトカーから応援要請の無線が入り、急行することに。
向かう先はインチャージ地区という、よからぬ噂が立つ場所。
突然、裸の男が横切ったり、車に謎の傷がついていたり、
無線が繋がらなくなったりしていると、
今度は血だらけの男が正面に現れ、
車は道路脇の池(川?)へ落ちてしまいます。


すると次のシーンでは、
最初のレストランでテレビを観ている警官たちが。
バラエティ番組の拍手で切り替わるカットが嫌みで素晴らしい。
新人警官のアルダ(ギョルケム・カサル)
彼の後見人でもあるボスのレムジに向かって
誰にも話したことがない秘密を語り始めます。
彼には、かつてコスクンという親友がいましたが、
コスクンは死んだ父親の体から魂が抜けていくのを見た、と。
「先に死んだほうがもう一方を訪れる」という約束を交わして
コスクンと別れたアルダは
その晩、群衆に囲まれ、コスクンに導かれるような夢に怯えて目を覚ますも
そこはまだ夢の中。
冒頭のシーンへとつながり、彼に向かって伸びてきた腕が
コスクンのものだった
ことがわかります。
コスクンは前日の晩に死んでいたのでした。

そんなオカルトめいた話を聞いたレムジが
「お前はまだ気づいていない」とアルダを促すと
瞬時に暗くなった店内にはフードをかぶった人影が。
どうやらこのふたりには魔界と通じる能力があるようす。
意識を失いかけたアルダが気を取り戻すと
そこはパトカーが事故った現場でした。

田舎ホラー風味漂う浮浪者たちと遭遇した後、
ついに応援要請のあった廃墟にたどり着きます。
そこはもう、あからさまに禍々しい空間。
(ディティールがわかりづらいのはちょっと残念だけど)
やがて、天井から吊られた人間の死体が現れ、
さらに奥へと進むと、人肉をむさぼり食う方々がっ!!
食べるのに夢中すぎて、すぐには警官たちに気づかないのがナイス。
気づいた途端、猛烈に追いかけてくる気持ち悪さも最高です。

アルダが慌てて逃げると、
そこはなんと冒頭のシーンの自分の家。
まだ幼い自分が伸びてきた腕に引き寄せられるのを目撃すると
目を覚ますアルダ。
そして再びレストランで向き合っているアルダとレムジ。
「すべてに答えを求めるな。俺たちは交差点にいる」
「今夜俺たちは呼ばれた」

レムジが言うように、
ふたりが会話するレストランは現実と魔界の交差点。
このふたりだけが会話できる(場合によっては脳内で?)
異次元の場所なのです。

再び廃墟に戻ると、鎖で柱に縛りつけられている警官たち。
たくさんの人肉好きな方々が蠢くなか、
ゆるりと現れたのがフードをかぶった人影=教祖さま。
この教祖さまがなんともいえない風貌で
喩えるなら、老けた赤ん坊。もしくは陰気なネゴシックス
(余計にわかりづらくなってしまった……)
体はムキムキの細マッチョなのです。
でもちっこいから、警官たちを脅かすときは
専用の踏み台が用意されます。

ハリウッドでいうところの雪舟ですね♡

「地獄は我々の中にある」という教祖さまによって
あるものは腸を引っ張り出され、
あるものは両目をつぶされたうえにレイプを強要されます。
(息絶えた警官の口から蜘蛛が這い出てきたのは
 彼が心では教祖さまに屈しなかったからだろうか)
残るはアルダとレムジになると、
レジムはアルダに詰め寄る教祖さまを牽制し、喉を裂かれて殺されます。
教祖さまの口ぶりからすると、
アルダとレムジは特別な存在で、導かれていたようす。

そして三度、レストランへ。
喉を裂かれて瀕死のレムジはアルダに対し、
「先に死んだほうがもう一方を訪れる……憶えてるか?」といい、
「お前が傷ついたら、来世でおれが責任を取ると誓った」と言います。
こうなると、レムジ=親友コスクンの生まれ変わりではないか?
という考えが浮かんできます。

アルダがレムジの首から抜き取った鍵を
教祖さまの額にある鍵穴に差し込むと、
もだえ苦しんで卒倒する教祖さま。
なんというわかりやすい急所。
せめてカットバンでも貼っていればと、教祖さま的には悔やまれるところ。
とにかく、難を逃れたアルダは雪舟で教祖さまを撲殺し、
這々の体で廃墟から脱出して道路に出ると、
そこにやってきたのは、アルダたちが乗っていたパトカー。
彼らが轢いてしまった血だらけの人物はアルダだったのです。

アルダが行き来するのは現実と異次元の世界。
異次元の世界もまた幾重にも曖昧な層が積み重なって
できているように思います。
それはあたかも、夢の中でみる夢のように。

音楽、照明、編集、
そして構成すべてが素晴らしい傑作でした。





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